Jour de muguet ~君なしではダメ~
ミモザ館からの帰り道、書店に寄り雑誌コーナーに足を向ける。
「ん~とぉ、どれだぁ?」
幾つか目ぼしい雑誌を見つけてはページを捲る。
何冊目かで手にした雑誌にそれはあった。
白いコックの制服を身に纏った透真先輩
真剣に手元を見つめる透真先輩
優しく穏やかに微笑う透真先輩
それらの写真の下には “撮影:千屋瑞希” と記載されていた。
あ~、あの人が撮ったんだ、この写真…
不意に、写真の中の透真先輩に高校生の時の先輩が重なった。
友達と楽しそうに話していた透真先輩
真剣な眼差しで台本を読む透真先輩
彼女の隣で優しく笑っていた透真先輩
つい先日まで欠片も思い出す事の無かった記憶の中のあの人の姿が、まるで洪水の様に溢れ出して来る。
思い出すと切なくて苦しくなる、そう分かっていたから無意識に蓋をして胸の奥の奥底に沈めていた想いに胸が締め付けられて…
「……俺、こんなに好きだったんだ……先輩の事…」
思いもよらなかった自身の想いの強さに、じわりと視界が滲んだ。
けれど透真先輩にとって俺は、学生時代の只の後輩であり今はミモザ館での知り合いでしかない。
今更先輩と俺の関係がどうにかなるなんて、そんな事は天地がひっくり返ったってある訳が無いんだ…
でも俺が勝手に心の片隅で想い続けるぐらいなら許されるだろうと、雑誌を手にレジへと向かう。
透真先輩と千屋さんが只のカメラマンと取材対象なのか、それとも何かそれ以上の関係があるのか分からない。
けれど先輩をこんなにも恰好良く撮ってくれる人なら、きっと人を見る目は確かなんだろう。
だったら俺は少し離れた所からそんな2人を眺めて居られたら、それだけで良い…
「あれ?」
ふと、ある雑誌の表紙が目に留まり足を止める。
それは平積みにされたファッション雑誌で、その表紙を飾っているのは紛れも無くさっきミモザ館でぶつかりそうになったあのイケメンだった。
しかもよく見ると、幾つもの雑誌の表紙を飾っている。
「え?何?アイツって……六倉 爽汰 ?…え?六倉爽汰っ?!あの!?」
雑誌に書かれた誰もが知っている超が付く人気モデルの名前に目を見開いた時、ポケットの中でスマホが震えた。
「はい、も…」
「あっ、大翔!?今何処っ?!悪いけど直ぐに戻って来てくれないか?」
纏まらない思考のまま繋いだ電話から聞こえて来たのは、やけに慌てた様子の奎亮兄さんの声だった。
「ん~とぉ、どれだぁ?」
幾つか目ぼしい雑誌を見つけてはページを捲る。
何冊目かで手にした雑誌にそれはあった。
白いコックの制服を身に纏った透真先輩
真剣に手元を見つめる透真先輩
優しく穏やかに微笑う透真先輩
それらの写真の下には “撮影:千屋瑞希” と記載されていた。
あ~、あの人が撮ったんだ、この写真…
不意に、写真の中の透真先輩に高校生の時の先輩が重なった。
友達と楽しそうに話していた透真先輩
真剣な眼差しで台本を読む透真先輩
彼女の隣で優しく笑っていた透真先輩
つい先日まで欠片も思い出す事の無かった記憶の中のあの人の姿が、まるで洪水の様に溢れ出して来る。
思い出すと切なくて苦しくなる、そう分かっていたから無意識に蓋をして胸の奥の奥底に沈めていた想いに胸が締め付けられて…
「……俺、こんなに好きだったんだ……先輩の事…」
思いもよらなかった自身の想いの強さに、じわりと視界が滲んだ。
けれど透真先輩にとって俺は、学生時代の只の後輩であり今はミモザ館での知り合いでしかない。
今更先輩と俺の関係がどうにかなるなんて、そんな事は天地がひっくり返ったってある訳が無いんだ…
でも俺が勝手に心の片隅で想い続けるぐらいなら許されるだろうと、雑誌を手にレジへと向かう。
透真先輩と千屋さんが只のカメラマンと取材対象なのか、それとも何かそれ以上の関係があるのか分からない。
けれど先輩をこんなにも恰好良く撮ってくれる人なら、きっと人を見る目は確かなんだろう。
だったら俺は少し離れた所からそんな2人を眺めて居られたら、それだけで良い…
「あれ?」
ふと、ある雑誌の表紙が目に留まり足を止める。
それは平積みにされたファッション雑誌で、その表紙を飾っているのは紛れも無くさっきミモザ館でぶつかりそうになったあのイケメンだった。
しかもよく見ると、幾つもの雑誌の表紙を飾っている。
「え?何?アイツって……
雑誌に書かれた誰もが知っている超が付く人気モデルの名前に目を見開いた時、ポケットの中でスマホが震えた。
「はい、も…」
「あっ、大翔!?今何処っ?!悪いけど直ぐに戻って来てくれないか?」
纏まらない思考のまま繋いだ電話から聞こえて来たのは、やけに慌てた様子の奎亮兄さんの声だった。