即興小説
趣味の悪いゲーム
War of Country 略してWoC。一見するとありふれた戦争ゲームが爆発的な大人気ゲームになったのは「没入感」があげられるだろう。従来の戦争ゲーム、FPSやTPSは画面の前でコントローラーを握り、目の前の画面を見つめ遊ぶゲームであった。しかし、WoCは最新鋭のバーチャルリアリティを利用した最新鋭のゲームなのである。
「戦場へのバーチャルダイブに懸念を示す人、主に若い子を持つ親御さんは非常に多いものでした」
画面越しのスポットライトを浴びた小太りの中年はハキハキと喋り出す。無名だったゲーム会社をWoC一本で急成長させた偉大な社長! とテロップが流れているのを見て私は辟易とした。
まるで本当に兵士になったかのようなリアルなグラフィック。まるで本当に銃を持っているかのような操作感。さすがに痛覚は遮断、緩和してあるものの本当に戦地に立っているかのような体験は戦争を知らない子供達を夢中にさせた。最初は親やフェミニストなども「人を殺すゲームなんて!」と反対していたがWoCの大流行により殺人や暴力に関連する事件が減ったことから今やWoCを批判する人間などほぼいない。開発者の一人である私を除いて。
人々は知らない。これがただのゲームではない事を。バーチャル操作と遠隔操作ロボットを組み合わせた本当の殺戮兵器であることを。戦争は、既に始まっていることを。今はまだ、知らないのだ。
(お題:憧れの戦争)
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