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最悪の一日。


「まじ萎える。邪魔入っちゃったわー。せっかく、このオネエサンで遊ぼうと思ってたのにさ。」

香織の目には涙が浮かんでいた。着衣は乱れ、ワイシャツがはだけているのを見れば、この男が香織に何をしようとしたのかは一目瞭然だ。男の目は鋭く、こちらに向けられた視線には恐ろしい恐怖を感じる。

これだけで足が震えてしまうのだから、笑える。

「……か、おりに、何してんのよ、」

「何もしてないよ、【まだ】。」

「ッ、け、警察!!!呼ぶよ!!!」

男は飄々とした態度で言ってのけたが、めぐみがスマホを取り出してそう叫ぶと、一瞬だけ表情を歪ませた。

「あー…ほんっと、めんどくせ。うるせー女ばっかだな。」

男は立ち上がるとめぐみのほうへ近づいてきた。本能的にヤバイ、と思った。でも面白いぐらいに、体が言うことを聞かない。逃げなくては、早く、香織を連れて。そう思っているのに、なぜか足が動いてくれないのだ。

オイオイオイ、こんな所で乙女発揮してどうする!足が震えてどうする!!そう思うのに、なかなかどうして、動けないのだ。

動け。動け動け。お願い動いてくれ私の足!!!震えるな、足!!!心の中で何度も唱える。

「オネーサンもさ、遊んであげよっか?どうせ経験なさそうだし、ね?」

スルリ、と顎の下に手が触れて、唇に指が触れる。

―…まるで電撃だ。
これは、そう、電撃。あまりに気持ち悪くて、電撃が走った。髪の毛が逆立つみたいな感覚。気がつけば凍ったように動かなかった体が動くようになっていた。

自分でもびっくりするくらい、足がスッと上がった。俗に言う、踵落としというやつだ。

ガンッ、と痛そうな音を立てて、男の頭に踵がクリーンヒットした。

「―…ってぇぇぇ!!!」

男はあまりの痛みにその場にしゃがみ込んで頭を抱えたまま悶絶している。

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