4次元で恋をする
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第1話 出会い
明日は関東大会だというのに、毎日使っている駅の毎日使っている階段だったからかもしれない。油断した。油断せずに行こう、って手塚にも言われてるのに、これでは彼に会わせる顔がない。
あろうことか階段の一番上の段で足を滑らせた私は、はるか下の地面へとまっさかさまに落ちていく。まわりがスローモーションのように見える中、私もしかしてこのままうちどころが悪くて死ぬのかな…なんて考えていると、
「あかんっ、」
そんな声と共に、ふと、ぐいっと腕が後ろに引っ張られた。その勢いで私の身体は後ろになだれ込む。しかし、背中は痛くない。は、と気づけば、制服姿の少年が私の下敷きになっていた。
「うわわわわわわわわわわ! 大丈夫ですか?!」
「……それはこっちのセリフやって。 キミ、大丈夫か? 怪我せえへんかった?」
関西弁…?テレビでは聞いたことがあるけれど、親戚一同関東在住の私にとって生の関西弁は耳慣れないものだった。慌てて立ちあがると、その少年も立ちあがってスラックスについた砂ぼこりをはらう。それにしても周りの人は、いくら急いでいたとしても、もう少し私に注目してくれてもいいんじゃないか。ついさっき、階段の上からあんなに派手に落ちかけていたというのに、助けようとしてくれて、現にこうやって助けてくれたのは彼だけだ。颯爽と階段を下りていく人々を尻目にそんなことを考える。
「……おかげさまで無事です。助けてくれて本当にありがとうございました」
「ええって。この状況で何にもせえへんほうがおかしいし、お礼なんて水くさいわ」
ぺこりと下げた頭を元の位置に戻してはじめて、私はその制服姿の少年の顔を見た。
「せやけど、間に合ってよかった。こんなところから落ちたら、ほんまに危ないしなぁ」
―――え。
あ、あの。ちょっと待って、めちゃくちゃイケメンなんですけど…!何これ、手塚レベル、っていうかむしろナチュラルに微笑んでいる時点で個人的には手塚より好みなんですけど!しかもよく見ると、その少年は、ショルダーの旅行カバンの他に、大きなテニスバッグを背負っている。この人、テニス、するのかな?
「……テニスしてるんですか?」
「は?」
「あ、いえ、何でもないです!ごめんなさい!」
行きずりの人に一体何を聞いているんだ私は。普通ならそんなことより先に「何かお礼させてください」とかもう少し気の利いた台詞を言うべきところなのに。でも、見かけ的には同い年くらいだし、もしかしたら、こんな時間にテニスバッグを背負っているなんて、彼も明日の関東大会に出場するのかもしれない。
「お察しの通りや。俺、テニス部やねん」
「そうなんですか。あ、いや、私、中学の硬式テニス部のマネージャーやってて!明日中体連の関東大会あるから、それに出場する人なのかなと思って……」
「え、キミ、テニス部のマネージャーなん?」
「あ、はい、そうですけど……」
「もしかして青春学園のマネージャーさんやったりする?」
え、何で知ってるの。ていうか私今思いっきり青学のセーラー着てるんですけど…!
「もしかしなくても、そうですけど……」
そう言うと、彼はとても驚いたような顔をして、そして「これはご挨拶せなあかんな」と小さく呟いた。
「キミの学校に、手塚クン、ていてるやろ」
「え、あ、は、はい」
「彼が気になってな。明日の関東大会、はるばる大阪から見に来てん」
どうりで、関西弁でしかも旅行カバンを肩にかけてるわけですか。それにしても、手塚をわざわざ大阪から見に来るなんて――きっと彼も手塚並の実力者に違いない。彼はいったい何者?
「あ、申し遅れたな。俺は、大阪四天宝寺中テニス部部長、2年の白石蔵ノ介や」
そう言って右手を差し出した彼に、私は駅のホームということも忘れて思わず「ええええええええ!?」と叫んでしまった。だってだって、四天宝寺中テニス部なんて、私ですら知っているくらい有名だ。関西一のテニス部を束ねる部長が目の前にいるだなんて。
明日は関東大会だというのに、毎日使っている駅の毎日使っている階段だったからかもしれない。油断した。油断せずに行こう、って手塚にも言われてるのに、これでは彼に会わせる顔がない。
あろうことか階段の一番上の段で足を滑らせた私は、はるか下の地面へとまっさかさまに落ちていく。まわりがスローモーションのように見える中、私もしかしてこのままうちどころが悪くて死ぬのかな…なんて考えていると、
「あかんっ、」
そんな声と共に、ふと、ぐいっと腕が後ろに引っ張られた。その勢いで私の身体は後ろになだれ込む。しかし、背中は痛くない。は、と気づけば、制服姿の少年が私の下敷きになっていた。
「うわわわわわわわわわわ! 大丈夫ですか?!」
「……それはこっちのセリフやって。 キミ、大丈夫か? 怪我せえへんかった?」
関西弁…?テレビでは聞いたことがあるけれど、親戚一同関東在住の私にとって生の関西弁は耳慣れないものだった。慌てて立ちあがると、その少年も立ちあがってスラックスについた砂ぼこりをはらう。それにしても周りの人は、いくら急いでいたとしても、もう少し私に注目してくれてもいいんじゃないか。ついさっき、階段の上からあんなに派手に落ちかけていたというのに、助けようとしてくれて、現にこうやって助けてくれたのは彼だけだ。颯爽と階段を下りていく人々を尻目にそんなことを考える。
「……おかげさまで無事です。助けてくれて本当にありがとうございました」
「ええって。この状況で何にもせえへんほうがおかしいし、お礼なんて水くさいわ」
ぺこりと下げた頭を元の位置に戻してはじめて、私はその制服姿の少年の顔を見た。
「せやけど、間に合ってよかった。こんなところから落ちたら、ほんまに危ないしなぁ」
―――え。
あ、あの。ちょっと待って、めちゃくちゃイケメンなんですけど…!何これ、手塚レベル、っていうかむしろナチュラルに微笑んでいる時点で個人的には手塚より好みなんですけど!しかもよく見ると、その少年は、ショルダーの旅行カバンの他に、大きなテニスバッグを背負っている。この人、テニス、するのかな?
「……テニスしてるんですか?」
「は?」
「あ、いえ、何でもないです!ごめんなさい!」
行きずりの人に一体何を聞いているんだ私は。普通ならそんなことより先に「何かお礼させてください」とかもう少し気の利いた台詞を言うべきところなのに。でも、見かけ的には同い年くらいだし、もしかしたら、こんな時間にテニスバッグを背負っているなんて、彼も明日の関東大会に出場するのかもしれない。
「お察しの通りや。俺、テニス部やねん」
「そうなんですか。あ、いや、私、中学の硬式テニス部のマネージャーやってて!明日中体連の関東大会あるから、それに出場する人なのかなと思って……」
「え、キミ、テニス部のマネージャーなん?」
「あ、はい、そうですけど……」
「もしかして青春学園のマネージャーさんやったりする?」
え、何で知ってるの。ていうか私今思いっきり青学のセーラー着てるんですけど…!
「もしかしなくても、そうですけど……」
そう言うと、彼はとても驚いたような顔をして、そして「これはご挨拶せなあかんな」と小さく呟いた。
「キミの学校に、手塚クン、ていてるやろ」
「え、あ、は、はい」
「彼が気になってな。明日の関東大会、はるばる大阪から見に来てん」
どうりで、関西弁でしかも旅行カバンを肩にかけてるわけですか。それにしても、手塚をわざわざ大阪から見に来るなんて――きっと彼も手塚並の実力者に違いない。彼はいったい何者?
「あ、申し遅れたな。俺は、大阪四天宝寺中テニス部部長、2年の白石蔵ノ介や」
そう言って右手を差し出した彼に、私は駅のホームということも忘れて思わず「ええええええええ!?」と叫んでしまった。だってだって、四天宝寺中テニス部なんて、私ですら知っているくらい有名だ。関西一のテニス部を束ねる部長が目の前にいるだなんて。
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