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君なしではダメ

「へえ~、ほんとにスゴイね!ミモザの花が満開だぁ!」

タクシーを降り少し歩くと見えてきたミモザ館は、奎亮が送ってくれた写真と同じで満開のミモザの花に包まれていた。
風が吹くと花が揺れて、まるで黄色い風が吹いている様に見えた。

「あ、那智さん、鞄ありがとう。此処で大丈夫だから」
「…あ、あぁ…」

爽汰が差し出した右手にボストンバッグを渡す。
そのまま戻ろうとミモザ館に背を向けた時


「那智っ!!」


懐かしい声に呼ばれて、一歩を踏み出す事ができなかった。





ふと時計を見ると、針は午後2時を回った処だった。

「今日は予約が1件だったよな」

何となくそろそろ到着するんじゃないかという予感がして玄関に向かう。
外へ出た時、走り去るタクシーと、ふたつの人影が見えた。

「……那智?」

離れていてもそれが那智だと直ぐに分かった。
隣に立つ背の高いもう1人の姿に、心臓がドクンと脈打つ。
何か話した後、背の高い男に荷物を渡して那智が背を向けた。
反射的に自分でも驚くぐらい大声で呼んでいた。


「那智っ!!」


ビクッと揺れた体がゆっくりと振り返った。





ゆっくりと振り返ると、何度も何度も思い描いていた人が其処に居た。
そして駆け出すと息を弾ませながら俺の目の前に立った。

「那智……久しぶり…」
「……ああ、久しぶりだな……奎亮」
「どうしたんだよ、急に。何の連絡も無しに来るなんて」
「……ん、ちょっと…な」

あんなに会いたかった筈なのに、奎亮を目の前にしてその顔を直視できなくて、少し俯いたまま答える。

「週刊誌で怪我したって、大丈夫なのか?」
「あ、あぁ…」

つい、隣の爽汰に視線を向けてしまった。





俯いたままの那智が、ついと隣に視線を遣った。

「あっ、すみません!もしかしてご予約の六倉爽汰様ですか?」

那智と俺をじっと見ていた青年が、ふっとその表情を和らげた。

「はい。ミモザ館のオーナーさんですか?」
「氏原です。大変失礼しました。荷物をお持ちしますね」
「ありがとうございます。お世話になります」

ボストンバッグを受け取るともう一度那智を見る。
まだ俯いたままの那智に何て言葉を掛け様か迷った時

「那智さん、今日だけ一緒に泊まってよ」

六倉さんの言葉に息を呑む。
驚いて那智を見ると、那智も同じ反応を見せた。

「…え?…あ、いや…俺は」
「ダメ?氏原さん、部屋の空きはもう無いですか?」
「…え?…あ、いえ……あります、けど…」
「ほら、空いてるって!ね、良いでしょ?那智さん」


彼は…那智とどういう関係なんだろうか?

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