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誰にも言いませんから!


青年は体制を低くすると剣を一度引き、よろめいた男に向けてその切っ先を向けた。瞬間的に危険を察した仮面の男は身をよじってなんとか直撃を免れたが、衝撃を与えられた仮面には大きなヒビが入り、石畳の地面に落下した。仮面の男の素顔が露わになる。

「しまっ―……!」

「…まさか…お前、は………」

青年が目の前の男の顔を見て、目を見開いた。
男の顔が月明かりに照らされ、短く舌打ちする。しかし、悔しげに歪んでいた表情はやがて力が抜けたかのように無表情へと変わった。そしてその目には、恐ろしいほどに明らかで強い殺意が灯った。

次の瞬間。
男は躊躇なく手にしていた剣で青年の体に剣を振り下ろした。

……赤い血が、舞う。

青年の体はなすすべなく後ろへと倒れこみ、やがてゆっくりと重力に従うように、水路に向かって真っ逆さまに落ちて行った。こちらを見下ろす男の顔を見ながら、青年は水に飲み込まれていく。


(……俺は、こんなところで死ぬわけには、)


そしてそこで、彼の意識は混沌の中へと落ちて行った。

いつの間にか雲が消えていたのだろう。もう遮るものがなくなった月は、何事もなかったかのように、再び静寂を取り戻した町並みを照らし出している。

…夜は静かに更けて行く。





【見習い薬売りは王宮に出張中!?】

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