4次元で恋をする
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第5話 決意
「……はあ、あと1週間で全国大会かー。俺達も出たかったよな。なぁ支倉っ」
「まぁ、私は選手じゃないから英二みたいに『出る』ってわけにはいかないけど……やっぱり全国の会場で応援したかったよねー……」
「フフ。2人ともどうしたの、めずらしくテンション低いじゃない」
「「不二!」」
英二と声が揃って、思わず顔を見合わせる。
「それで。2人がテンション低い原因は何?」
「いや、あのね?もうちょっとで全国大会はじまるでしょ」
「うん。そうだね」
「だからさ、本当は関東で勝って全国行きたかったよな、っていう話」
「ふーん。なるほど」
不二は私達2人の言い分を聞いて軽く笑う。
「まぁ、さすがに全国に出場することはできないけど、さっき手塚と大石が話してたよ。今の2年のレギュラーのみんなで全国大会見に行こうかって」
「「えっ?!」」
「まあ、やっぱり来年に向けて、予習は必要だしね」
そんな不二の台詞に、淡い期待と少しの不安を抱く。
――全国大会の会場にもし行けるとするなら、もしかしたら、また会えるのかもしれない。
でも、レギュラーのみんなで、ってことは、私はお留守番なのかもしれない。
「…ねえ不二、」
「ん、支倉、何?」
「それって、私もついて行っていいのかな……?やっぱり、レギュラーだけで水いらずな感じ?」
「ハハ。何言ってるの。手塚と大石が支倉を仲間はずれにするなんて思う?」
「思わないけど…」
「そーそー。支倉がハブられるわけないじゃん。俺達の大事なマネージャーなんだからさ」
「英二……」
どうしよう、不二と英二の何気ない言葉がすごく嬉しくて、不覚にもちょっと泣きそうになってしまった。
「まあ、後で2人から改めて話があると思うから、その時まで待ってようか」
そして、その日の部活のミーティングで、2年生のレギュラーに私を含めたメンバーで全国大会を観戦しに行くことが決まった。全国大会――青学が出られないのは悔しいけれど、さっき不二も言っていたように、来年の予習をしなくてはいけない。全国のライバルの試合を見られるだなんてめったにない機会だ。考えるだけで、まるで遠足の前のようにわくわくしてくる。
けれど、私はもっと違う理由でも心が弾んでいた。
――ひょっとしたら、白石くんに会えるかもしれない。
偶然知り合った大阪・四天宝寺の部長の白石くん。彼は「青学、勝つとええな」と応援してくれたというのに、私はといえば、いまだ彼に結果報告をしていなかった。とはいっても、青学が全国に行けなかったことを彼はすでに知っているのだろうけれど。それでも応援してもらった以上は、結果報告と応援してくれたことに対するお礼をすべきだったのに、その日の私は、青学が負けたショックに加え、先輩達の引退がさびしくて、泣いて泣いてボロボロで、到底白石くんに連絡しようだなんて考える余裕はなかった。
彼にお礼を言わなくちゃ、と気づいたのは、関東大会終了から1週間後の夜だった。
しかし、だ。
私達青学はすでに先輩達が引退して新体制がスタートしているけれど、白石くんはまだ全国大会を控えている身で忙しいはず。そう考えると迂闊にLINEも送れなかった。私は完全に彼に連絡するタイミングを逃してしまったのだ。
「でも……全国の会場で、会えるかもしれないんだよね」
ほんの少しの間しか彼と関わりはなかったものの、白石くんとのおしゃべりは本当に楽しくて、時間を忘れてしまった。お礼も言いたいし、それに、また楽しくおしゃべりしたいな、なんて思うと、また会いたいなぁ、という気持ちが強くなる。
と、その時だった。
「へぇ、全国の誰に会うんだ?支倉」
「ひゃぁ乾! いきなりドアップは怖いから!!」
「データは集められるだけ集めておきたいからな。全国大会に出場する選手の中で誰かと交流があるのか?」
「え?! あ、いや、うーん、あははははは」
「笑ってごまかそうとしている確率100%だな」
「別にいいじゃない、今回青学は戦わないんだし…!それに交流っていう交流でもないっていうか…偶然知り合ったっていうだけだよ」
自分で言いながら、本当にそうだ、と思う。命の恩人・白石くんとは本当に偶然知り合っただけで、いっしょに関東大会の会場に行ったことくらいしか交流がないのだ。これって果たして友達といえるのだろうか。そう思ったら、もし全国で白石くんに会ったとして「すまん、誰やったっけ」なんて言われてしまってもおかしくないかもしれない。
――うわぁ、それヘコむなぁ……。
そんなとき、横から助け舟が出された。
「おいおい乾、あまり支倉をいじめるなよ。本気で困った顔してるだろ」
「タカさん……!」
「まあ、仕方ない。今回は河村に免じて下がるとするか」
残念そうな表情で私のもとから去っていく乾。今ではまるでタカさんが天使のように見える。
「タカさんありがとう…!」
「いやぁ、礼には及ばないよ。それに支倉だって、いくら乾が同じチームだからって友達を売るようなマネはしたくないだろ」
「あ、うん、そだね…!」
その、『友達』っていうのが、私が勝手に思ってるだけなのかもしれないけど。
とは言わずに曖昧に笑っておいた。
――でも、たとえ忘れられていたとしても、やっぱりお礼くらいは言いたいよね。
――うん、やっぱり全国大会の会場で、白石くん探そう。
心の中で、ひそかに決意をした。
「……はあ、あと1週間で全国大会かー。俺達も出たかったよな。なぁ支倉っ」
「まぁ、私は選手じゃないから英二みたいに『出る』ってわけにはいかないけど……やっぱり全国の会場で応援したかったよねー……」
「フフ。2人ともどうしたの、めずらしくテンション低いじゃない」
「「不二!」」
英二と声が揃って、思わず顔を見合わせる。
「それで。2人がテンション低い原因は何?」
「いや、あのね?もうちょっとで全国大会はじまるでしょ」
「うん。そうだね」
「だからさ、本当は関東で勝って全国行きたかったよな、っていう話」
「ふーん。なるほど」
不二は私達2人の言い分を聞いて軽く笑う。
「まぁ、さすがに全国に出場することはできないけど、さっき手塚と大石が話してたよ。今の2年のレギュラーのみんなで全国大会見に行こうかって」
「「えっ?!」」
「まあ、やっぱり来年に向けて、予習は必要だしね」
そんな不二の台詞に、淡い期待と少しの不安を抱く。
――全国大会の会場にもし行けるとするなら、もしかしたら、また会えるのかもしれない。
でも、レギュラーのみんなで、ってことは、私はお留守番なのかもしれない。
「…ねえ不二、」
「ん、支倉、何?」
「それって、私もついて行っていいのかな……?やっぱり、レギュラーだけで水いらずな感じ?」
「ハハ。何言ってるの。手塚と大石が支倉を仲間はずれにするなんて思う?」
「思わないけど…」
「そーそー。支倉がハブられるわけないじゃん。俺達の大事なマネージャーなんだからさ」
「英二……」
どうしよう、不二と英二の何気ない言葉がすごく嬉しくて、不覚にもちょっと泣きそうになってしまった。
「まあ、後で2人から改めて話があると思うから、その時まで待ってようか」
そして、その日の部活のミーティングで、2年生のレギュラーに私を含めたメンバーで全国大会を観戦しに行くことが決まった。全国大会――青学が出られないのは悔しいけれど、さっき不二も言っていたように、来年の予習をしなくてはいけない。全国のライバルの試合を見られるだなんてめったにない機会だ。考えるだけで、まるで遠足の前のようにわくわくしてくる。
けれど、私はもっと違う理由でも心が弾んでいた。
――ひょっとしたら、白石くんに会えるかもしれない。
偶然知り合った大阪・四天宝寺の部長の白石くん。彼は「青学、勝つとええな」と応援してくれたというのに、私はといえば、いまだ彼に結果報告をしていなかった。とはいっても、青学が全国に行けなかったことを彼はすでに知っているのだろうけれど。それでも応援してもらった以上は、結果報告と応援してくれたことに対するお礼をすべきだったのに、その日の私は、青学が負けたショックに加え、先輩達の引退がさびしくて、泣いて泣いてボロボロで、到底白石くんに連絡しようだなんて考える余裕はなかった。
彼にお礼を言わなくちゃ、と気づいたのは、関東大会終了から1週間後の夜だった。
しかし、だ。
私達青学はすでに先輩達が引退して新体制がスタートしているけれど、白石くんはまだ全国大会を控えている身で忙しいはず。そう考えると迂闊にLINEも送れなかった。私は完全に彼に連絡するタイミングを逃してしまったのだ。
「でも……全国の会場で、会えるかもしれないんだよね」
ほんの少しの間しか彼と関わりはなかったものの、白石くんとのおしゃべりは本当に楽しくて、時間を忘れてしまった。お礼も言いたいし、それに、また楽しくおしゃべりしたいな、なんて思うと、また会いたいなぁ、という気持ちが強くなる。
と、その時だった。
「へぇ、全国の誰に会うんだ?支倉」
「ひゃぁ乾! いきなりドアップは怖いから!!」
「データは集められるだけ集めておきたいからな。全国大会に出場する選手の中で誰かと交流があるのか?」
「え?! あ、いや、うーん、あははははは」
「笑ってごまかそうとしている確率100%だな」
「別にいいじゃない、今回青学は戦わないんだし…!それに交流っていう交流でもないっていうか…偶然知り合ったっていうだけだよ」
自分で言いながら、本当にそうだ、と思う。命の恩人・白石くんとは本当に偶然知り合っただけで、いっしょに関東大会の会場に行ったことくらいしか交流がないのだ。これって果たして友達といえるのだろうか。そう思ったら、もし全国で白石くんに会ったとして「すまん、誰やったっけ」なんて言われてしまってもおかしくないかもしれない。
――うわぁ、それヘコむなぁ……。
そんなとき、横から助け舟が出された。
「おいおい乾、あまり支倉をいじめるなよ。本気で困った顔してるだろ」
「タカさん……!」
「まあ、仕方ない。今回は河村に免じて下がるとするか」
残念そうな表情で私のもとから去っていく乾。今ではまるでタカさんが天使のように見える。
「タカさんありがとう…!」
「いやぁ、礼には及ばないよ。それに支倉だって、いくら乾が同じチームだからって友達を売るようなマネはしたくないだろ」
「あ、うん、そだね…!」
その、『友達』っていうのが、私が勝手に思ってるだけなのかもしれないけど。
とは言わずに曖昧に笑っておいた。
――でも、たとえ忘れられていたとしても、やっぱりお礼くらいは言いたいよね。
――うん、やっぱり全国大会の会場で、白石くん探そう。
心の中で、ひそかに決意をした。