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二度目の告白 ~君なしではダメ~

「瑞希さん、どうするの?」
「どうするも何も受けるしかないだろ」

心配そうに俺を見るドミニクに力無く笑って見せる。
ドミニクにはカメラマンになったきっかけや爽汰の事を簡単に話した事がある。
俺の話を聞いて「人生色々だよね」と微笑ったドミニクは俺より二つ年下なのに、あの時は年上の様に感じた。

「…ボスは何て?」
「ん~、二~三日の間ゆっくり考えろって」
「そっか。もし何か困った事があったら何でも言って。俺で力になれる事なら協力するから」
「…ありがとな、ドム」

にっこり笑ったドミニクに俺も笑い返した。




家に帰りカメラの手入れをしていると、床に放ったままの鞄からバイブの振動でスマートフォンが滑り出て来た。
画面を見て小さく溜め息を吐く。

「もしもし」
『もしもし瑞希兄さん?今大丈夫?』
「少しならな」
『あ、ごめん。邪魔しちゃった?』
「カメラの手入れをしてたとこだ。何の用だ?」
『用っていうか……その…』
「用が無いなら切るぞ」
『あっ、ちょっ、ちょっと待ってよ!』
「何だよ?」
『……声が……聴きたかったんだ…』
「……」
『兄さんの声が…聴きたかったんだ。……兄さんはそういう時って…無い?』
「………お前、写真集のカメラマンに俺を指名したんだってな?」
『…うん』
「何でそんな事したんだよ?」
『……兄さんと一緒に仕事がしたかったんだ。兄さんに…写真を撮って欲しかったんだ』
「……公私混同すんなよ」
『兄さんに…見て欲しいんだ。俺がどんな風に仕事してるのか、俺が何をどう見てどんな風に思ってるか……知って欲しいんだ』

爽汰の懇願する様な声に何も言えなくなる。
こんな声を前にも聞いた事がある。


『瑞希兄さん、俺の傍に居てよ。何処にも行かないでよ…』


あの時どんなに爽汰を抱き締めたかったか、どれだけ「ずっと傍に居る」と言ってやりたかったか、お前は知らないだろ?


スマホを持つ手にぎゅっと力が入る。

『…兄さん……怒ってるの?』
「……別に…怒ってない」
『………また連絡するね。…お休み』

落ち込んだ声が聞こえて通話が切れた。
多分爽汰は俺が怒っていると思ったのだろう。
だらりと下ろした手でスマホをソファに放り投げると、上半身をソファに投げ出す。
ゆっくりと少しだけ手を持ち上げじっと見る。


『ねえ、兄さん。もう諦めてよ。俺から逃げないでよ』


爽汰を受け入れると覚悟を決めた時、絶対にこの手を離さないと心に誓った。
爽汰のゴシップを知って怒って喧嘩した後も、林さんの一件で擦れ違った後も、必ず爽汰は俺の手を握りその温もりで俺の中の不安ごと包み込んでくれた。
それでも不安になる。
俺よりずっと先を行く、俺の知らない世界で俺の知らない存在になって行く爽汰に不安になって、逃げ出したくなる。

「……爽汰のバカ野郎…」



八つ当たりだと分かっていてもそう呟いた自分が情けなくて、持ち上げた手で顔を覆った。

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