このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

二度目の告白 ~君なしではダメ~

瑞希みずきさん、ボスが部屋に来いって」

取材から帰って来るや否や、ドミニクが所長室を指差しながら俺に言った。

「え~」
「何か仕事の話らしいよ」
「え~」

面倒臭いと言わんばかりの表情を返すとドミニクに「そんな顔しないの」と両手で背中をグイグイ押されて、仕方なく所長室をノックする。

「失礼しまーす」
「おう、ちょっとこっちに来い」


俺が勤務する撮影スタジオはそんなに大きな事務所じゃない。
けれど通好みというのか、作家の取材同行や旅行雑誌からの依頼を受ける事が比較的多い。
勿論個人依頼もあるが、俺はどちらかというと前者を引き受けるのが専らだ。


「お前、CLUBってモデル事務所を知ってるか?」
「えっ?」
「人気モデルを多数抱えてる事務所なんだと。で、其処の一番人気が今度写真集を出すとかで、カメラマンにお前を指名して来たらしいんだ」
「…は?」
「うちとしては断ろうかとも思ったんだが出版社に是非にと言われてなぁ。まぁお前がどうしても嫌ならうちにはドミニクも居るし、ドミニクの方がポートレートの実績があるんだから掛け合ってはみるが……どうする?」

所長が俺を見るのにそれとなく視線を逸らす。


……CLUBっていったら爽汰そうたの居る事務所だよな、其処の一番人気っていったら…アイツっ!


内心で舌打ちをする。

「どうする?やっぱり話自体を断るか?」

所長の言葉に「断ってください」と言いたいのが本音だ。
でもそれは俺の我が儘だ。
この依頼を受けて写真集が売れれば…いや、爽汰なら間違いなくベストセラーだ。
そうなれば此処の名前も広く周知される。
そしたらスタジオの仕事も、俺やドミニクへの依頼も増えるかもしれない。


でも…


千屋ちや?どうした?」

所長の声に我に返るも直ぐに返答する事ができない。

「…俺っ、……は…」
「向こうには二~三日中に返答する様に伝えてある。じっくり考えておいてくれ」

立ち上がって俺の肩をポンと叩いた所長に頭を下げて部屋を出る。



爽汰の奴、マジで何考えてんだっ!?


7/20ページ
スキ