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Jour de muguet ~君なしではダメ~

「瑞希さんと知り合いなのか?」

透真先輩が運んで来たお茶を受け取りながら、奎亮兄さんが2人を交互に見る。

「知り合いというか…以前に取材を受けたんだ」
「取材?」
「ミモザ館に来る前に働いていたホテルのレストランでね。その時のカメラマンが千屋さんだったんだ」
「て事は雑誌か何かに載ったのか?」
「…うん…まぁ…」
「へえ!凄いじゃん!なあ、那智!」
「あ、あぁ、そうだな…」
「千屋さん、あの時はお世話になりました。載せて頂いた雑誌を見ました。とても良く撮って頂いてありがとうございます」
「あ、いや…そんな…」

透真先輩が頭を下げると、ちょっと困った様な照れた様な表情で千屋さんが顳顬を掻いた。
千屋さんの柔らかそうな白い肌がほんのりと淡く染まるのが分かった。


……何か…イイ雰囲気じゃん、あの2人…


少し離れたテーブルの椅子に座り4人を見る。
俺だけが場違いの様な浮いている様な気がして、何となく居心地が悪い。
そっと椅子から立ち上がると、そのまま食堂を後にした。



フロントまで出て来ると後ろをチラリと振り返る。
でも奎亮兄さんも誰も出てくる気配は無い。

「……帰ろ」

ドアノブに手を掛けた瞬間、いつかと同じ様に俺じゃない力でドアが開いた。

「わっ!?」
「うわっ?!」

勢いよく開いたドアの向こう側に、同い年ぐらいのなかなかにイケメンな男が立っていた。

「あっ、すみません!」

ぶつかりそうになった所為か驚いた表情を見せたイケメンが、その高い身長を腰から折って気持ち良いくらい綺麗に頭を下げた。

「あ、あのっ!ミモザ館の方ですか!?」
「いや、俺はただの運送屋だけど…」
「すみません、失礼しました!」

もう一度頭を下げたイケメンに奥を指差す。

「オーナーなら奥の食堂にい」
「ありがとうございます!!」

俺が言い終わらない内に慌てた様子で食堂の方へと駆け込んで行った背中を、呆然と見送る。


…ど~っかで見たコトある気がするんだけど……誰だっけ?



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