4次元で恋をする
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第2話 命の恩人
お、おお大阪四天宝寺中テニス部って………。突然の衝撃的すぎる自己紹介に私はたじろいだ。ちょうどその日の部活で、乾と四天宝寺の話をしていたばかりだったせいもある。東の王者が立海だとすれば、四天宝寺は西の雄。そんな彼らは今年も関西大会で優勝して全国を決めたと聞いている。しかし、残念ながら青学はここ最近関東大会敗退という結果が続いているから、私は四天宝寺中の人と実際に顔を合わせたことはなかった。
その部長さんが、目の前にいる。白石蔵ノ介。その名前も、うっすらとは聞いたことがある。
差し出された右手に手を伸ばしながら、私はわけのわからないまま、「青学男子テニス部マネージャーで、2年の支倉麻衣です」と自己紹介をする。
「……支倉さん、2年なん?」
「え、うん、そうですけど……」
「ごめん、俺、完全に年下や思ってたわ」
「えー!?」
「はは、勘忍な」
白石くんは笑う。それを見て、はじめて会ったのになんとなく話しやすい空気を持っている人だなあ、と思う。私たちはついさっき出会ったばかりなのに、階段を降りるときも、そして改札を出た後も、面白いくらい話が弾んだ。
「白石くん、ここまで1人で来たの?」
「そうやで。ほんまは監督といっしょのはずやってんけど、あのオッサンいきなり『都合悪なったから悪いけどひとりで行って来ぃや』言いよってな…」
「へえー。でも1人旅ってすごいね」
「いやいや!旅て。そんな大それたもんやないで?普通に新幹線乗って、普通に乗り換えるだけやし。それに、さすがにスケジュール的に日帰りはムリやってんけど、明日も大会終わったらすぐ大阪帰るしな」
「そっかぁ」
と、納得したところで気がついた。そうだ、私は助けてもらったお礼をしたいと思っていたのに、明日帰ってしまうんだったら、今の内に何かしておかないと何もできない。
「そうだ、白石くん!明日帰っちゃうなら、さっき助けてもらったお礼、今させて?」
「そんな、お礼とか別にええよ?」
「でも、命の恩人だし、せめてジュースくらいおごらせて!絶対私あそこから落ちてたら、まあ、死んではなかったかもしれないけど、骨くらいは折れてたと思うの。そしたら明日の関東大会も行けなかったし……」
私がそう言うと白石くんは、せやったら、とおもむろに言った。
「支倉さんちってこの駅が最寄りなん?」
「うん、そうだけど」
「俺な、この駅の近くのホテルに泊まんねんけど、明日いまいち関東大会の会場までの道のり、自信ないねん。せやから、俺、明日ここの駅におるから、会場までいっしょに行かへん?」
「………え、そんなのでいいの?」
「そんなの、て。俺にとっては死活問題やねんで。大阪からわざわざ来たっちゅーのに会場わからんくて手塚クン見られへんかったらただのアホやんか」
「あははは、それもそっか」
「ほんなら、支倉さん、決まりやで」
白石くんは、ここから会場まで何分くらいかかるん、と訊ねながら携帯を取り出した。
「ほな、7時半くらいに駅におったら間に合うよな?」
「うん、それくらいがちょうどいいと思う」
「支倉さん、一応連絡先教えてや」
「もちろん。LINEでいいかな」
そして、私たちはLINEを交換をして、明日の待ち合わせの時間と場所を決めた。
白石くんと別れて、急いで家への道を歩く。今日1日を振り返って、私は不思議な気持ちになった。なんて偶然の出会いだろう。それにしても、ホームの階段の一番上から落ちそうになるだなんて、今までこの街でこの駅を約14年間も利用してきて一度もなかったのに。そう考えると、白石くんとは出会うべくして出会ったのかもしれない。もしかして、運命の出会い……?
「…なーんてね、ありえないありえない」
そんなひとりごとは、夜の闇へと溶けていった。
お、おお大阪四天宝寺中テニス部って………。突然の衝撃的すぎる自己紹介に私はたじろいだ。ちょうどその日の部活で、乾と四天宝寺の話をしていたばかりだったせいもある。東の王者が立海だとすれば、四天宝寺は西の雄。そんな彼らは今年も関西大会で優勝して全国を決めたと聞いている。しかし、残念ながら青学はここ最近関東大会敗退という結果が続いているから、私は四天宝寺中の人と実際に顔を合わせたことはなかった。
その部長さんが、目の前にいる。白石蔵ノ介。その名前も、うっすらとは聞いたことがある。
差し出された右手に手を伸ばしながら、私はわけのわからないまま、「青学男子テニス部マネージャーで、2年の支倉麻衣です」と自己紹介をする。
「……支倉さん、2年なん?」
「え、うん、そうですけど……」
「ごめん、俺、完全に年下や思ってたわ」
「えー!?」
「はは、勘忍な」
白石くんは笑う。それを見て、はじめて会ったのになんとなく話しやすい空気を持っている人だなあ、と思う。私たちはついさっき出会ったばかりなのに、階段を降りるときも、そして改札を出た後も、面白いくらい話が弾んだ。
「白石くん、ここまで1人で来たの?」
「そうやで。ほんまは監督といっしょのはずやってんけど、あのオッサンいきなり『都合悪なったから悪いけどひとりで行って来ぃや』言いよってな…」
「へえー。でも1人旅ってすごいね」
「いやいや!旅て。そんな大それたもんやないで?普通に新幹線乗って、普通に乗り換えるだけやし。それに、さすがにスケジュール的に日帰りはムリやってんけど、明日も大会終わったらすぐ大阪帰るしな」
「そっかぁ」
と、納得したところで気がついた。そうだ、私は助けてもらったお礼をしたいと思っていたのに、明日帰ってしまうんだったら、今の内に何かしておかないと何もできない。
「そうだ、白石くん!明日帰っちゃうなら、さっき助けてもらったお礼、今させて?」
「そんな、お礼とか別にええよ?」
「でも、命の恩人だし、せめてジュースくらいおごらせて!絶対私あそこから落ちてたら、まあ、死んではなかったかもしれないけど、骨くらいは折れてたと思うの。そしたら明日の関東大会も行けなかったし……」
私がそう言うと白石くんは、せやったら、とおもむろに言った。
「支倉さんちってこの駅が最寄りなん?」
「うん、そうだけど」
「俺な、この駅の近くのホテルに泊まんねんけど、明日いまいち関東大会の会場までの道のり、自信ないねん。せやから、俺、明日ここの駅におるから、会場までいっしょに行かへん?」
「………え、そんなのでいいの?」
「そんなの、て。俺にとっては死活問題やねんで。大阪からわざわざ来たっちゅーのに会場わからんくて手塚クン見られへんかったらただのアホやんか」
「あははは、それもそっか」
「ほんなら、支倉さん、決まりやで」
白石くんは、ここから会場まで何分くらいかかるん、と訊ねながら携帯を取り出した。
「ほな、7時半くらいに駅におったら間に合うよな?」
「うん、それくらいがちょうどいいと思う」
「支倉さん、一応連絡先教えてや」
「もちろん。LINEでいいかな」
そして、私たちはLINEを交換をして、明日の待ち合わせの時間と場所を決めた。
白石くんと別れて、急いで家への道を歩く。今日1日を振り返って、私は不思議な気持ちになった。なんて偶然の出会いだろう。それにしても、ホームの階段の一番上から落ちそうになるだなんて、今までこの街でこの駅を約14年間も利用してきて一度もなかったのに。そう考えると、白石くんとは出会うべくして出会ったのかもしれない。もしかして、運命の出会い……?
「…なーんてね、ありえないありえない」
そんなひとりごとは、夜の闇へと溶けていった。