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二度目の告白 ~君なしではダメ~

「え?写真集…、ですか?」
「そうだ。前から要望としてはあったんだが、最近は特に多くてな。お前と仲の良い水谷那智なちがうちに移籍してからお前のファンの間でも “いつ出るのか” て噂で持ち切りらしい。今やお前達はうちの二大看板だからな」
「そう…なんですか?」
「ああ。だから爽汰そうた、考えておいてくれ。もし希望があるならできるだけ検討もしよう」




社長室を出てぶらぶらと歩きながら考える。
写真集を出さないのかという声がある事は勿論知っていた。
ファンレターだけでなく、少し前からは撮影スタジオでも周りのスタッフにそう声を掛けられる事が増えていたから。


『もし希望があるならできるだけ検討もしよう』


俺からの希望なんてたった一つしかない。それを叶えて貰えるなら…


「爽汰!」

不意に名前を呼ばれて顔を上げると、先の通路の角から姿を現した那智さんが軽く片手を挙げて笑っていた。

「那智さん」
「どうした?何か浮かない顔してたぞ」
「うん、ちょっとね~。今さっき社長室に呼ばれてた」
「えっ?……何か注意されたのか?」
「違うよ。写真集を出さないか考えておけって言われたんだ」
「写真集か~。実現したらまた爽汰に先を行かれちゃうな」

そう言って笑いながら隣を歩く那智さんを見ると、那智さんは悔しがる素振りも無くただ楽しそうに笑っていた。

「他人事みたいに~。もしそうなったら那智さんにも参加して貰うからね?」
「え?爽汰の写真集だろ?何で?」
「知らないの?今ファンの間では俺達二人の写真を合成した物がすっごい人気なんだよ。だからさ、もし俺の写真集が出るなら公式でツーショット写真を出したら売り上げ倍増になると思わない?」
「え~?」
「社長からも “もし希望があるなら検討もする” て言われたしね」
「え~?」

那智さんが俺を見てくすくすと笑った。
那智さんは元々所属していた事務所が俺の所属する事務所に吸収される形で合流した。
那智さんとは初めて一緒に仕事をしてからずっと、まるで昔からの親友の様に付き合っている。
別に隠す事では無いから俺達の仲はファンの間でも周知の事実だ。

「そういえば那智さん、この前の雑誌の取材でミモザ館の事話したでしょ。大丈夫なの?」
「社長とマネージャーの早瀬さんにはちょっと小言言われたけどな。でも奎亮けいすけとの約束なんだ。 “誰もが知る有名モデルになってミモザ館を宣伝する” て」
「宣伝?守るとかじゃなくて?」
「宣伝してミモザ館にお客さんが来てくれたら守る事にも繋がるからさ」

そう言って那智さんは少し遠くを見る様な目をした。
ミモザ館は那智さんの幼馴染の氏原さんが経営しているペンションだ。
二人は恋人で今は自分達の住む環境の中で離れて暮らして居るけど、本当にお互いを大切にしている。
二人がどれだけ相手を想い好きでいるか…それを直接目の当たりにした事があるから、俺は那智さんと氏原さんの恋を応援しているし二人の為ならどんな事だって手助けしたいと思っている。

「氏原さん喜んだんじゃない? “会いたい” て言われたでしょ」

俺の言葉に那智さんの頬がほんのりと染まる。

「………まぁ……うん。けどそれは、………俺もだし…」



そっぽを向いて呟く様に言った那智さんを可愛いと思った。


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