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My Sweet Nike



 オモシロ君に続き、不動産の神尾くんにも負けてしまった。2年生に立て続けに負けるなんて、昨年のJr.選抜の名が聞いて呆れる。Jr.選抜だって、元々は青学の手塚クンが辞退した穴埋めで選ばれたようなもんだってのに、俺は少し自分を買い被りすぎていたのかもしれない。

 全国大会まであと少し。中学最後の夏。山吹のシングルスプレイヤーとして、悔いのないように、せめてできる限りのことは。空はすっかり暗くなった。それでもコートを離れるのが惜しい。

「千石」

 不意に、俺の苗字を呼ぶ声がコートに響いて、俺は身体を止めた。声の方向に目をやると、制服姿に着替え終わったマネージャーがいた。山吹の女子の制服、やっぱ可愛いよな〜。おっと、雑念が。

「練習しすぎ!」
「え?」
「あんまり練習しすぎも疲れちゃうよ。もう帰ろ?」

 彼女はコートの外から俺に話しかける。確かにもう結構遅い時間だ。伴爺も俺がこんな時間まで練習してるから、きっと職員室で待機したまま帰れないだろう、伴爺ごめんな。そして目の前の彼女も。

「――待たせてごめん」
「先帰ろうかと思っちゃった」
「はは。でも待っててくれたんだろ?健気な彼女をもって俺は幸せだ」

 今はもう二人きりだから、人目を気にせず恋人モードになれる。コートの隅にいる彼女へ近づきながらそう言うと、彼女は「ほんと調子良いんだから」なんて毒づいた。けれど、その頬が赤くなっている。

「……ね、キヨ、焦らないでいいよ」
「?」
「桃城くんと神尾くんのことで、プレッシャー感じてるんじゃないかなって思ってる」

 彼女は俺の顔をじっと見上げて言う。こう見えて、俺のプライドは高い。彼女の前で弱音なんて一言も吐かないようにしていたのに、どうしてわかるんだ。

「――はは。隠し事できないな」

 たぶん俺は今、眉を下げて、とてもカッコ悪い腑抜けた顔で笑っているだろう。彼女はそんな俺の顔を見て、無言で微笑む。そして、少し背伸びをして、俺の頭をくしゃりと撫でた。

「私は、キヨのテニスが好きだし、キヨのこと信じてる」
「……」
「だからそんな根詰めなくていいよ、“ラッキー千石”!」

 彼女は、弾けるような笑顔で俺の通り名を言う。その瞬間、俺の心の中にある不安や焦燥感もどこかへ弾け飛んでいってしまった。本当にキミという女の子は。

「――あーもう、」
「?」
「これ以上、好きにさせないでくれ」

 俺はキミの前では余裕のあるカッコイイ彼氏でいたいのに。我慢できずに、今すぐ抱き締めてしまいたくなるじゃないか。



Fin.
2021.11.25

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