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誰にも言いませんから!


「ここのところずっと感じていた視線の主は、お前か。」

「……」

次の問いかけにも、男は答えなかった。
しかし男の手元がわずかに動き、その手元に怪しい煌めきを放つ刃が握られていたのを、青年は見逃さなかった。刹那―…それは、閃光。甲高い金属のぶつかる音が、静かな街並みに響いた。

「く…っ」

刃同士がぶつかり合い、ギリギリと剣先から音がこぼれる。青年が端正な顔を歪めると、仮面の男がようやくその口を開いた。

「は…さすが、武芸にも秀でていると称賛される方なだけのことはある。奇襲をかけたのに、避けるどころか初撃を受けきるとは恐れ入る。」

「目的はなんだ」

思いのほか若い男の声。それもどこかで聞いたことがあるような、そんな声だ。

つばぜり合いは未だに続いている。
青年が静かに、しかし確実に怒気を含んだ声をあげると、仮面の男は面白そうに喉の奥でクツクツと笑った。

「目的……、アンタが邪魔だから消すように言われてるから、とでも言っておこうか。悪いがこちらも仕事なんでね。ここで死んで貰う。」

仮面の男は刃を弾くと青年と間合いを取り、再び剣を振り下ろす。間一髪のところで青年もそれを受けきるが、体制が崩れた。

背後には水路が近付き、あと半歩でも下がれば落下してしまうであろう。青年の金色の髪が、静かに街を吹きわたる風に揺れた。

「ッ、…お前は何者だ」

「…今から死ぬ人間にそれを教える必要はない。」

「俺の死を決めるのはお前じゃない。」

「は、この状況でそんなことが言えるか。追い詰められてるのはどちらなのか分かって―…」

そこまで言いかけて、仮面の男は言葉を止めた。
否、発することが出来なかった。

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