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二度目の告白 ~君なしではダメ~

「先ずはプライベート編から撮影に入りたいと思います。いきなりと思われるかもしれませんが、ファンの一番見たい姿だと思うので。勿論部屋とかはセットでの撮影です。できるだけ実際に近づけたいので意見等があればどんどん出してください」

撮影がスタートし、初日はスケジュールとセットや衣装の確認から始まった。
瑞希兄さんと今回兄さんの助手を務めるドミニクさんというカメラマンがスタッフに混じって諸々の調整をつける様子をじっと見つめる。

瑞希兄さんの様子がいつもと違う。

一週間ほど前に俺の撮影中のスタジオに来た時以来だろうか。
あの日、いつもならカメラのシャッター音が聞こえている間はスタジオに誰かが入って来たとしても気づく事など殆ど無いのに、瑞希兄さんが来た事に直ぐに気づいた。
瑞希兄さんが立っている場所だけ他とは全然違って見えて、自分でも笑えるくらいだった。


兄さんが俺を見ている、見てくれている!


それだけで、いつも以上に撮影に集中できた。
カメラマンが望む表情やポージングを取り、それを褒められれば益々ヤル気が溢れてきた。


瑞希兄さんが居れば俺はもっともっと頑張れる。
俺にはやっぱり兄さんが必要なんだ!


そう思った。
なのにあの時の瑞希兄さんは何故か…本当に微かにだったけど…ツラそうな顔をした様に見えた。
その理由が分からなくて、兄さんに笑って欲しくて、「頑張ってるな」と言って欲しくて、撮影が小休止した時俺はいつもの様に兄さんに笑い掛けた。
でも……兄さんは笑い返してはくれなかった。

「じゃあ次に服に関してですけど…」

衣装担当のスタッフと言葉を交わす瑞希兄さんの横顔を見る。
いつも通りに見えて本当はそうじゃない事が俺には分かるのに、兄さんは何も言ってくれない。

「あ、ドム、そっちの書類取ってくれ」
「はい」
「サンキュ」

兄さんはドミニクさんの事をとても信頼しているらしい。
時々顔を寄せて耳打ちしたり、ふとした時に見せる表情からそれが分かる。


俺の知らない人にそんな風に笑わないでよ…


その都度浮かぶそんな思いに、先日の那智さんを思い出す。
那智さんも氏原さんに対してこんな気持ちだったんだろうか…



「六倉さん?大丈夫ですか?」

視界に広がったドミニクさんの顔に我に返る。

「あ、はい!すいません。何か興奮してボーッとしちゃって」
「写真集、初めてだって聞きました。大変な事も多いと思うけど一緒に素敵な作品を作りましょうね!」

人懐っこいというか何処か安心できるドミニクさんの笑顔に、つい俺も笑い返してしまう。
さっきまで “面白くない” と思っていたのがまるで嘘の様に、ふんわりと心の中が温かくなった。
瑞希兄さんの方を見るのと同じタイミングで、兄さんがフイッと顔を背けるのが分かった。

「それじゃあこの後は昼から撮影に入りたいと思いますので、皆さんよろしくお願いします」

瑞希兄さんの声にその場に居る全員が元気よく声を掛け合うのを見ながら、心の中でそっと兄さんを呼ぶ。



ねぇ兄さん、俺を見てよ…


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