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二度目の告白 ~君なしではダメ~

その後、初めて会った那智さんの印象は “可愛い人” だった。
俺より六歳も年上なのに、 “恰好良い” よりも “可愛い” と言った方がぴったりなルックスと何より俺よりも低く腕の中にすっぽり収まりそうな身長が、可愛い人という印象を強調していた。
挨拶を交わせば年下の俺にも丁寧に頭を下げてくれた。
その人柄に惹かれ、直ぐに仲良くなった。
その那智さんが撮影の終盤に明らかに様子がおかしくなった。
そして撮影終了直後ふらついて倒れて来た脚立から那智さんを庇って怪我をした俺は、これ幸いとばかりに雑誌で見たミモザ館へと向かい、其処で瑞希兄さんと再会した。



あの時、どんなに俺が嬉しかったか…泣きたくなるくらい嬉しかったんだって、瑞希兄さんは気づいてる?



『俺には兄さんしかいないんだ、瑞希兄さんじゃないとダメなんだ』


あの日、初めて自分の想いを告げた。
兄さんも俺に応えてくれた。
それがどれだけ嬉しくて幸せだったか…


あれから何かが劇的に変わった訳じゃ無い。
でも瑞希兄さんも俺と同じ想いで居てくれている、それだけで俺の日常は明るく輝いて見えた。
いつも傍に居なくても、直ぐに会えなくても兄さんの事を思えばどんな事だって乗り越えられる、そう思っていた。


けれど…


最近はそれだけじゃ足りなくなっている。
いつも傍に居て欲しい、直ぐに会いたい、いつだって…瑞希兄さんに触れていたい…そう思う様になってしまった。

初めてキスしたのはいつだった?
あれは確か…そう、俺の初めてのドラマ出演が決まった直後、相手女優とのゴシップが出た時だ。
怒った兄さんの姿に焦ると同時に、兄さんもちゃんと俺を好きなんだと実感できた事が嬉しくて、抱き締めてキスをした。
微かに震える柔らかな唇の感触を今でも憶えている。

初めて抱いたのは…確かあの時もミモザ館だった。
風景写真を専門にしていた瑞希兄さんがポートレートを撮った。
それが俺じゃなかった事に嫉妬して喧嘩して。
「暫く会わない」と告げられて本気で泣きそうになった。
やっと再会できたと思ったらミモザ館で兄さんとあの人…林さんが居るのを見て、余計に嫉妬して酷い事言って兄さんを傷つけて…

でもあの時も那智さんやミモザ館の人達のお蔭で瑞希兄さんと仲直りできた。
初めて体を重ね、俺の下で感じているのに一生懸命声を我慢する兄さんの姿にもっと感じて欲しいもっと俺を求めて欲しいと、夢中であの白い肌に触れた。




あれから暫く経つけど、瑞希兄さんから俺を求めてくれた事は無い。
いつも連絡をするのは俺の方からで、電話もメールも兄さんから送られて来た事は約束のキャンセル以外は一度も無い。
「おはよう」や「お休み」ですら兄さんからは言ってくれない。
それが寂しくて不安で……そう感じてしまうのは俺だけなんだろうか?



だから瑞希兄さんの名前を出した。
仕事という大義名分があれば、兄さんと会う事を誰かに咎められる事も無いだろう。
兄さんも俺を好きなら俺との仕事を少しは喜んでくれるんじゃないか…いや、喜んで欲しい。


それが俺の独り善がりだとしても…


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