最悪の一日。
「で!参加者女性を増やしたいってんで…お願いめぐみ!めぐみも参加して!」
「お断りです。」
0コンマ1秒並みの即答をお見舞いしてやった。
ふざけるな。わたしはそういうパーティだの合コンだのが昔から物凄く苦手なのだ。
そんなところに行くくらいなら近所のブック・オンで立ち読み決め込んだほうがよっぽど有意義だい!すると香織が泣きそうな顔をしてこちらを見てきた。
「お願いよめぐみ~!誰か捕まるかなと思って声かけたんだけど皆予定があるとか言われちゃってさぁ…もう途方に暮れてんの。頼る人がもうめぐみしかいないの。」
「嫌だよ私だって!」
「お願い!めぐみ様!!!」
「嫌!!!」
必死に頼み込む香織は目の前で両手を合わせて必死に懇願のポーズを取っている。
昼食から帰ってきた他の社員たちが何事だと不可思議そうにこちらに視線を向けながら席に着き始めている。…お?これはなんだかわたしが悪いことをしている気分になってきたぞ????
「ね、お願いめぐみ!この際、土下座でもなんでもするから…!」
いやそれは困りますよ香織お嬢さん!!!
香織は椅子から立ち上がると、こちらまで移動してきて、スッと身をかがめ始める。
今にでも土下座をしそうな勢いだ。しかも目には涙まで溜めている。
「ウワーッ!!!分かった、分かったから!!!参加するから!!!土下座とかヤメテーーー!!!」
周りからの視線の痛さに耐えきれず、めぐみのほうが折れた。
「ホント?ありがと、めぐみ!やっぱ持つべきものは幼馴染だよねん♪」
ゲンキンだな!おっそろしい女だよアンタって子はもう!!
嬉しそうに手を握る香織の瞳には、先ほどまで見えていた涙の姿はもうどこにも見られなかった。女優か!アナタは女優の才能があるぞ、香織!!!
―…そんなこんなで、めぐみと香織は仕事帰りにそのまま婚活パーティへと繰り出すことになったのである…。