君なしではダメ
地元の駅まで早瀬さんに送ってもらうと、キャリーケースを持って車を降りる。
「ほんとに大丈夫か?実家まで送らなくて」
「はい。帽子とサングラスをしてればバレませんよ、きっと。それに親には何の連絡も入れてないから…」
「そっか。取り敢えず1週間ゆっくり休めよ」
「はい、ありがとうございます」
早瀬さんの車を見送ると、キャリーケースを引きながら懐かしい街並みをグルッと見渡し歩き出した。
と、その背後から
「あれ?那智さん?」
名前を呼ばれて振り返ると、其処には右手にはボストンバッグ、左手は首に掛けた包帯で吊った背の高い人影があった。
「…え?…えっ、爽汰?どうして此処に?」
「それはこっちの台詞だよ!」
「俺はこの町の出身なんだよ!てか、その腕…」
「ああ、大丈夫だって。そんな顔しないでよ~」
「でも俺を庇って、俺の所為で怪我した事には変わらないだろ」
「もう~、そんな顔しないでよ~。…じゃあさ、俺これから行きたい所があるんだけど、其処まで荷物持ってくれる?」
「ああ、良いよ!」
悪戯っ子の様に笑う爽汰に笑みを返すと、その手からバッグを受け取る。
「でもさ~、こんな所で那智さんと偶然会うなんて、何か運命だと思わない?」
「バーカ、何言ってんだよ」
「え~、だって何の約束も示し合わせた訳でもないんだよ?しかも其処が那智さんの生まれ故郷だなんて!」
「爽汰は運命を信じてるのか?」
「う~ん…どっちかと言えば信じてなかったけど、今なら信じられるかなぁ」
「あはは、現金だな?」
「那智さんは信じてないの?運命を」
「……どうかな……分からない…」
爽汰が俺を見たのが分かったけど、その顔を振り返る事ができなかった。
「ところで爽汰が行きたい所って何処?」
「え~っとね、ミモザ館ていうペンション」
「…え?」
驚いて爽汰を見上げる。
「この前さ、雑誌に載ってるのを見たんだ。庭にミモザの木が植えてあって、春になったら満開ですっごい綺麗なんだって!」
爽汰が子供みたいな笑顔で俺を見る。
「那智さん、ミモザ館を知ってる?」
「……あ、あぁ…名前ぐらいは…」
無邪気なその笑顔に、そう答えるのが精一杯だった。
「ほんとに大丈夫か?実家まで送らなくて」
「はい。帽子とサングラスをしてればバレませんよ、きっと。それに親には何の連絡も入れてないから…」
「そっか。取り敢えず1週間ゆっくり休めよ」
「はい、ありがとうございます」
早瀬さんの車を見送ると、キャリーケースを引きながら懐かしい街並みをグルッと見渡し歩き出した。
と、その背後から
「あれ?那智さん?」
名前を呼ばれて振り返ると、其処には右手にはボストンバッグ、左手は首に掛けた包帯で吊った背の高い人影があった。
「…え?…えっ、爽汰?どうして此処に?」
「それはこっちの台詞だよ!」
「俺はこの町の出身なんだよ!てか、その腕…」
「ああ、大丈夫だって。そんな顔しないでよ~」
「でも俺を庇って、俺の所為で怪我した事には変わらないだろ」
「もう~、そんな顔しないでよ~。…じゃあさ、俺これから行きたい所があるんだけど、其処まで荷物持ってくれる?」
「ああ、良いよ!」
悪戯っ子の様に笑う爽汰に笑みを返すと、その手からバッグを受け取る。
「でもさ~、こんな所で那智さんと偶然会うなんて、何か運命だと思わない?」
「バーカ、何言ってんだよ」
「え~、だって何の約束も示し合わせた訳でもないんだよ?しかも其処が那智さんの生まれ故郷だなんて!」
「爽汰は運命を信じてるのか?」
「う~ん…どっちかと言えば信じてなかったけど、今なら信じられるかなぁ」
「あはは、現金だな?」
「那智さんは信じてないの?運命を」
「……どうかな……分からない…」
爽汰が俺を見たのが分かったけど、その顔を振り返る事ができなかった。
「ところで爽汰が行きたい所って何処?」
「え~っとね、ミモザ館ていうペンション」
「…え?」
驚いて爽汰を見上げる。
「この前さ、雑誌に載ってるのを見たんだ。庭にミモザの木が植えてあって、春になったら満開ですっごい綺麗なんだって!」
爽汰が子供みたいな笑顔で俺を見る。
「那智さん、ミモザ館を知ってる?」
「……あ、あぁ…名前ぐらいは…」
無邪気なその笑顔に、そう答えるのが精一杯だった。