4次元で恋をする
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第3話 またね
翌朝、7時20分。10分前行動で待ち合わせ場所にたどりつくと、白石くんはもうそこに立っていた。ただ、私はあまり白石くんに会いたくなくて、柱の陰にこっそり隠れて彼を観察していた。まるでストーカーだけど、そう思われても構わない。だって、今の私の格好は、うぐいす色のジャージなのだ。
何で昨日約束したときに気づかなかったんだろう、と後悔してももう遅い。いくらマネージャーとはいってもあのレギュラージャージには袖を通す資格はないわけで(たまに寒がってたら不二が貸してくれるけど)、私はいつも学校のジャージで活動していた。しかし、うちの学年は、その色がハズレすぎるのだ。今の3年生は赤、1年生は青。――神様、むしろ石川校長、どうしてうちの学年だけこの微妙なうぐいす色なんですか。そんなことを考えている間にももう5分が経過していた。どうしよう、白石くんこれ以上待たせるわけにもいかないし……。でもほぼ初対面の人の前でこんなダサイ格好はしたくなかった、というのが本音だ。しかも相手が白石くんなら余計に。ちら、と腕時計に目をやる白石くんに、私は覚悟を決めた。
「お、おはよう白石くん!」
「おー、支倉さん、早いなあ。って、今日はジャージなんや」
さっそくつっこまれてしまって、少し泣きたい気持ちになる。
「これ、うちの学年の指定ジャージなんだけど……ダサいよね。笑っていいよ」
「そんなことあらへんで? ごっつう素敵な色のジャージやん」
「そのフォロー逆に嫌だよ…!」
「はは、でも似合ってるで」
「それも嬉しくない…!」
こんな会話をしていると、まるで昨日の夜知り合ったばかりとは思えなかった。まるでずっと昔から友達だったみたいだ。
「まあ冗談はさておき――そろそろ行こか」
「へ?」
私が白石くんを会場まで案内するはずが、なぜか主導権は白石くんに握られている。しかも、白石くんが進む方向は、完璧に合っている。
「白石くん、私いなくても全然会場までたどりつけるんじゃないの……?」
「そら、一応調べてきたし、別に方向音痴でもないしな。せやけど支倉さんおったほうがさらに確実性増すやろ?」
正論すぎて言い返せない。閉口するしかなくなった私に、白石くんは微笑む。
「てなわけで、頼りにしてるで、支倉さん」
「ま、任せといて!」
「お!めっちゃ男らしいなあ、惚れるわ」
「……あのね」
そんな調子で過ごすこと30分、そう遠くはない関東大会の会場にたどりついた。青学の集合場所には、もう大石や手塚の姿が見える。
「お、青学さん、あそこに集まっとるなぁ」
「うん。でも、白石くんはこれからどうするの?」
「とりあえず第1試合までの間は適当に散歩やな。支倉さんは、みんなと合流やろ?」
「うん、そうだけど……じゃあ、ここで白石くんとはお別れってことか。なんか昨日会ったばっかりだけど、もう一生会えないのかと思うとちょっとさびしいなぁ」
白石くんはそんな言葉に、ぷっと吹き出す。
「支倉さん、一生っちゅうんはさすがにスケールでかすぎや。少なくとも俺は全国大会で来月も東京来るで。今度はみんなでやけど」
「あ、そっか。そうだよね」
「青学も全国出場できたら、もしかしたら試合で当たるかもしれへんなぁ。そのときはよろしゅう」
「うん、でもそのときはウチが勝たせてもらうけどね!」
「お、言うたな。悪いけど、勝つんは俺らや。そこは譲られへん」
「あはは。お互い負けず嫌いだ」
「せやなあ。けど、支倉さん今の『ウチが勝たせてもらうけどね!』って言うてたときの表情やっぱりめっちゃ男前やわ。かっこええ」
「!! だから『男らしい』とか『男前』とか、嬉しくないってー……」
口をとがらせた私を見て、白石くんは軽く笑いながら、テニスバッグをかけ直す。
「ほな俺は行くわ、支倉さん。青学、勝つとええな」
「あ、うん、ありがとう白石くん!またね!」
またね、なんて言ってみたけれど、白石くんはもう私なんかと会う気はないのかもしれない。そう思うとちょっとさびしかったりもする。けれど、
「うん。またな」
白石くんがすごく気持ちのいい笑顔でそう言ってくれたから、その瞬間、私は、彼とはまたどこかで絶対に会える、と直感的に思った。
翌朝、7時20分。10分前行動で待ち合わせ場所にたどりつくと、白石くんはもうそこに立っていた。ただ、私はあまり白石くんに会いたくなくて、柱の陰にこっそり隠れて彼を観察していた。まるでストーカーだけど、そう思われても構わない。だって、今の私の格好は、うぐいす色のジャージなのだ。
何で昨日約束したときに気づかなかったんだろう、と後悔してももう遅い。いくらマネージャーとはいってもあのレギュラージャージには袖を通す資格はないわけで(たまに寒がってたら不二が貸してくれるけど)、私はいつも学校のジャージで活動していた。しかし、うちの学年は、その色がハズレすぎるのだ。今の3年生は赤、1年生は青。――神様、むしろ石川校長、どうしてうちの学年だけこの微妙なうぐいす色なんですか。そんなことを考えている間にももう5分が経過していた。どうしよう、白石くんこれ以上待たせるわけにもいかないし……。でもほぼ初対面の人の前でこんなダサイ格好はしたくなかった、というのが本音だ。しかも相手が白石くんなら余計に。ちら、と腕時計に目をやる白石くんに、私は覚悟を決めた。
「お、おはよう白石くん!」
「おー、支倉さん、早いなあ。って、今日はジャージなんや」
さっそくつっこまれてしまって、少し泣きたい気持ちになる。
「これ、うちの学年の指定ジャージなんだけど……ダサいよね。笑っていいよ」
「そんなことあらへんで? ごっつう素敵な色のジャージやん」
「そのフォロー逆に嫌だよ…!」
「はは、でも似合ってるで」
「それも嬉しくない…!」
こんな会話をしていると、まるで昨日の夜知り合ったばかりとは思えなかった。まるでずっと昔から友達だったみたいだ。
「まあ冗談はさておき――そろそろ行こか」
「へ?」
私が白石くんを会場まで案内するはずが、なぜか主導権は白石くんに握られている。しかも、白石くんが進む方向は、完璧に合っている。
「白石くん、私いなくても全然会場までたどりつけるんじゃないの……?」
「そら、一応調べてきたし、別に方向音痴でもないしな。せやけど支倉さんおったほうがさらに確実性増すやろ?」
正論すぎて言い返せない。閉口するしかなくなった私に、白石くんは微笑む。
「てなわけで、頼りにしてるで、支倉さん」
「ま、任せといて!」
「お!めっちゃ男らしいなあ、惚れるわ」
「……あのね」
そんな調子で過ごすこと30分、そう遠くはない関東大会の会場にたどりついた。青学の集合場所には、もう大石や手塚の姿が見える。
「お、青学さん、あそこに集まっとるなぁ」
「うん。でも、白石くんはこれからどうするの?」
「とりあえず第1試合までの間は適当に散歩やな。支倉さんは、みんなと合流やろ?」
「うん、そうだけど……じゃあ、ここで白石くんとはお別れってことか。なんか昨日会ったばっかりだけど、もう一生会えないのかと思うとちょっとさびしいなぁ」
白石くんはそんな言葉に、ぷっと吹き出す。
「支倉さん、一生っちゅうんはさすがにスケールでかすぎや。少なくとも俺は全国大会で来月も東京来るで。今度はみんなでやけど」
「あ、そっか。そうだよね」
「青学も全国出場できたら、もしかしたら試合で当たるかもしれへんなぁ。そのときはよろしゅう」
「うん、でもそのときはウチが勝たせてもらうけどね!」
「お、言うたな。悪いけど、勝つんは俺らや。そこは譲られへん」
「あはは。お互い負けず嫌いだ」
「せやなあ。けど、支倉さん今の『ウチが勝たせてもらうけどね!』って言うてたときの表情やっぱりめっちゃ男前やわ。かっこええ」
「!! だから『男らしい』とか『男前』とか、嬉しくないってー……」
口をとがらせた私を見て、白石くんは軽く笑いながら、テニスバッグをかけ直す。
「ほな俺は行くわ、支倉さん。青学、勝つとええな」
「あ、うん、ありがとう白石くん!またね!」
またね、なんて言ってみたけれど、白石くんはもう私なんかと会う気はないのかもしれない。そう思うとちょっとさびしかったりもする。けれど、
「うん。またな」
白石くんがすごく気持ちのいい笑顔でそう言ってくれたから、その瞬間、私は、彼とはまたどこかで絶対に会える、と直感的に思った。