禁じられた恋 ~ Forbidden Lover ~
「悠宇~、こっちこっち!」
駐輪場の向こうでぶんぶんと手を振っている伸樹先輩が見えて駆け寄る。
「先輩、ごめんなさい!遅くなっちゃって」
「大丈夫。でも走るぞ!ほら、急げ~」
「先輩ってば、そんなに慌てなくてもお店は逃げたりしないよ?」
「でも売り切れちゃうかもしれないだろ?」
そう言って、僕の手を引き走り出した伸樹先輩の手は僕よりも少し小さい。
その手に引かれながら走って校庭を出た。
「うっわぁ~、めっちゃ美味え~!」
「そんなに此処のクレープ食べたかったの?先輩」
「だってさ、雑誌に紹介されるくらいなんだぞ!一度は食べてみたいだろ~」
僕より2学年も上とは思えない子供みたいな顔でクレープを頬張る先輩とは、僕が高校に入学して直ぐに付き合い始めた。
和真兄さんの知り合いという事もあって、告白されてから暫くは避けるようにしていたけれど、先輩の熱心な態度に結局は僕が折れる事となった。
あの頃はまだ兄さんとの関係が続いていたから、逃げ出す口実が欲しかったのも事実だ。
けれど…
僕と兄さんの事を何も知らない伸樹先輩の、その飾らない態度に、優しい笑顔に、惹かれて行ったのもまた事実だ。
僕の気持ちを尊重してくれる、何かを無理強いしたり自分の気持ちを押し付ける事のない先輩と一緒に居ると、凄く安心できる。
心穏やかに居られる…
「悠宇、クリームついてるぞ」
「え?何処?」
慌てて拭おうとした手を先輩が掴む。
「ここ」
先輩の親指が僕の唇の端をそっと拭う。
直ぐ間近で僕を見る先輩からはクレープの匂いなのか、それとも先輩自身の香りなのか…甘くて好い香りがした。
「悠宇…」
ゆっくりと瞼を閉じると、少しして唇に触れる柔らかくて温かい感触。
「…帰ろうか」
瞼を開けて少し俯いた僕の頭を撫でると、立ち上がった伸樹先輩がそう言って手を差し伸べてくれた。
「…先輩……僕、また…クレープ食べたい」
手を握り返し歩き始めた僕を振り返った先輩が、
「ああ、また一緒に食べような」
本当に嬉しそうに笑った。
駐輪場の向こうでぶんぶんと手を振っている伸樹先輩が見えて駆け寄る。
「先輩、ごめんなさい!遅くなっちゃって」
「大丈夫。でも走るぞ!ほら、急げ~」
「先輩ってば、そんなに慌てなくてもお店は逃げたりしないよ?」
「でも売り切れちゃうかもしれないだろ?」
そう言って、僕の手を引き走り出した伸樹先輩の手は僕よりも少し小さい。
その手に引かれながら走って校庭を出た。
「うっわぁ~、めっちゃ美味え~!」
「そんなに此処のクレープ食べたかったの?先輩」
「だってさ、雑誌に紹介されるくらいなんだぞ!一度は食べてみたいだろ~」
僕より2学年も上とは思えない子供みたいな顔でクレープを頬張る先輩とは、僕が高校に入学して直ぐに付き合い始めた。
和真兄さんの知り合いという事もあって、告白されてから暫くは避けるようにしていたけれど、先輩の熱心な態度に結局は僕が折れる事となった。
あの頃はまだ兄さんとの関係が続いていたから、逃げ出す口実が欲しかったのも事実だ。
けれど…
僕と兄さんの事を何も知らない伸樹先輩の、その飾らない態度に、優しい笑顔に、惹かれて行ったのもまた事実だ。
僕の気持ちを尊重してくれる、何かを無理強いしたり自分の気持ちを押し付ける事のない先輩と一緒に居ると、凄く安心できる。
心穏やかに居られる…
「悠宇、クリームついてるぞ」
「え?何処?」
慌てて拭おうとした手を先輩が掴む。
「ここ」
先輩の親指が僕の唇の端をそっと拭う。
直ぐ間近で僕を見る先輩からはクレープの匂いなのか、それとも先輩自身の香りなのか…甘くて好い香りがした。
「悠宇…」
ゆっくりと瞼を閉じると、少しして唇に触れる柔らかくて温かい感触。
「…帰ろうか」
瞼を開けて少し俯いた僕の頭を撫でると、立ち上がった伸樹先輩がそう言って手を差し伸べてくれた。
「…先輩……僕、また…クレープ食べたい」
手を握り返し歩き始めた僕を振り返った先輩が、
「ああ、また一緒に食べような」
本当に嬉しそうに笑った。