二度目の告白 ~君なしではダメ~
「……爽汰…手ぇ、離せよ…」
瑞希兄さんの言葉に小さく唇を噛む。
きっとこれが兄さんの答えなのだ。
これ以上突き放されるのが怖くて、兄さんの手を離すと兄さんが何か言う前に体ごと瑞希兄さんから離れた。
そのまま扉へと向かう。
外に出る直前、力を振り絞る様にして
「…ごめんね、兄さん」
何とかそれだけを言葉にして、後ろを振り返らないでスタジオを後にした。
どうやって其処まで来たのか事務所の玄関まで来た時
「爽汰?まだ居たのか?」
明るい声に呼ばれて足が止まり、半分だけ振り返る。
「今まで撮影してたのか?」
「那智さん…」
「頑張って……爽汰?…どうしたんだ!?」
驚いた顔の那智さんが俺に駆け寄った。
その指先が頬に触れた瞬間、堪えていた感情が堰を切った様に溢れ出した。
「…っ、なっ、ち…さん…!」
那智さんの肩に額を乗せると同時に那智さんの体を抱き寄せる。
俺より小柄な那智さんは、俺の腕の中にすっぽりと収まった。
そのまま那智さんの首筋に顔を埋め声を押し殺して泣き出した俺を、那智さんは何も言わずにあやす様に何度も頭や背中を撫でてくれた。
「……ありがとう……那智さん…」
「落ち着いたか?」
「…もう大丈夫だよ」
「……何があったか訊いても良いか?」
「………俺には瑞希兄さんしか居ないけど……兄さんはそうじゃなかったみたい」
絞り出す様に言ったその言葉に那智さんの表情が苦しそうに歪んだ。
「…そんな顔しないで、俺は……大丈夫だから、ちゃんと心の準備はしてたから…」
「でも!……でも何で…」
「…してた筈なんだけどね。やっぱり…認めたくなかったみたい」
笑おうとして、でもできなくて…中途半端な笑顔に那智さんの表情がまた歪む。
「…ごめんね。明日は那智さんも一緒の撮影なのにこんな…」
「俺の事なんかどうだって良い!お前の、…爽汰の方がずっとツラいのに…」
俯いてしまった那智さんに瑞希兄さんの姿が重なる。
さっきスタジオで一度も俺を真っ直ぐに見なかった瑞希兄さん。
撮影中は流石にプロのカメラマンとしての視線を俺に向けていたけれど…
ああ、そうか…そんな邪な気持ちで仕事に真剣に向き合っていない俺に、瑞希兄さんは気づいて居たのかもしれない。
真面目で正直な人だから、そんな俺に愛想が尽きたのかもしれない。
「俺は本当に大丈夫だから。ほんとごめんね、那智さん」
「爽汰…」
意識して口角を上げる。
今度はちゃんと笑えた様だ…
「…何かあったら電話でもメールでも直ぐに連絡しろよ?」
「そんな事してたら那智さんも俺も寝不足になっちゃうよ。俺は昼からだけど、那智さんは朝から撮影でしょ?」
「…俺は大丈夫だよ、まだ若いから」
「それを言ったら俺の方がもっと若いんだからね?俺、那智さんより六つも下だからね?」
「…あぁ、そうだな。…お疲れさま、爽汰」
態と明るく言うと那智さんが漸く笑った。
腕を伸ばし俺の頭をクシャクシャと撫でた那智さんに俺も笑い返した。
瑞希兄さんの言葉に小さく唇を噛む。
きっとこれが兄さんの答えなのだ。
これ以上突き放されるのが怖くて、兄さんの手を離すと兄さんが何か言う前に体ごと瑞希兄さんから離れた。
そのまま扉へと向かう。
外に出る直前、力を振り絞る様にして
「…ごめんね、兄さん」
何とかそれだけを言葉にして、後ろを振り返らないでスタジオを後にした。
どうやって其処まで来たのか事務所の玄関まで来た時
「爽汰?まだ居たのか?」
明るい声に呼ばれて足が止まり、半分だけ振り返る。
「今まで撮影してたのか?」
「那智さん…」
「頑張って……爽汰?…どうしたんだ!?」
驚いた顔の那智さんが俺に駆け寄った。
その指先が頬に触れた瞬間、堪えていた感情が堰を切った様に溢れ出した。
「…っ、なっ、ち…さん…!」
那智さんの肩に額を乗せると同時に那智さんの体を抱き寄せる。
俺より小柄な那智さんは、俺の腕の中にすっぽりと収まった。
そのまま那智さんの首筋に顔を埋め声を押し殺して泣き出した俺を、那智さんは何も言わずにあやす様に何度も頭や背中を撫でてくれた。
「……ありがとう……那智さん…」
「落ち着いたか?」
「…もう大丈夫だよ」
「……何があったか訊いても良いか?」
「………俺には瑞希兄さんしか居ないけど……兄さんはそうじゃなかったみたい」
絞り出す様に言ったその言葉に那智さんの表情が苦しそうに歪んだ。
「…そんな顔しないで、俺は……大丈夫だから、ちゃんと心の準備はしてたから…」
「でも!……でも何で…」
「…してた筈なんだけどね。やっぱり…認めたくなかったみたい」
笑おうとして、でもできなくて…中途半端な笑顔に那智さんの表情がまた歪む。
「…ごめんね。明日は那智さんも一緒の撮影なのにこんな…」
「俺の事なんかどうだって良い!お前の、…爽汰の方がずっとツラいのに…」
俯いてしまった那智さんに瑞希兄さんの姿が重なる。
さっきスタジオで一度も俺を真っ直ぐに見なかった瑞希兄さん。
撮影中は流石にプロのカメラマンとしての視線を俺に向けていたけれど…
ああ、そうか…そんな邪な気持ちで仕事に真剣に向き合っていない俺に、瑞希兄さんは気づいて居たのかもしれない。
真面目で正直な人だから、そんな俺に愛想が尽きたのかもしれない。
「俺は本当に大丈夫だから。ほんとごめんね、那智さん」
「爽汰…」
意識して口角を上げる。
今度はちゃんと笑えた様だ…
「…何かあったら電話でもメールでも直ぐに連絡しろよ?」
「そんな事してたら那智さんも俺も寝不足になっちゃうよ。俺は昼からだけど、那智さんは朝から撮影でしょ?」
「…俺は大丈夫だよ、まだ若いから」
「それを言ったら俺の方がもっと若いんだからね?俺、那智さんより六つも下だからね?」
「…あぁ、そうだな。…お疲れさま、爽汰」
態と明るく言うと那智さんが漸く笑った。
腕を伸ばし俺の頭をクシャクシャと撫でた那智さんに俺も笑い返した。