二度目の告白 ~君なしではダメ~
「兄さん」
今日の撮影を終えた後スタジオに一人で残り次の撮影の下準備やチェックをしていると、背後から名前を呼ばれた。
振り返った先にはほんの数時間前までカメラのレンズ越しに見ていた相手が居た。
「…何だ?」
「まだ残ってたの?」
「……今日できる準備をやってるだけだ」
「俺に手伝える事ある?」
応えないで居ると直ぐ近くまで来た爽汰が俺の隣に腰を落とした。
「このコードをこっちに繋げば良いの?」
俺の手からコードを掴み取ると手際よく繋いで行く爽汰を横目で見る。
「ねえ瑞希兄さん、どうして兄さんは俺のコトちゃんと見ないの?」
「……此処で名前を呼ぶのは止めろ」
「瑞希兄さんは瑞希兄さんでしょ。それ以外に何て呼べば良いの?」
「っ、……誰かに聞かれたりしたらどうすんだ」
「俺、前に言ったよね?『瑞希兄さんが傍に居てくれたらそれだけで良い。何も怖くない』て。あの時も今も俺の気持ちは何一つ変わってないよ」
「爽汰っ…!」
「兄さんは違うの?瑞希兄さんは俺の事もう好きじゃないの?何とも思ってないの?」
「爽汰止めろっ!」
「どうして?何で兄さんは俺のコト見ないの?」
「爽汰っ!!」
思わず大声を出した瞬間、顔を上げ俺の手首を掴んだ爽汰に引き寄せられた。
そのまま近づいた顔に思わず
「やめっ…!」
顔を背けて目を閉じた。
「……やっぱり…俺のコト迷惑なんだね…」
耳許近くを掠めた泣き出しそうな声に恐る恐る顔を前へ戻す。
「……ごめんね、…鬱陶しいよね、こんなの…」
見上げた瞳が比喩じゃなく揺れていた。
「嫌なのに…無理にこの仕事受けさせちゃってごめんね。でも俺…どうしても兄さんに写真撮って貰いたかったんだ。兄さんに写真を撮って貰うのが夢……目標の一つだった。モデルを始めるきっかけを兄さんがくれたから、その先も兄さんと…」
「…そ……た…」
爽汰の頬を涙が流れ落ちるのを見つめる。
まだ幼かった頃、かけっこをして置いて行かないでと泣いた爽汰の泣き顔が重なる。
かくれんぼをして俺を見つけられなくて泣いた爽汰が重なる。
あの頃はどんなに泣いていても俺が手を繋げば直ぐに泣き止んで、またいつもの様に笑っていた爽汰。
爽汰の手に触れ様として、その手首を爽汰に掴まれたままで居る事に漸く気づいた。
「……爽汰…手ぇ、離せよ…」
爽汰が唇を小さく噛むのが分かった。
自由になった手を離れた爽汰の手に伸ばそうとして、爽汰が体ごと俺から離れた。
「…ごめんね、兄さん」
扉の方へと向かった爽汰が振り向かないまま小さく呟いた後、足早に離れて行く影を目だけで追う。
けれど、どうしても気になって…というより、このままじゃダメな気がしてスタジオを飛び出し後を追った。
その先で見たのは…
水谷さんを抱き締め、その肩に顔を埋める様にしている爽汰の姿だった。
今日の撮影を終えた後スタジオに一人で残り次の撮影の下準備やチェックをしていると、背後から名前を呼ばれた。
振り返った先にはほんの数時間前までカメラのレンズ越しに見ていた相手が居た。
「…何だ?」
「まだ残ってたの?」
「……今日できる準備をやってるだけだ」
「俺に手伝える事ある?」
応えないで居ると直ぐ近くまで来た爽汰が俺の隣に腰を落とした。
「このコードをこっちに繋げば良いの?」
俺の手からコードを掴み取ると手際よく繋いで行く爽汰を横目で見る。
「ねえ瑞希兄さん、どうして兄さんは俺のコトちゃんと見ないの?」
「……此処で名前を呼ぶのは止めろ」
「瑞希兄さんは瑞希兄さんでしょ。それ以外に何て呼べば良いの?」
「っ、……誰かに聞かれたりしたらどうすんだ」
「俺、前に言ったよね?『瑞希兄さんが傍に居てくれたらそれだけで良い。何も怖くない』て。あの時も今も俺の気持ちは何一つ変わってないよ」
「爽汰っ…!」
「兄さんは違うの?瑞希兄さんは俺の事もう好きじゃないの?何とも思ってないの?」
「爽汰止めろっ!」
「どうして?何で兄さんは俺のコト見ないの?」
「爽汰っ!!」
思わず大声を出した瞬間、顔を上げ俺の手首を掴んだ爽汰に引き寄せられた。
そのまま近づいた顔に思わず
「やめっ…!」
顔を背けて目を閉じた。
「……やっぱり…俺のコト迷惑なんだね…」
耳許近くを掠めた泣き出しそうな声に恐る恐る顔を前へ戻す。
「……ごめんね、…鬱陶しいよね、こんなの…」
見上げた瞳が比喩じゃなく揺れていた。
「嫌なのに…無理にこの仕事受けさせちゃってごめんね。でも俺…どうしても兄さんに写真撮って貰いたかったんだ。兄さんに写真を撮って貰うのが夢……目標の一つだった。モデルを始めるきっかけを兄さんがくれたから、その先も兄さんと…」
「…そ……た…」
爽汰の頬を涙が流れ落ちるのを見つめる。
まだ幼かった頃、かけっこをして置いて行かないでと泣いた爽汰の泣き顔が重なる。
かくれんぼをして俺を見つけられなくて泣いた爽汰が重なる。
あの頃はどんなに泣いていても俺が手を繋げば直ぐに泣き止んで、またいつもの様に笑っていた爽汰。
爽汰の手に触れ様として、その手首を爽汰に掴まれたままで居る事に漸く気づいた。
「……爽汰…手ぇ、離せよ…」
爽汰が唇を小さく噛むのが分かった。
自由になった手を離れた爽汰の手に伸ばそうとして、爽汰が体ごと俺から離れた。
「…ごめんね、兄さん」
扉の方へと向かった爽汰が振り向かないまま小さく呟いた後、足早に離れて行く影を目だけで追う。
けれど、どうしても気になって…というより、このままじゃダメな気がしてスタジオを飛び出し後を追った。
その先で見たのは…
水谷さんを抱き締め、その肩に顔を埋める様にしている爽汰の姿だった。