サクランボが実る頃
「昨夜、急に『明日と明後日は臨時休業にする』なんて言い出したんだよ。まあ予約も入ってなかったから良かったけどさ、ちょっとビックリするよな」
そう言うと大翔がほんの一瞬キョトンとした後、突然両手で顔を覆い俯いてしまった。
隠せていない耳がほんのりと薄赤く染まっていくのを見つめる。
「透真さん?」
俺の視線に気づいたのか、大翔が指の間から俺を見ていた。
「……大翔は本当に奎亮さんが好きだな」
思わず真顔で言ってしまった。
大翔は俺の事が好きなんじゃないの?
俺より奎亮さんの事が気になるのか?
続けて口を突きそうになった台詞を全力で飲み込むと、誤魔化す様に笑って大翔に背を向けた。
「…え?…透真…さん?今のどういう…」
大翔の戸惑いの色を帯びた声を背後に聞きながら、右手で口許を覆う。
え…俺、今何を言おうと……え?…うわぁ…
ドキドキしている心臓を落ち着かせ様と、午前中の内に作って冷やして置いたゼリーを見る為に冷蔵庫へと足を向けた。
「うっわ~!!スゲェ!それ透真さんが作ったの?え、凄くない?」
取り出したゼリーを見た瞬間、大翔の目が子供の様にキラキラと煌めく。
その姿があんまり可愛くて、思わず
「食べてみるか?」
さっきまでのドキドキも何処へやら、つい声を掛けた。
「えっ!…良いの?お客さんに出すヤツじゃ…」
「試食して感想聞かせてくれよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
食堂までトレイに乗せて運ぶ。
先に座って待っていた大翔の前にゼリーを盛った器を置き、隣の椅子を引いた。
「ほんと凄いね…綺麗って言うか…可愛い…これサクランボのゼリー?」
「ああ。ほんのりチェリー味のゼリーの中に実を入れて、上にも飾ってみたんだ」
「女性のお客さんや子供が喜びそうだね~」
「食べてみてよ」
「うん、いただきま~す!」
スプーンで掬って一口食べた大翔が、勢いよく俺の方を振り返った。
「美味しい!!凄く美味しいよ、透真さん!甘過ぎないし、うん!イケるよコレ!」
「本当に?」
「本当だって!やっぱり凄いね、透真さんは~。こんなの作れちゃうんだから」
本当に美味しそうに、嬉しそうに食べる大翔の横顔に知らず心が躍る。
「……なぁ、大翔」
「んぅ?」
「これからもさ、俺が作った料理一番最初に食べてくれないか?」
「え…」
無心で食べていた大翔が俺を見る。
その両目は大きく見開かれていて、そんな顔も可愛いと思った俺は、気持ちはとっくに大翔に追いついていたのだと気づいた。
端っこにクリームが付いた少し赤みの強い唇に目が吸い寄せられる。
ゆっくりと腕を伸ばし大翔の項に触れると、引き寄せながら自らも顔を寄せた。
一瞬強張った表情を見せた大翔の目がゆっくりと閉じていくのを見ながら、俺も目を閉じる。
そっと触れた柔らかな感触からは、サクランボの香りがした。
ゆっくりと顔を離す。
肌を薄赤く染めた大翔が薄く濡れた目許で戸惑い勝ちに俺を見ると、直ぐに視線を逸らした。
「…大翔の唇はサクランボみたいだな」
「………」
「もう一回……いい?」
「透真さ…」
「好きだよ、大翔」
再度俺を見た大翔が何か言う前にその唇に唇で触れ、舌先で小さく掠める。
背中に回される腕を感じながら、少し華奢なその体をそっと抱き締めた。
そう言うと大翔がほんの一瞬キョトンとした後、突然両手で顔を覆い俯いてしまった。
隠せていない耳がほんのりと薄赤く染まっていくのを見つめる。
「透真さん?」
俺の視線に気づいたのか、大翔が指の間から俺を見ていた。
「……大翔は本当に奎亮さんが好きだな」
思わず真顔で言ってしまった。
大翔は俺の事が好きなんじゃないの?
俺より奎亮さんの事が気になるのか?
続けて口を突きそうになった台詞を全力で飲み込むと、誤魔化す様に笑って大翔に背を向けた。
「…え?…透真…さん?今のどういう…」
大翔の戸惑いの色を帯びた声を背後に聞きながら、右手で口許を覆う。
え…俺、今何を言おうと……え?…うわぁ…
ドキドキしている心臓を落ち着かせ様と、午前中の内に作って冷やして置いたゼリーを見る為に冷蔵庫へと足を向けた。
「うっわ~!!スゲェ!それ透真さんが作ったの?え、凄くない?」
取り出したゼリーを見た瞬間、大翔の目が子供の様にキラキラと煌めく。
その姿があんまり可愛くて、思わず
「食べてみるか?」
さっきまでのドキドキも何処へやら、つい声を掛けた。
「えっ!…良いの?お客さんに出すヤツじゃ…」
「試食して感想聞かせてくれよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
食堂までトレイに乗せて運ぶ。
先に座って待っていた大翔の前にゼリーを盛った器を置き、隣の椅子を引いた。
「ほんと凄いね…綺麗って言うか…可愛い…これサクランボのゼリー?」
「ああ。ほんのりチェリー味のゼリーの中に実を入れて、上にも飾ってみたんだ」
「女性のお客さんや子供が喜びそうだね~」
「食べてみてよ」
「うん、いただきま~す!」
スプーンで掬って一口食べた大翔が、勢いよく俺の方を振り返った。
「美味しい!!凄く美味しいよ、透真さん!甘過ぎないし、うん!イケるよコレ!」
「本当に?」
「本当だって!やっぱり凄いね、透真さんは~。こんなの作れちゃうんだから」
本当に美味しそうに、嬉しそうに食べる大翔の横顔に知らず心が躍る。
「……なぁ、大翔」
「んぅ?」
「これからもさ、俺が作った料理一番最初に食べてくれないか?」
「え…」
無心で食べていた大翔が俺を見る。
その両目は大きく見開かれていて、そんな顔も可愛いと思った俺は、気持ちはとっくに大翔に追いついていたのだと気づいた。
端っこにクリームが付いた少し赤みの強い唇に目が吸い寄せられる。
ゆっくりと腕を伸ばし大翔の項に触れると、引き寄せながら自らも顔を寄せた。
一瞬強張った表情を見せた大翔の目がゆっくりと閉じていくのを見ながら、俺も目を閉じる。
そっと触れた柔らかな感触からは、サクランボの香りがした。
ゆっくりと顔を離す。
肌を薄赤く染めた大翔が薄く濡れた目許で戸惑い勝ちに俺を見ると、直ぐに視線を逸らした。
「…大翔の唇はサクランボみたいだな」
「………」
「もう一回……いい?」
「透真さ…」
「好きだよ、大翔」
再度俺を見た大翔が何か言う前にその唇に唇で触れ、舌先で小さく掠める。
背中に回される腕を感じながら、少し華奢なその体をそっと抱き締めた。