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cafeルピナス


最悪こんな展開が待ってる…!?

『む、無理です私こんなとこで働けません…!』
『ああん?危ないとこ助けてやって、しかも動けないとこおぶってやって命の恩人に対してそんな態度取れんのかワレ!!!働けゴラァ!!!!』
『ひええええええ!!!!助けて――――!!!!!!』

(※以上、脳内回想をお届けしました。)

こんなことになったらどうしよう…。思いのほかテンプレートすぎる妄想だった気もするが、大方考え付くのはこんな感じだろうか。これはマズイ。助けて貰えたのは助かったが、そんな展開が待っているのは非常に困る!

しかしめぐみが頭の中で馬鹿なことを考えているよりも早く、目的地に到着したようだった。

「着きました、ここです。ちょっと待ってて下さいね。」

顔をあげてめぐみは驚いた。そこは小さな喫茶店だったのである。
店、というから何か危ない店なのかと勘違いしていた。緑色の屋根の、小さくて可愛いお店だ。

看板には「cafeルピナス」と書いてある。
呆気にとられるめぐみをよそに、青年はめぐみをおぶったままポケットから器用に鍵を取り出し、慣れた手つきで店のドアを開けた。

「よ…っと。とりあえずここの椅子に座って下さい。」

めぐみを店内の椅子に下ろすと、青年はカウンターの奥へと引っ込んでいった。しばらくするとパチッとスイッチを押す音が聞こえ、途端にうす暗かった店内が一気に明るくなる。めぐみはその明るさに一瞬目を瞑り、そして、おそるおそる瞼を開けた。

そこに広がっていたのは小さいながらも綺麗なカフェだった。

「わ、ぁ…」

焦げ茶色のシックな丸テーブル席とカウンター。店内の明かりは少しオレンジ色で、なんだかとても温かい印象を受ける。クリーム色の壁には洋画がいくつか飾られていて、店の雰囲気によく馴染んでおり、店内に置いてある観葉植物や小さな小物に至るまで、凄く感じがいい。

カウンターに置いてある鉢植えポットが、また一層可憐だ。店内を見渡すと窓際にもおなじ種類のポットが置いてある。…これは何の種類だろうか。色も赤やピンク、白や青など鮮やかで可愛らしい。

めぐみは花などの植物の種類にはめっぽう疎いこともあり、普段よく見かける花とも違った不思議なそのポットに咲く植物に目を奪われていた。

「すみません、勝手に連れて来ちゃって。でもご自宅も遠いようでしたし、ここが一番近くて応急処置出来るものも揃っていたので…」

しばらくして青年が戻ってきた。青年の手には救急箱があり、彼はそれを丸テーブルの上に置くと中から湿布やらを取りだした。

「すみません、捻ったところを見せて貰えますか?」

「あっ、は、はい…」

言われるがまま、めぐみは足を差し出した。違うのだ。初対面の男性相手に無防備とも思われるかもしれないが、なんだかあまりに店の雰囲気がいいものだから!

青年はかがんで赤く腫れあがった患部に湿布を貼りつけ、慣れた手つきで手際よく包帯を巻いて処置をしてくれた。めぐみが自分でやるよりもよっぽど丁寧で綺麗な仕上がり。まるで保健室の先生のようだ。

「はい、これで終わりです。」

「あ、ありがとうございます…」

「いえいえ。でも、これはあくまで応急処置なので、ちゃんと後で医者に行って見て貰って下さいね。放置してひどくなったら大変なので。」

「はい、ありがとうございます本当に。」

お礼を言ったその瞬間、店内の大きな時計がボーン、ボーンと大きく鳴った。針を見やればもう深夜2時。とんでもない時間になってしまっていた。
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