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年上彼氏と年下の彼

「あー…身に染みるわー…」

「何それ。おばあちゃんみたいなこと言うなぁ。」

「なんだって?コウキ君。」

「いえ、ナンデモナイデスヨ?」

コウキの淹れたてのコーヒーを飲みながら、私は幸せの声を漏らす。ミルク1つとシュガーを1つ。これは私のコーヒーの黄金比率。コウキと他愛のない会話を繰り広げながら、ソファの上にごろりと横になる。

「ねーコウキ。年上の女ってさ、なんか重くない?」

「なんで?」

「だってさ…年上って身構えない?」

「んー…あんまりそういうの気にならないかなぁ。だって、俺が千波のこと好きなことは変わりないんだし。自分の気持ちがそうなんだから間違いないでしょ。大体、初めて千波に声かけた時だって、俺が一目ぼれしたから声かけたんだよ。」

「…は!?うううう嘘!?!?」

「じゃなかったら、いきなりこっちから女の人に声かけたりしないよ。ナンパ常習者じゃあるまいし。俺、これでも意外とシャイなんだから。」

真顔でさらっとそういうことを言えるコイツは実は凄い天然タラシのような気がする。あれは親切心で声をかけてきていたわけではなかったのか。さわやかな顔して意外と計画的というか計算高いというか。真っ赤になった顔を見られたくなくて眼をそらすと、コウキはいたずらを思いついた子供のような怪しい笑みを口元に浮かべた。

「で、千波は?俺のどこが好きになったの?」

「…、ッ、言わない!」

「俺はいくらでも言えるけどなぁ。千波の仕事に対して一生懸命なとことか、努力家なとことかも、全部含めて大好きだよ。」

「…な、なんで知ってんの、」

「だっていつも研究室から出てく時、次はこうしよう、あーしようとか、調べておかなきゃとか言ってたし。で、ちゃんと次に来たときは完璧に準備してきてたでしょ。それも分厚い資料作って。それって自分で努力しなきゃ出来ないことだから。」

やわらかな笑顔でそんなことを言われて、私はどうしたらいいんだろう。そんな所まで理解してくれているなんてこんな素敵すぎる彼氏。ほんと一生分の運を使い果たしたくらい幸せなんじゃないかなぁとか思っちゃう辺り、私も相当べた惚れみたいで。

真っ赤になってる顔のまま、コウキに向き直って咳払いをひとつ。
うう、面と向かってこういうこと言うのってなんて恥ずかしいんだろう…!
顔から火が出そうになりながら、千波はゆっくりと口を開いた。

「…わ、私、は…コウキのそういう所が好き。優しい笑顔も手も、全部全部好き。」

「ありがとう。俺も千波が大好きです。」


私は年上が好きだ。
大人な考え方が好き。低い声とか、たくましい腕とか、そういう年上の男が好きだった。
昔からそう。それはずっと変わらないことだろうなって思ってた。

―…でも違った。恋愛って理屈じゃない、愛は理屈じゃない。

哲学者が愛に悩んだように、きっと愛を理屈で説明なんてできないんだ。
私は、彼が好き。年下の、優しくて素敵な彼が大好きです。
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