君なしではダメ
「那智!お前スカウトされたって?!」
「おう、マジだぞ!」
ノックもせずに俺の部屋のドアを勢いよく開けた奎亮がぶつかる勢いで訊いてきたのは、高校2年の夏休みだった。
「何だよ!遂に芸能界デビューかよ!?」
「バ~カ、まだそんなんじゃないって。この前さ、街に買い物に行ったら声を掛けられたんだよ。で、11月の17歳の誕生日を迎えたら事務所に入っても良いって父さんと母さんが許してくれたんだ」
「そっか~、秋までは我慢なんだなぁ。でもさ!良かったじゃん!夢への第一歩だろ!?」
「ああ」
「頑張れよ、那智!俺も応援するからさ!」
「うん。ありがとう、奎亮」
俺の肩を抱き頭をポンポンと叩く奎亮の、まるで自分の事の様に喜ぶ姿に面映い気持ちになって、奎亮の背中にそっと腕を回した。
その年の17歳の誕生日を迎える直前の11月25日、俺の両親と奎亮の両親が俺達2人の誕生日をミモザ館で祝ってくれた。
俺と奎亮は、奎亮が11月22日、俺が11月29日と誕生日が近い。
だから両親達は、ミモザ館に予約が入っていない限りはできるだけ一緒にお祝いをしてくれた。
幼い頃からの謂わば年間行事みたいなものだったけど、俺にとっては大切な日だった。
「誕生日おめでとう!奎亮、那智君!」
「ありがとうございます」
「奎亮君ももう17歳かぁ、大きくなったよな~。恰好良くなったし」
「いやいや、お前ンとこの那智君には負けるよ。モデル事務所に入るんだから!」
「あら、事務所に入ったからって売れるとは限らないわよ」
「何言ってんのよ。那智君ぐらい可愛くて恰好良かったら間違い無しよ」
「奎亮君だってステキじゃない!ミモザ館の手伝いをして親を支えるなんて最高に恰好良いじゃない!」
「あ、いえ…そんな…」
「でしょ~!そこはもっと褒めて頂戴」
まだ乾杯したばかりなのに既に出来上がっているかの様な4人に、思わず奎亮と顔を見合わせ小さく苦笑した。
「それで那智君、いつ事務所に?」
「来週末からです。色々レッスンとかもあるから学校が休みの間はできる限り通って、授業がある間は週末毎に通う予定です」
「そうかぁ、大変だな」
「でも、どうしてもやりたかったから…父さんと母さんにも勉強を疎かにしないって約束したから頑張ります」
「学生の本分は勉学だからな。でも那智がどうしてもやりたいと言うのなら父さんと母さんはできるだけの協力と応援はする。だから頑張りなさい」
「那智、もし売れっ子モデルになったらその時は此処のモデルをやったら?」
「あら、そんな事言ったら本気にするわよ?」
「良いですよ、おばさん。俺、喜んでやります」
母さんとおばさんがキャッキャと楽しそうに笑う。
やれやれといった表情で「まぁた言ってるよ」とぼやいた奎亮の肩をポンと叩くと、俺を見た奎亮にウインクした。
「おう、マジだぞ!」
ノックもせずに俺の部屋のドアを勢いよく開けた奎亮がぶつかる勢いで訊いてきたのは、高校2年の夏休みだった。
「何だよ!遂に芸能界デビューかよ!?」
「バ~カ、まだそんなんじゃないって。この前さ、街に買い物に行ったら声を掛けられたんだよ。で、11月の17歳の誕生日を迎えたら事務所に入っても良いって父さんと母さんが許してくれたんだ」
「そっか~、秋までは我慢なんだなぁ。でもさ!良かったじゃん!夢への第一歩だろ!?」
「ああ」
「頑張れよ、那智!俺も応援するからさ!」
「うん。ありがとう、奎亮」
俺の肩を抱き頭をポンポンと叩く奎亮の、まるで自分の事の様に喜ぶ姿に面映い気持ちになって、奎亮の背中にそっと腕を回した。
その年の17歳の誕生日を迎える直前の11月25日、俺の両親と奎亮の両親が俺達2人の誕生日をミモザ館で祝ってくれた。
俺と奎亮は、奎亮が11月22日、俺が11月29日と誕生日が近い。
だから両親達は、ミモザ館に予約が入っていない限りはできるだけ一緒にお祝いをしてくれた。
幼い頃からの謂わば年間行事みたいなものだったけど、俺にとっては大切な日だった。
「誕生日おめでとう!奎亮、那智君!」
「ありがとうございます」
「奎亮君ももう17歳かぁ、大きくなったよな~。恰好良くなったし」
「いやいや、お前ンとこの那智君には負けるよ。モデル事務所に入るんだから!」
「あら、事務所に入ったからって売れるとは限らないわよ」
「何言ってんのよ。那智君ぐらい可愛くて恰好良かったら間違い無しよ」
「奎亮君だってステキじゃない!ミモザ館の手伝いをして親を支えるなんて最高に恰好良いじゃない!」
「あ、いえ…そんな…」
「でしょ~!そこはもっと褒めて頂戴」
まだ乾杯したばかりなのに既に出来上がっているかの様な4人に、思わず奎亮と顔を見合わせ小さく苦笑した。
「それで那智君、いつ事務所に?」
「来週末からです。色々レッスンとかもあるから学校が休みの間はできる限り通って、授業がある間は週末毎に通う予定です」
「そうかぁ、大変だな」
「でも、どうしてもやりたかったから…父さんと母さんにも勉強を疎かにしないって約束したから頑張ります」
「学生の本分は勉学だからな。でも那智がどうしてもやりたいと言うのなら父さんと母さんはできるだけの協力と応援はする。だから頑張りなさい」
「那智、もし売れっ子モデルになったらその時は此処のモデルをやったら?」
「あら、そんな事言ったら本気にするわよ?」
「良いですよ、おばさん。俺、喜んでやります」
母さんとおばさんがキャッキャと楽しそうに笑う。
やれやれといった表情で「まぁた言ってるよ」とぼやいた奎亮の肩をポンと叩くと、俺を見た奎亮にウインクした。