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君なしではダメ

「へえ!プロのカメラマンなんですか!?」
「プロって言うほどじゃないよ」
「でも写真集を出したり、雑誌に写真が載ったりするんでしょ?スゴイじゃないですか!」

食堂の一角で、瑞希さんが今日の昼過ぎに来た大学生に囲まれていた。

「いや、本当にそんな大した事じゃないから…」

照れ臭いのか頬をほんのり染めた顔の前で両手を振る瑞希さんが、何だか可愛らしく思えて

「そんなに謙遜しないでくださいよ。俺、瑞希さんの撮る写真は本当にステキだと思いますよ」

午後のティータイム代わりのコーヒーをテーブルに並べながらそう言うと

「もうっ!奎亮さんまで揶揄わないでくださいよ~」

瑞希さんが両手で顔を隠した。

「このペンションのエントランスに写真が飾ってあったでしょ?あれも瑞希さんが撮ったんですよ」
「ちょっ、奎亮さん!」
「えっ!本当に?」
「あれって庭のミモザの写真ですよね?すっごく綺麗に撮ってる!やだ、私あの写真一目で好きになったの!」

更なる歓声に瑞希さんが困ったような顔で俺を睨んだけど、あまりに可愛くてつい笑ってしまう。

「あの!もし良かったら僕達の写真を撮ってもらえませんか?」
「え?」
「今回の旅行の記念に、このペンションの前で。あ、勿論お礼はちゃんと払います!なあ、皆!」
「そうね、それ良いかも!是非お願いします!」
「え~っとぉ…」
「俺は全然構いませんよ。此処の宣伝にもなりますから」
「奎亮さんにそう言われちゃあ…じゃあ明日の朝で良いかな?」
「ありがとうございます!!」




翌朝、朝食の席に着いた瑞希さんに食器を並べながら

「よく眠れましたか?それから昨日はすみませんでした、好き勝手言っちゃって。瑞希さんは風景専門なんですよね。それなのに俺…」
「いえ、前に少しですけど人物も撮っていましたから…それに奎亮さんに彼処まで言われて嫌とは言えませんよ~」

照れ臭そうに笑う瑞希さんに、俺もつられて笑う。

「でもその代わりじゃないですけど、奎亮さんの写真も撮らせてください」
「え?」
「次に寄稿する雑誌にミモザ館の写真を載せたいんです。その写真に奎亮さんも一緒に」
「お、俺なんかが…」
「奎亮さんは素晴らしい被写体ですよ。ミモザの花に負けないくらいの。もし気になるなら余り大きく写らないようにしますから……ダメですか?」
「……まぁ…瑞希さんがそう言うなら…」
「ありがとうございます!良かった~!よしっ、モリモリ食べるぞ~」
「今朝のサラダはミモザサラダにしたんですよ。外のミモザに負けない出来栄えですよ!」
「へえ~、それは楽しみですね!」


瑞希さんの嬉しそうな顔に、まあイイかと胸の内で呟いた。

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