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君なしではダメ

那智なち~、那智は将来どんな仕事に就きたいんだ?」
「ん~、そうだなぁ……モデルとか?」
「出たっ!那智の “目指せアイドルの星” !15歳にもなって相変わらずだな~」
「何だよ!良いだろ~?もしもの話だし思うだけなら自由なんだからさ」
「冗談だよ、冗談!」
「そういう奎亮はどうなんだよ?」
「俺は家の商売を継ぐんじゃないかなぁ~」

氏原奎亮とは幼馴染で、親同士が親しい友人だった事もあって子供の頃からよく一緒に遊んだ。
幼稚園も小学校も中学校もずっと一緒だった。
いつまでも一緒に居られる訳じゃない事は分かっていたけれど、別々の人生を歩むのはまだまだ遠い先の事だと思っていた。

「家の商売って、ペンション?」
「うん。父さんも母さんも彼処をホント大事にしてるし、何だかんだ言っても俺も好きなんだよなぁ、ミモザ館が」
「そっか、……奎亮らしいな」

そう言って笑うと、奎亮が照れ臭そうに笑い返した。



奎亮の両親は、ミモザ館という小さなペンションを経営している。
海の見える小高い丘の上に建っているそのペンションは、名前の通り春先になると庭に植えられたミモザの花が満開に咲き誇り、訪れた客人をもてなす。
ミモザ館のお客の殆どが、そのミモザの花に魅せられてまた来てくれるんだと、奎亮が嬉しそうに話してくれた。



「じゃあさ、いつか俺が超有名人になったら、ミモザ館の宣伝モデルをしてやるよ」
「いつかね~?ほんとにそんな日が来るのか?」
「あ、バカにしてるだろ?」
「そんな滅相も無い!まぁ当てにしないで待ってるよ」
「ほら、バカにしてるじゃん!」
「嘘!嘘!冗談だって~」
「こぉの野郎~!」

アハハと笑う奎亮の首に腕を回しヘッドロックをかけると、大袈裟に苦しがって見せた奎亮が俺の腕をバシバシと叩いた。

「ごめんごめん!那智!マジで!」



高校進学を間近に控えたあの頃も、ミモザ館の庭のミモザは綺麗な花を咲かせていた。

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