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二度目の告白 ~君なしではダメ~

爽汰そうた、例の件OKの返事があったぞ」
「えっ!…ホントに?」
「ああ。それで急だけど今日の撮影現場に来てもらう事になったからな」
「えぇっ?!」
「向こうが撮影中の雰囲気とかを掴んでおきたいらしい。邪魔にならない様にしてもらう旨は伝えてあるし、現場の監督にも許可は取ってあるから心配無いだろう」
「はぁ…」

この前に電話で話した後瑞希みずき兄さんからは何も言われていない。
それをやっぱり寂しく思うけど、それでも兄さんに会える、兄さんと一緒に仕事ができる事が嬉しくて仕方ない。
軽くスキップしながら今日の撮影現場に向かおうとして

「どうした、爽汰。随分浮かれてるな?」
「あ、那智さん。聞いて!瑞希兄さんが写真集の件、OKしてくれたんだ!」
「え…、そっか……良かったな」

駐車場の入り口で擦れ違った那智さんに早口で報告すると、那智さんは少し困惑した様な顔を見せた。

「那智さん?」
「今日はCM撮影だっけ?頑張れよな」

どうしたのか尋ねようとして、でも那智さんは直ぐにいつもの笑顔を見せて足早に事務所へと行ってしまった。





爽汰と別れた後も心臓がドキドキしている。
上手く呼吸ができなくて胸が苦しい。
分かってる、ちゃんと解ってる…千屋さんとは仕事で会うだけだ。
爽汰の写真集を彼が撮るという事は、それに一部とはいえ参加する俺とも顔を合わせる事になる。
でもそれだけだ。
会ったら挨拶する、それだけで良い。


でも怖い…


もし奎亮けいすけの事を訊かれたら?
もし千屋さんの方が最近の奎亮を知っていたら?
ここ暫く奎亮とは会えていない。
仕事に穴を開ける訳にはいかないし、奎亮だってミモザ館を休む訳にはいかない。
それに電話もメールも欠かさないで居るし、こんな事、今までだって何度もあった筈なのに…どうして…
第一千屋さんは爽汰の恋人だ。
俺の不安なんて取り越し苦労ですらない。
それなのにこんなにも不安になる。
胸が押し潰されそうになる。


「会いたいよ……奎亮…」


言葉にしただけで胸がぎゅっとなった。
こんなに不安に駆られる自分が情けなくて、でもそれ以上に奎亮に会いたくて切なくて……少しだけ睫毛を濡らした。


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