君なしではダメ
瑞希さんと六倉さんを新しい部屋まで案内して戻ると、共用スペースのリビングのソファに那智がぼんやりと座っていた。
「那智」
声を掛けるとゆっくりと振り返った顔は、泣きそうな何かを我慢している様な、そんな風に見えた。
「…那智、何かあった?」
何でもないと首を振ってもそれが嘘だと分かってしまうくらいには、俺は那智を理解しているつもりだ。
「那智、俺に隠し事するのか?」
「………」
「さっき『好きな人がいる』て言ってたけど……それと関係あるのか?」
俯いていた那智がハッと顔を上げる。
けれど小さく唇を噛み締めるとまた俯いてしまった。
奎亮の言葉に小さく唇を噛む。
確かめたいけど怖い。
でも怖いけど確かめなければ、ずっとこのまま進む事も戻る事もできない。
「……奎亮は…」
「え?」
「…奎亮の恋人って……どんな人?…俺の知ってる人?」
「…え?……こい…?」
「さっき爽汰が持ってた雑誌の切り抜き……あの雑誌、俺も見たんだ。奎亮、すっげえ優しい……俺の知らない顔してた」
「那智…?」
「あんな顔っ、あんな風に笑ってたのは……あの時、恋人が近くに居たからだろ?」
怖くて俯いたままの視界で握り合わせた両手が震える。
答えを知りたいのに返事を聴きたくないと叫ぶ心で、胸が張り裂けそうで…
「那智」
震える両手にそっと掌が重なる。
顔を上げると奎亮が照れた様に俺を見ていた。
「あのさ……実を言うと…あの写真を撮ってくれたの瑞希さんなんだけど、彼に撮影の時言われたんだ『恋人とか好きな人を思い浮かべてください』て。その時俺が思い浮かべたの……那智なんだ」
「……え…?」
「…俺、……ちゃんと言った事無かったけど……那智の事が好きなんだ…」
「………え?……えっ!」
目をパチパチさせる那智の正面に体を向け真っ直ぐに見つめる。
「那智はずっとモデルになるのが夢だっただろ?俺は那智が好きだから、その夢を応援したかった。ずっと一緒に傍には居られなくても、毎年たった1枚の写真だけの繋がりだけど…そういう愛し方なら許されるかなと思ったんだ」
「奎亮…」
照れ臭そうに顳顬を掻く奎亮が、視界の中で滲む。
「…俺は……俺も奎亮が好きだ……ずっとずっと好きだった」
「え?」
「でもあの写真を見て、俺の知らない奎亮を見て……それで…」
「那智」
ポロポロと涙を零す那智を抱き締める。
溢れ出した涙を止められずに居ると奎亮に抱き締められた。
「那智、六倉さんとは……本当に何でもないんだよな?信じて良いんだよな?」
「…うん…うんっ、奎亮だけだ……俺には奎亮しかいないんだ」
「週刊誌を見て、今日あの人と一緒に来たのを見て……俺すっごい焦ったんだぞ?」
「ごめっ、ごめん、奎亮…」
「俺もごめん、那智。好きだってもっと早く言えば良かった。俺は那智なしじゃダメなんだ」
一度ぎゅっと強く抱き締めてから那智の体を少し離す。
奎亮が両手で俺の頬を包み、指先で涙の痕を拭った。
真っ直ぐにお互いを見つめてから、どちらからともなく目を閉じながらゆっくりと顔を近づけると、2人の真ん中で初めてのキスを交わした。
「那智」
声を掛けるとゆっくりと振り返った顔は、泣きそうな何かを我慢している様な、そんな風に見えた。
「…那智、何かあった?」
何でもないと首を振ってもそれが嘘だと分かってしまうくらいには、俺は那智を理解しているつもりだ。
「那智、俺に隠し事するのか?」
「………」
「さっき『好きな人がいる』て言ってたけど……それと関係あるのか?」
俯いていた那智がハッと顔を上げる。
けれど小さく唇を噛み締めるとまた俯いてしまった。
奎亮の言葉に小さく唇を噛む。
確かめたいけど怖い。
でも怖いけど確かめなければ、ずっとこのまま進む事も戻る事もできない。
「……奎亮は…」
「え?」
「…奎亮の恋人って……どんな人?…俺の知ってる人?」
「…え?……こい…?」
「さっき爽汰が持ってた雑誌の切り抜き……あの雑誌、俺も見たんだ。奎亮、すっげえ優しい……俺の知らない顔してた」
「那智…?」
「あんな顔っ、あんな風に笑ってたのは……あの時、恋人が近くに居たからだろ?」
怖くて俯いたままの視界で握り合わせた両手が震える。
答えを知りたいのに返事を聴きたくないと叫ぶ心で、胸が張り裂けそうで…
「那智」
震える両手にそっと掌が重なる。
顔を上げると奎亮が照れた様に俺を見ていた。
「あのさ……実を言うと…あの写真を撮ってくれたの瑞希さんなんだけど、彼に撮影の時言われたんだ『恋人とか好きな人を思い浮かべてください』て。その時俺が思い浮かべたの……那智なんだ」
「……え…?」
「…俺、……ちゃんと言った事無かったけど……那智の事が好きなんだ…」
「………え?……えっ!」
目をパチパチさせる那智の正面に体を向け真っ直ぐに見つめる。
「那智はずっとモデルになるのが夢だっただろ?俺は那智が好きだから、その夢を応援したかった。ずっと一緒に傍には居られなくても、毎年たった1枚の写真だけの繋がりだけど…そういう愛し方なら許されるかなと思ったんだ」
「奎亮…」
照れ臭そうに顳顬を掻く奎亮が、視界の中で滲む。
「…俺は……俺も奎亮が好きだ……ずっとずっと好きだった」
「え?」
「でもあの写真を見て、俺の知らない奎亮を見て……それで…」
「那智」
ポロポロと涙を零す那智を抱き締める。
溢れ出した涙を止められずに居ると奎亮に抱き締められた。
「那智、六倉さんとは……本当に何でもないんだよな?信じて良いんだよな?」
「…うん…うんっ、奎亮だけだ……俺には奎亮しかいないんだ」
「週刊誌を見て、今日あの人と一緒に来たのを見て……俺すっごい焦ったんだぞ?」
「ごめっ、ごめん、奎亮…」
「俺もごめん、那智。好きだってもっと早く言えば良かった。俺は那智なしじゃダメなんだ」
一度ぎゅっと強く抱き締めてから那智の体を少し離す。
奎亮が両手で俺の頬を包み、指先で涙の痕を拭った。
真っ直ぐにお互いを見つめてから、どちらからともなく目を閉じながらゆっくりと顔を近づけると、2人の真ん中で初めてのキスを交わした。