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二度目の告白 ~君なしではダメ~

家に帰りスマートフォンを開く。

「今日も向こうからは連絡無し、かぁ」

事務所や知人以外の名前を見つけられず、それ等の内容をざっと確認するとスマホをテーブルの上に置く。
でも直ぐにまたスマホを手に取ると短い文章を打ってメッセージを送る。

“今帰って来たよ。そっちはもう帰った?”

数分後、手の中でスマホが震えた。

“お疲れ。飯食って今から帰るとこ”
“連絡くれたら一緒に行ったのに”
“バカ。お前は不用意に出歩くな”
“でも瑞希みずき兄さんと一緒にご飯食べたい”

少し間があって返事が返って来た。

“今度な”
“今度っていつ?次はいつ会えるの?”

俺の直ぐの返信に返る応えは無い。
小さく唇を噛んでまたメッセージを送る。

“我が儘言ってごめんなさい。俺の事嫌いにならないで”

また少ししてスマホが震えた。

“別に嫌いになったりしてない”

両手でぎゅっと握ったスマホを胸に当てながら、リビングのソファに体を横たえた。




瑞希兄さんとは幼馴染で、幼い頃から何をするにも俺は兄さんの後を追いかけていた。
誰にでも優しく接する瑞希兄さんが唯一俺にだけは意地悪で、俺にはそれが “お前は特別だ” と言われている様で…
そんな瑞希兄さんは友達も多かったし何よりモテた。
同級生は固より上級生下級生を問わず他校生に慕われる事も多く、四歳も年下の俺からすれば兄さんと仲の良い人達は皆、男女を問わずライバルでしかなかった。
そしてそれ以上に俺を不安にさせたのが、兄さんは少し惚れっぽい処がある事だった。
優しくした相手に勘違いされて、その子が “そういう” 素振りを見せれば兄さんもまた直ぐに惚れてしまう、その繰り返し。
そして相手が垣間見せる素の姿に幻滅するのか、本気の交際が始まる前に終わってしまうのだ。




『お前さぁ、モデルとか意外とイケるんじゃないか?』


あれは中学に入学して間も無い頃だった。
自分で言うのも何だけど、俺は幼い頃からモテた。
それこそ小学生で女の子に告白されたりもしたし、中学の入学式から数日後には上級生や高校生から告白された。
けれどその頃には既に瑞希兄さんしか見ていない俺は、全ての告白に「ごめんなさい」としか返事ができないで居た。
そんな俺に兄さんは何を思ったのか「モデルになったら?」と薦めて来た。

「いや無理だから。何言ってんの?」
「そんなのやってみなきゃ分かんないだろ?」
「いや分かるって!」
「お前いつもムカつくぐらいに自信満々のクセに、何でこういう時は尻込みするんだよ?」

そんなの兄さんしか見てないからだよ!と口にしそうになった時

「大丈夫だって。俺がお前を最高にカッコ良く写真撮ってやるから」

カメラを趣味にしていた瑞希兄さんにそう言われて、兄さんに撮って貰いたい願望とそんな事したって無理なものは無理だという思いの狭間で揺れて、結局前者が勝った。
楽しそうに俺にああしろこうしろと指示を出す兄さんを見て、俺も嬉しくて被写体になった。
オーディションを見つけて来た兄さんが書類を揃えるのを面白半分に見ていた。
そして合格通知が届きレッスンを受けモデルを始めると、予想に反して俺は人気を得た。



その後モデルとしての人気が定着した頃、瑞希兄さんは俺の前から姿を消した。


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