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二度目の告白 ~君なしではダメ~

二日後の朝、連絡しておいた郊外にある公園に向かった。
その公園は緑が多く遊歩道も整備されていて、休日だと親子連れ等の一般人も多いが平日は散歩する人が疎らに居るだけだ。
ちゃんと許可さえ取れば雑誌等の撮影も可能で、その事を知ってから、一度この公園で撮影をしてみたいとずっと思っていた場所だった。




「すみません、お待たせしました」

待ち合わせ場所に着くと、爽汰と水谷さんは既に到着していた。

「いえ、俺達も少し前に来たばかりですから」
「那智さんが電話くれなかったら俺、寝坊してたかも」

あっけらかんと笑う爽汰とそんな爽汰を見て笑う水谷さんに、また胸がチリッと小さく痛い。

「千屋さんも寝坊ですか?」
「…ええ、ちょっと…写真の選定に時間が掛かってしまって。こっちから頼んでおいて本当にすみません」

俺は朝があまり強くない。
爽汰もそれを知っている筈だ。
あの日以来、あくまで俺と距離を置こうとする爽汰を腹立たしく思うのと同時に寂しい様な悲しい様な気持ちになる。
自分だって同じ事をしていた筈なのに…

「こっちです。付いて来て下さい」

二人に気づかれない様にきゅっと手を握り締めると先に歩き始めた。



「わぁ~っ!紫色の花がいっぱいだね~」

少し開けた場所に出ると遊歩道に沿って植えられている樹々が小さな紫色の花を咲かせていた。

「これってライラックですか?」
「はい」
「那智さん知ってるの?」
「前に奎亮がミモザ館に飾ってるのを見た事があるんだ。良い香りがするぞ」
「へぇ~、そうなんだ」

ライラックの花が良く見える位置で立ち止まると水谷さんを振り返る。

「…すみません。俺、あなたに黙っていた事があります」
「え?」
「実は今回の件を受けた直後に俺、ミモザ館に行ったんです。その時もミモザ館にライラックの花が飾ってありました。氏原さんが水谷さんがこの花を好きらしいと教えてくれました。その時に氏原さんに頼まれたんです」
「奎亮…に?何、を…」
「もし可能なら水谷さんに会ってどんな様子か教えて欲しいって。最近電話やメールでの水谷さんがいつもと違う気がするって言ってました。 “直ぐに会いに行けなくてごめん” て伝えて欲しいと」
「奎亮が…」

水谷さんが目を潤ませるのが分かった。

「…俺、正直言って水谷さんが羨ましかった。羨ましいと同時に妬ましかった。氏原さんにそんな風に想われて、それに……爽汰があなたを本当に慕っているのが分かったから」
「えっ…?」
「爽汰は…俺に……好きだと言ってくれた。けど水谷さんへの態度がどうしても…だから爽汰にも水谷さんにもあんな…」
「瑞希兄さん…」
「悪かったな、爽汰。お前の気持ち疑って、避けてばっかで」
「そんな事っ…」

ふわりと風が吹いてライラックの甘く優しい香りが漂った。

「水谷さん、氏原さんに連絡してあげて下さい。氏原さん、待ってますよ。それと先日の水谷さんの質問に対する答えになるか分かりませんが…俺と氏原さんはミモザ館のオーナーと客、それだけです。ただの知り合いよりかは親しい間柄かもしれないけど、水谷さんが気にする様な事は何もありません。氏原さんに憧れている、それは確かにあります。あの人の…一途に誰かを想い続ける、そういう処に俺は惹かれましたから」


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