Jour de muguet ~君なしではダメ~
奎亮さんに今日のメニューについて確認しようと向かったフロントから、聞いた事の無い奎亮さんの真剣な声が聞こえて来た。
「好きなら好きってちゃんと言わないと、いつまで経っても何も変わらないぞ」
何の事だろうと思いつつも聞かない方が良いかもと背を向け様とした時、耳に届いたのは
「お前はいつ透真に自分の本心を伝えるんだ?」
その言葉と一緒に、硬直した様に目を見開いて俺を見る一ノ瀬の姿が目に飛び込んだ。
「…誰が…何を伝えるんですか?」
少し狼狽えた様子で奎亮さんが俺と一ノ瀬を見た。
「……今の……話って…」
「あのっ、え~っとな透真…」
慌てた様子の奎亮兄さんの腕を咄嗟に掴んだ。
「………良いよ、兄さん…」
「…大翔」
「奎亮兄さんの言うとおりだよ。いつまでも誤魔化し切れるもんじゃないよね。ううん、もうとっくにそんなの無理になってたんだ」
「イチ…?」
顔を上げて真っ直ぐに透真先輩を見る。
「俺ね、ずっと…高校生の頃からずっと透真さんが好きだった。でも透真さんにはちゃんと彼女が居たし、この気持ちを伝えようなんてこれっぽちも思ってなかった……でも……また透真さんと…先輩と会って先輩の色んな事少しずつ知って……どんどん好きになるのを止められなくって…」
それ以上何て言ったら良いのか分からなくて背けた視界の端で、小さな白い影が揺れた。
透真先輩と再会したあの日、奎亮兄さんが飾っていた “幸せの再来” を意味するスズランの花…
「……俺にとって透真先輩は “幸せ” そのものだったんだ。手に入れられなくてもその笑顔を見られるならそれで良い……なのに欲張って好きな気持ちを抑えられなくなって…ごめんね、先輩…」
そのまま逃げる様にミモザ館を飛び出した。
「大翔っ!!」
駆け出した一ノ瀬の背中を追い掛ける奎亮さんの声に、反射的に走り出す。
と、いきなり腕を掴まれた。
「待ってくれ!彼奴は…大翔は本当にアンタを好きなんだ!また会えて心から喜んでた!だから!だから大翔を傷つける様な事だけはっ」
俺の腕を掴む水谷さんの手を振り切って、ミモザ館を飛び出した。
「好きなら好きってちゃんと言わないと、いつまで経っても何も変わらないぞ」
何の事だろうと思いつつも聞かない方が良いかもと背を向け様とした時、耳に届いたのは
「お前はいつ透真に自分の本心を伝えるんだ?」
その言葉と一緒に、硬直した様に目を見開いて俺を見る一ノ瀬の姿が目に飛び込んだ。
「…誰が…何を伝えるんですか?」
少し狼狽えた様子で奎亮さんが俺と一ノ瀬を見た。
「……今の……話って…」
「あのっ、え~っとな透真…」
慌てた様子の奎亮兄さんの腕を咄嗟に掴んだ。
「………良いよ、兄さん…」
「…大翔」
「奎亮兄さんの言うとおりだよ。いつまでも誤魔化し切れるもんじゃないよね。ううん、もうとっくにそんなの無理になってたんだ」
「イチ…?」
顔を上げて真っ直ぐに透真先輩を見る。
「俺ね、ずっと…高校生の頃からずっと透真さんが好きだった。でも透真さんにはちゃんと彼女が居たし、この気持ちを伝えようなんてこれっぽちも思ってなかった……でも……また透真さんと…先輩と会って先輩の色んな事少しずつ知って……どんどん好きになるのを止められなくって…」
それ以上何て言ったら良いのか分からなくて背けた視界の端で、小さな白い影が揺れた。
透真先輩と再会したあの日、奎亮兄さんが飾っていた “幸せの再来” を意味するスズランの花…
「……俺にとって透真先輩は “幸せ” そのものだったんだ。手に入れられなくてもその笑顔を見られるならそれで良い……なのに欲張って好きな気持ちを抑えられなくなって…ごめんね、先輩…」
そのまま逃げる様にミモザ館を飛び出した。
「大翔っ!!」
駆け出した一ノ瀬の背中を追い掛ける奎亮さんの声に、反射的に走り出す。
と、いきなり腕を掴まれた。
「待ってくれ!彼奴は…大翔は本当にアンタを好きなんだ!また会えて心から喜んでた!だから!だから大翔を傷つける様な事だけはっ」
俺の腕を掴む水谷さんの手を振り切って、ミモザ館を飛び出した。