連休前のある日の昼休み、食堂へと向かった足が中へ入って数メートルで止まった。


食堂の一角、隣り合った席に座り向かい合い楽しそうに笑っているノブ先輩と悠宇
悠宇の頭に手を伸ばしたノブ先輩が優しく撫でると、擽ったそうに嬉しそうに悠宇が笑った…


その光景に息が詰まった。
喉の奥に何か塊を押し込まれたみたいになって、息苦しくて…走って食堂を出た。



「あ、和真君！」

教室の前まで戻ってきた時、突然名前を呼ばれると同時に腕に何かが絡まった。

「何処に行ってたの？お昼一緒に食べようと思ったのに～」

振り返ると数ヶ月前に告白されて付き合い始めた “彼女” が居た。

「ねえねえ、今度の連休に和真君の家に遊びに行っても良いかな？」

鼻にかかったような甘ったるい声、俺を見る媚びたような目
昨日までは可愛いと思えた…いや思い込もうとしていたそれら全てが、一瞬にして汚らわしくさえ感じられた。

「悪いけどその気は無いから」
「え？」

絡む腕を振り払い教室に入ると、クラスメートに早退すると告げ鞄を持って学校を後にした。



ずっと…、頭の中でずっと、さっき見た悠宇の笑った顔が消えないでいる。
俺にはもう、……決して向けられる事の無い笑顔が…