内容に深く関わるため、主人公の名前変更の際は犬関係の名前をおすすめします。
吾輩は犬である
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二人の不思議な共同開発が始まってから数ヶ月、季節は夏になった。"超次元電波"を使用したロケットランチャーの作成は完了し、ボーダーコリーの左腕に装着された。しかし、"超次元電波発生装置"の方は大きすぎる為、静まり返った深夜に近所の山の麓の地中に隠した。翌朝、碧とボーダーコリーはガレージ内で完成の祝福会をしていた。
「ついに完成だね!おめでとー!」
『ありがとう、碧。ここまで来れたのはあなたのおかげだよ。感謝してもしきれない』
「やだなぁ、ボーダーコリー。あたしたち友達でしょ?」
うふふ、あはは。小さく笑い声が響くガレージには一人と一体しかいない。二人が幸せを噛み締めていた時、一つの声が聞こえる。碧の父親だ。ボーダーコリーはこれが碧との時間の終わりを意味している事を既に知っている。
『それじゃあ、またね』
「うん……。ごめんね、ばいばい」
少し後ろ髪を引かれる感覚に襲われながらも碧は出て行った。暇になったボーダーコリーは自身に装着させたばかりの左腕をメンテナンスしたり、音楽を聴いたりと悠々自適に過ごしていたが少し経つとそれも飽きてしまった。
『(毎日毎日こればかりだ……いいや、この生活も碧が高校を卒業出来れば変わる。あと一年半の辛抱)』
手持ち無沙汰になったボーダーコリーは時間を早送りにすべくスリープモードに移行した。
頬を硬い掌で殴られる。突然の出来事だった。驚いた拍子にバランスを崩すと既視感のある星空が視界を覆った。ここは心象世界だ。それでは殴ったのはチャシャか。以前にボーダーコリーが目を覚ますまで待っていたと話していた事を思い出す。起こす為なら殴らなくてもいいのに、と呑気なことを考えていると例の人物が視界に映った。
『どうやら完成させたみたいだな、よくやった。しかし、事態はあまり良くないぞ』
焦った表情のチャシャはボーダーコリーを立たせると足早にどこかへ行ってしまう。置いていかれるなんて日常茶飯事だ、こちらに全く視線を寄越さないことを除いて。それは彼女が焦りに駆られていることを意味していた。
『どうやら、オートボットとディセプティコンがキューブの在処を嗅ぎ付けたみたいだ』
『キューブ?』
『私たちの力の源が込められている戦争の火種になりかねない代物さ。エネルギーが尽きた今、奴らはこれを探していた』
そう言うと一つの正方形の金属の塊を手渡される。かなり小さい、人間用サイズみたいだ。
『あろう事か、連中はキューブと共にメガトロンまで保管してやがった。オートボットの奴等はキューブを優先するだろうが、ディセプティコンの奴等はメガトロンの復活を優先する。そうなったら本当に大変なことになる』
『決断の時、ってこと?』
ボーダーコリーの回路が揺れる。オートボット、ディセプティコン、その2つの単語が駆け回る。チャシャは視線を下に向けるボーダーコリーの肩に手を置く。まるで、懇願するかのように。
『お前に作らせたのはこの為にある。アレ は私の中で最も愚劣で、馬鹿馬鹿しい発明だが、使い方を工夫すれば簡易的なテレポート装置にもなる。戦闘は恐らく……この国ではない市街地で行われるからな、遠く離れた地にいるお前にも選択肢を与えたかった』
『私には何も出来ない。戦闘の経験すらないのに戦争に行っても足手まといだよ……』
『それは問題ない、私がいるからな。さあ、選べ。オートボットか、ディセプティコンか』
ボーダーコリーの表情は暗い。この時まで避け続けていた話題を真っ向から投げられたのだから。思考は回り続けると、チャシャとの会話を思い出した。ディセプティコンのリーダーが冷酷だとか、情報至上主義の奴が嫌いだとか、ゴマスリ野郎は大マヌケだったとか、唯一尊敬出来る奴もいるとか、そんな話。しかし、オートボットの話はあまり聞いたことがなかった。強いて言えば、〈アイアンハイド〉というオートボットの名が上がっただけだろう。オートボットに関する話がほとんど無かったのは、彼女があまりオートボットとディセプティコンとの戦争に興味がなかったからなのかもしれない。そんな日常をボーダーコリーは嫌気が差していたが、必ず最後にはチャシャの夢に関する話は印象的だった。
『『私には銀河を巡る旅人になるという夢があった。それなのに、それなのに……!』』
そう悔しそうに笑うチャシャがとても印象的だったのを覚えている。
『(もし、私にも同じことが起きたら……)』
ボーダーコリーには夢という夢がなかった。そもそもあまりガレージから出ない上に、碧の父親と碧の休みが被らなければ碧が自身の中に乗って風景を楽しむことすら出来ないのだ。物理的な意味での世間知らずがピッタリだろう。しかし、ボーダーコリーは碧との日々が幸せで仕方がなかった。目が覚めれば制服姿の碧が自分に話し掛けてくる朝が好きだ、私服で話を聞いてくれる休日が好きだ、メールでやり取りをする夜が好きだ。様々な出来事をチャシャの夢に当て嵌めれば自然と冷却水が瞳から零れ落ちた。そういえば、彼女はこれを涙、と呼んでいた。
『オートボットも、ディセプティコンも、関係ない。私は彼女を、碧を護りたい』
決まったみたいだな、そう呟いたチャシャの声色は優しかった。
『守りたい存在がいるのは良い事だ。しかし、重要なのはその存在よりも、何をするかだ』
『……何をすればいいの?』
微笑んだチャシャはボーダーコリーの頬を先程よりもかなり優しく叩いた後、いつも通りの椅子の方へと歩き出した。
『これからお前はシカゴに行ってどちらでもいいから縁を作ってこい。いいか?闘うんじゃなくて、縁を作るんだ。だが、縁を作るには何かしら目立たないといけない。そこの塩梅はお前に任せる』
椅子やモニターが鮮明に映った時、ボーダーコリーは違和感を感じた。モニターには相変わらず同じものが写っているがその横にマイクが添えられている。
『私でもある程度は指示を出すことが出来る。ははっ、安心しろ。いざとなったら私が代わりに出てやるよ』
椅子にドカッ、と座ったチャシャは腕を組みながらいつもの笑いを見せている。それに安心したボーダーコリーも椅子に腰を下げる。
そして、眠気に襲われる。これもいつも通りだ。そう、全てがいつも通り。しかし、ボーダーコリーの意思だけはいつも通りではなかった。
『ありがとう、チャシャ』
『おう。いいか、忘れるな。私はお前であり、お前は私なのだと』
意識を手放す直前、チャシャがマイクを握っているのが視界に過ぎるが、既にボーダーコリーの思考は途切れかけていた。
「ついに完成だね!おめでとー!」
『ありがとう、碧。ここまで来れたのはあなたのおかげだよ。感謝してもしきれない』
「やだなぁ、ボーダーコリー。あたしたち友達でしょ?」
うふふ、あはは。小さく笑い声が響くガレージには一人と一体しかいない。二人が幸せを噛み締めていた時、一つの声が聞こえる。碧の父親だ。ボーダーコリーはこれが碧との時間の終わりを意味している事を既に知っている。
『それじゃあ、またね』
「うん……。ごめんね、ばいばい」
少し後ろ髪を引かれる感覚に襲われながらも碧は出て行った。暇になったボーダーコリーは自身に装着させたばかりの左腕をメンテナンスしたり、音楽を聴いたりと悠々自適に過ごしていたが少し経つとそれも飽きてしまった。
『(毎日毎日こればかりだ……いいや、この生活も碧が高校を卒業出来れば変わる。あと一年半の辛抱)』
手持ち無沙汰になったボーダーコリーは時間を早送りにすべくスリープモードに移行した。
頬を硬い掌で殴られる。突然の出来事だった。驚いた拍子にバランスを崩すと既視感のある星空が視界を覆った。ここは心象世界だ。それでは殴ったのはチャシャか。以前にボーダーコリーが目を覚ますまで待っていたと話していた事を思い出す。起こす為なら殴らなくてもいいのに、と呑気なことを考えていると例の人物が視界に映った。
『どうやら完成させたみたいだな、よくやった。しかし、事態はあまり良くないぞ』
焦った表情のチャシャはボーダーコリーを立たせると足早にどこかへ行ってしまう。置いていかれるなんて日常茶飯事だ、こちらに全く視線を寄越さないことを除いて。それは彼女が焦りに駆られていることを意味していた。
『どうやら、オートボットとディセプティコンがキューブの在処を嗅ぎ付けたみたいだ』
『キューブ?』
『私たちの力の源が込められている戦争の火種になりかねない代物さ。エネルギーが尽きた今、奴らはこれを探していた』
そう言うと一つの正方形の金属の塊を手渡される。かなり小さい、人間用サイズみたいだ。
『あろう事か、連中はキューブと共にメガトロンまで保管してやがった。オートボットの奴等はキューブを優先するだろうが、ディセプティコンの奴等はメガトロンの復活を優先する。そうなったら本当に大変なことになる』
『決断の時、ってこと?』
ボーダーコリーの回路が揺れる。オートボット、ディセプティコン、その2つの単語が駆け回る。チャシャは視線を下に向けるボーダーコリーの肩に手を置く。まるで、懇願するかのように。
『お前に作らせたのはこの為にある。
『私には何も出来ない。戦闘の経験すらないのに戦争に行っても足手まといだよ……』
『それは問題ない、私がいるからな。さあ、選べ。オートボットか、ディセプティコンか』
ボーダーコリーの表情は暗い。この時まで避け続けていた話題を真っ向から投げられたのだから。思考は回り続けると、チャシャとの会話を思い出した。ディセプティコンのリーダーが冷酷だとか、情報至上主義の奴が嫌いだとか、ゴマスリ野郎は大マヌケだったとか、唯一尊敬出来る奴もいるとか、そんな話。しかし、オートボットの話はあまり聞いたことがなかった。強いて言えば、〈アイアンハイド〉というオートボットの名が上がっただけだろう。オートボットに関する話がほとんど無かったのは、彼女があまりオートボットとディセプティコンとの戦争に興味がなかったからなのかもしれない。そんな日常をボーダーコリーは嫌気が差していたが、必ず最後にはチャシャの夢に関する話は印象的だった。
『『私には銀河を巡る旅人になるという夢があった。それなのに、それなのに……!』』
そう悔しそうに笑うチャシャがとても印象的だったのを覚えている。
『(もし、私にも同じことが起きたら……)』
ボーダーコリーには夢という夢がなかった。そもそもあまりガレージから出ない上に、碧の父親と碧の休みが被らなければ碧が自身の中に乗って風景を楽しむことすら出来ないのだ。物理的な意味での世間知らずがピッタリだろう。しかし、ボーダーコリーは碧との日々が幸せで仕方がなかった。目が覚めれば制服姿の碧が自分に話し掛けてくる朝が好きだ、私服で話を聞いてくれる休日が好きだ、メールでやり取りをする夜が好きだ。様々な出来事をチャシャの夢に当て嵌めれば自然と冷却水が瞳から零れ落ちた。そういえば、彼女はこれを涙、と呼んでいた。
『オートボットも、ディセプティコンも、関係ない。私は彼女を、碧を護りたい』
決まったみたいだな、そう呟いたチャシャの声色は優しかった。
『守りたい存在がいるのは良い事だ。しかし、重要なのはその存在よりも、何をするかだ』
『……何をすればいいの?』
微笑んだチャシャはボーダーコリーの頬を先程よりもかなり優しく叩いた後、いつも通りの椅子の方へと歩き出した。
『これからお前はシカゴに行ってどちらでもいいから縁を作ってこい。いいか?闘うんじゃなくて、縁を作るんだ。だが、縁を作るには何かしら目立たないといけない。そこの塩梅はお前に任せる』
椅子やモニターが鮮明に映った時、ボーダーコリーは違和感を感じた。モニターには相変わらず同じものが写っているがその横にマイクが添えられている。
『私でもある程度は指示を出すことが出来る。ははっ、安心しろ。いざとなったら私が代わりに出てやるよ』
椅子にドカッ、と座ったチャシャは腕を組みながらいつもの笑いを見せている。それに安心したボーダーコリーも椅子に腰を下げる。
そして、眠気に襲われる。これもいつも通りだ。そう、全てがいつも通り。しかし、ボーダーコリーの意思だけはいつも通りではなかった。
『ありがとう、チャシャ』
『おう。いいか、忘れるな。私はお前であり、お前は私なのだと』
意識を手放す直前、チャシャがマイクを握っているのが視界に過ぎるが、既にボーダーコリーの思考は途切れかけていた。
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