本編

「んっ、あれ? ここは……」

 目覚めると僕は何故か煉くんの部屋にいた。

「あっ二人とも起きたよ」

「「分かった」」

 翡翠くんが下の階にいる二人声をかけると、二人の揃って言う声が聞こえた。仲良しだな。

「氷雨くん調子どう?」

「大丈夫だと思う」

「それなら良かった」

 安心したのか翡翠くんは小さく笑みを浮かべた。するとコンコンとノックの音と共に扉が開き、2人が入ってきた。煉くんは僕の姿を見るなり、飛びついてきた。

「氷雨大丈夫か?」

「わっ! 大丈夫だから離して。苦しい」

 勢いよく扉が開かれたと思うと突進するように煉くんが僕に体当たりして、抱きしめてきた。ぽんぽんと肩を叩き、苦しいことを伝えると少し力を緩めてくれたが、それでもまだくっついたままだった。

「あの、氷雨くんに聞きたいんだけど……」

 煉くんが僕から離れると、少し言いづらそうに翡翠くんが僕に声をかけた。

「どうしたの?」

「氷雨くん煉くんに謝りたい事があるの?」

「えっ? なんで?」

「さっきごめんなさいって煉くんに対して言っていたから……」

 もしかして、僕無意識に。
 不安に思っていると翡翠くんは少し慌てた様子で僕を見て言う。

「無理に言う必要はないよ。ただ気になっただけだから」

「うん。じゃあ、煉くんと2人きりにさせてくれないかな?」

「分かった。話が終わったらリビングに来てね」

「うん」

 返事をすると翡翠くんと紺くんは出ていき、煉くんと2人きりになった。

「それで話って……」

 不安そうに見てくる煉くんに僕は少し深呼吸をしてから頭を下げる。

「ごめんなさい。僕、煉くんのことが好きなんだ」

 煉くんは驚き目を見開き、僕を見てきた。その表情に胸が痛み、息が苦しくなるがそのまま話を続けた。

「分かってる。こんな気持ち持っちゃいけないんだって。実は紺くんとの話、盗み聞きしていたんだ。ごめん、そうだよね。ずっとみんなと居るには恋愛なんてダメなんだって。本当にごめんなさい。もうこの気持ちは捨てるから。僕を振って、お願いだからッ……」

 溢れそうになる涙を堪え、煉くんの赤い炎の様な瞳を見つめて言った。

「ごめん」

 うん、それで良い。こんな気持ちを忘れるためにはこうしないと。

「もう少し考えさせて」

「えっ……」

 なんで、だって煉くんはずっと友達でいたいんでしょ?だから僕を振れば全て解決するでしょ? なんで、なんで!

「なんで! 僕を振ってよ。なんで期待させる様な事するの! 僕を振ればずっと友達、仲間としていられるでしょ」

「ごめん氷雨」

「なんで謝るの! 僕が望んでいるのはそんな事じゃない!」

「分からないんだ……」

「何が分からないの?」

「僕、嬉しいんだ。本当はこんな事望んでいるはずじゃないのに、何でなの?」

「え……」

 どう言う事?両思いだったて事? でも煉くんは望んでいないんでしょ? もう分からないよ。

 これから僕はどうすればいいの?
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