Jour de muguet ~君なしではダメ~
家に帰ってからも透真先輩の笑顔が、掌の感触が、優しい声が、先輩の全てが思い出されて眠れないで居た。
ダメだ…このまま顔を会わせていたら俺、ますます先輩の事を好きになる…
せめてまた以前のように接する事ができる様になるまでは、ミモザ館へ行くのは控えよう…そう思っていたのにこういう時に限ってやたらと荷物が多く届くのは、絶対に神様が意地悪なんだとしか思えない。
「こんちは…」
「おう、大翔。いつもありがとな」
フロントで奎亮兄さんと那智兄さんが俺を振り返った。
「大翔、大丈夫か?何だか辛そうだけど」
「え?…う、うん、大丈夫だよ!那智兄さんは今日帰るの?」
「うん、そろそろな…次の仕事もあるし」
「そっか、頑張ってね!」
ふと見回すと、荷物を持って行ったのか奎亮兄さんの姿は無かった。
少し那智兄さんの方に顔を寄せる。
「那智兄さん、もう少し気をつけないと奎亮兄さんって結構妬きもち焼きっぽいよ」
「え?」
「昨日那智兄さんが六倉爽汰に優しくしてたのじーっと見てたもん。あれは絶対に嫉妬の眼差しだね」
「あ…」
視線を彷徨わせた那智兄さんが困った様な、でも少なからず嬉しさを滲ませた表情で頬を染めた。
「でもまあ、那智兄さんも千屋さんと話す奎亮兄さんの事、同じっていうか?不満そうに見てたし?お相子かな~」
「そういう大翔はどうなんだよ?」
「え?」
少しムッとした険のある声に振り向くと奎亮兄さんが戻って来ていた。
「そっちこそ透真にいつ言うんだよ」
「…え」
「好きなら好きってちゃんと言わないと、いつまで経っても何も変わらないぞ」
「…っ!」
その姿に、体が硬直した。
「俺だって怖かったし不安だったよ。でもそれ以上に何も言わないまま那智が他の誰かのモノになるのが一番嫌だった。だからちゃんと『好きだ』て言ったんだ」
「お、おい…奎亮…」
「お前はいつ透真に自分の本心を伝えるんだ?」
「…誰が…何を伝えるんですか?」
奎亮兄さんが飛び上がらんばかりに驚いた。
「……今の……話って…」
ゆっくりと俺達の方に近づいて来る透真先輩に、今直ぐにでも逃げ出したい思いに駆られた。
ダメだ…このまま顔を会わせていたら俺、ますます先輩の事を好きになる…
せめてまた以前のように接する事ができる様になるまでは、ミモザ館へ行くのは控えよう…そう思っていたのにこういう時に限ってやたらと荷物が多く届くのは、絶対に神様が意地悪なんだとしか思えない。
「こんちは…」
「おう、大翔。いつもありがとな」
フロントで奎亮兄さんと那智兄さんが俺を振り返った。
「大翔、大丈夫か?何だか辛そうだけど」
「え?…う、うん、大丈夫だよ!那智兄さんは今日帰るの?」
「うん、そろそろな…次の仕事もあるし」
「そっか、頑張ってね!」
ふと見回すと、荷物を持って行ったのか奎亮兄さんの姿は無かった。
少し那智兄さんの方に顔を寄せる。
「那智兄さん、もう少し気をつけないと奎亮兄さんって結構妬きもち焼きっぽいよ」
「え?」
「昨日那智兄さんが六倉爽汰に優しくしてたのじーっと見てたもん。あれは絶対に嫉妬の眼差しだね」
「あ…」
視線を彷徨わせた那智兄さんが困った様な、でも少なからず嬉しさを滲ませた表情で頬を染めた。
「でもまあ、那智兄さんも千屋さんと話す奎亮兄さんの事、同じっていうか?不満そうに見てたし?お相子かな~」
「そういう大翔はどうなんだよ?」
「え?」
少しムッとした険のある声に振り向くと奎亮兄さんが戻って来ていた。
「そっちこそ透真にいつ言うんだよ」
「…え」
「好きなら好きってちゃんと言わないと、いつまで経っても何も変わらないぞ」
「…っ!」
その姿に、体が硬直した。
「俺だって怖かったし不安だったよ。でもそれ以上に何も言わないまま那智が他の誰かのモノになるのが一番嫌だった。だからちゃんと『好きだ』て言ったんだ」
「お、おい…奎亮…」
「お前はいつ透真に自分の本心を伝えるんだ?」
「…誰が…何を伝えるんですか?」
奎亮兄さんが飛び上がらんばかりに驚いた。
「……今の……話って…」
ゆっくりと俺達の方に近づいて来る透真先輩に、今直ぐにでも逃げ出したい思いに駆られた。