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君なしではダメ

「大丈夫か?水谷」
「……うん……あの、早瀬さん…爽汰は?」
「肩と二の腕を少しな。でも大きな怪我じゃないそうだ」
「そう…良かった…」

リビングのソファで深く息を吐く。

「事務所とも話したんだけど、お前、少し休め」
「え?…でも…」
「ここんとこ忙しかったし、慣れないCM撮影で知らず気を張ってたんだろ。もう一つの方は撮影までにまだ少し間があるし、それまでちゃんと体調を整えとけ。体調管理も仕事のうちだ。な?」
「……うん……分かった…」

それだけ答えるのが精一杯だった。
早瀬さんが帰った後、ソファにずるずると体を横たえる。
何とか持ち上げた腕を顔の上に置く。
部屋の照明すらも俺には眩し過ぎた。
その眩しい光の中に、あの優しく甘く笑う奎亮の顔が重なって……苦しくて切なくて目を閉じて腕で覆った。
そうすれば、俺の記憶に焼きついている奎亮の笑顔を思い出せると思った。



…なのに



俺の知らない誰かに向かって笑う奎亮が消えない。
俺の知らない奎亮が俺を占領していく…


「…奎亮……会いたいよ…」

震える声と一緒に閉じた目許から涙が零れた。

「どうして……俺には奎亮だけなのに……奎亮しかいないのに…」

無意識に呟いた言葉と止まらない涙に、あの写真を見た時からずっと続く胸騒ぎの理由を自分でも漸く理解した。



……そうだ。俺は、ずっとずっと…奎亮が好きだったんだ

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