初めての魔法♡
それは夜の野営地での出来事ーー
「で…続きはなんだ? おい、またか。また読ませないつもりか。黙れ!」
一人本に向かって声を荒げているアスタリオン。それを遠くから見ていたtavはズキズキする首筋を手で摩りながら頭を悩ませる。やはり彼にあの本をあげたのは良くなかったのではないかと…。
アスタリオンが抱えている本は、昼間に荒れた村の地下室を探索して手に入れた物で、それがなんとも、薄気味悪い本だった。
地下の、暗鬱とした怪しげな実験場で見つけたその本は重量感があり、独特な見た目をしている。表紙は悪霊が叫んでいる顔に見え、その顔の双眸には禍々しいアメジストの宝石が埋め込まれており、『サーイの死霊術』と印字されていた。
魔術の才能が全くない者が見ても分かる。明らかにヤバい本…。それを手に入れた時は面倒になる前に破壊してしまおうと思っていたが、アスタリオンが何かと理由を付けて本を手にしようとしてきたのだ。
「重たそうだな。持ってやろうか?」とか「夜、お前に読み聞かせてやるから…」なんて胸元をチラつかせて誘惑してきたり。次第に「俺が罠解除をしなければ手に入らなかったんだぞ」と不貞腐れ、そこまで言うならと本を地面に放り投げて壊すフリをしたら怒りの形相で「なんて勿体無い!」と言う始末。
しかしその本を開けるには鍵が必要で、その時tavはまだ持っていなかった。必死なアスタリオンの反応を見て散々堪能したあと、その情報をバラしたら彼に逝く寸前まで吸血されたのは言うまでもない。そしてその時に受けた傷はまだ痛んでいる(あの野郎め…)。
そしてなんやかんや、探索を進めて本の鍵が宝石だと分かり、資料を頼りに井戸に落ちてみれば大量の蜘蛛の巣と卵…。奥に進めばオーガよりも大きな母蜘蛛が徘徊しているのが見えて探索を断念しようとした時だ。
アスタリオンが、「俺が取ってきてやろう。その代わり…」
俺がその本を貰う、と。
そして今に至る。
アスタリオンは見事、蜘蛛達の視線を掻い潜り宝石を手にしてきた。案の定鼻を高くした彼は「友よ、約束を果たす時だ」なんて芝居がかった台詞を言って本を奪い、その中身をあっさりと開けてしまったのだ。
「くそっ、くそがっ」
現在アスタリオンはその本と格闘している。声を荒げて、苛々しながらページをめくっているが「読めない…!おい…!」とさっきから繰り返している。
「助けはいる?」
見かねたtav。一応魔術に精通している、というか、見習いではあるが死霊術を極めようとしている身。何かアドバイスができるのではないかとアスタリオンに歩み寄る。そしてその声を聞いてハッとしたアスタリオンは慌てて本を閉じ、オッホンと一呼吸を整えた。
「友よ、親切に感謝する…。難しい内容だが、心配はいらない」
チッチッチっと人差し指を振ってみせるアスタリオン。
いつものように、どこか演者のような仕草をして余裕だと微笑んでみせる。
しかし不安に思ったtavは首を傾げる。
「本には何が書いてあったの?」
「そうだな…。蘇生術だの…死に関することが記載されていた。だが全てを読み切っていない。読ませてくれないんだ」
やれやれと首を振るアスタリオン。
ならばとtavが読んでやろうと本に手を伸ばすが、アスタリオンがそうさせないぞと言わんばかりに本を後ろに隠してしまう。
「こいつのことはまたあとで考えよう…。ところでだが、友よ」
上手くかわされてしまい眉間にシワが寄るtav。そこまで本を取られたくないのか。やはりあの時、壊しておくべきだったか。そんなことを考えている間に、アスタリオンが近づいてきてtavの首筋に付けた吸血痕に視線を落とした。
「助けはいるか?と聞いたな」
あっ、絶対良くないやつだ。
どことなく嬉しそうなアスタリオンの声に体が強張るtav。
視線が首筋に向けられているのを感じる。
「試したいことがある」
ニヤリと口角が上がるアスタリオン。
こういうことを彼が言う時は大抵ロクでもないことだ。
「お前の親切に、甘えたい…」
tavの首筋に顔を寄せ、そっと呟いたアスタリオン。首筋に付けた吸血痕に唇を這わせ、びくりと震えた肩を逃げられないように鷲掴みにする。
「助けはいる?とは言ったけど、」
野営地から少し離れた場所に移動して、アスタリオンと向き直っているtav。拒否することもできたが、血液不足なのか頭が上手く回らず、気づけばこんなところまで付いてきてしまった。
草木で覆われたこの場所なら誰かに見られる心配もないだろう。こんなとこに呼ばれたのだ。やることは一つ。だが一応確認は取らなければ。
「何をして欲しいの?」
「フ……わかっているだろう?」
楽しそうに、自身の顎に手を添えてtavを見つめるアスタリオン。彼の言葉を聞いてやっぱりなと確信したtavはズボンを脱ごうとベルトの留め金を外そうとする。
「いや待て。今日はそうじゃない…」
「え?」
彼の思い掛けない言葉に驚く。
こんな人気のないところにきたらもうそれしかないだろうと思っていた矢先、どこか残念に感じたtavにアスタリオンが微笑んでみせる。
「お前の期待を裏切ってすまない。だが、これも新たな挑戦だと思う…」
「挑戦って…?」
ますます頭が混乱する。
アスタリオンは私に何をさせたいのだろう。
「少しだけ、腹を見せて欲しい」
ますます混乱するtav。
「もしかして、お医者さんごっこでもするつもり?」
「ハハッ。まさか?俺がそう見えるとでも?」
ないないと首を横に振るtav。
怪しいが、仕方なく、上着をたくしあげてお腹を彼をに見せてみる。だがこれだとまるで小さな子供がするお医者さんごっこだ。一体何を考えているのか。
訝しげにtavの腹を見ながら「フーム」と芝居がかった仕草で考えてみせるアスタリオン。まさか本当にお医者さんごっこをするのか…。それとも、どこの部位を切り落とそうか吟味する精肉の解体業者か。
「言っておくか俺は医者ではないし、精肉の解体業者でもない。今からするのは魔術の真似事だ」
「ふーん…。……ん?」
さり気なく思考を読まれていたといい、なんか「魔術の真似事」と聞こえたような、今何と? そう思った瞬間、彼の冷たい手が腹に感じて体が強張る。
「う゛っ」
瞬時、聞いた事のない呪文が紡がれ眩い光が腹に命中し思わず目を閉じてしまう。痛みはないがじんわりと熱が腹に帯びるのを感じ、おそるおそる瞼を開いた。
「何これ…」
「成功したのか?」
アスタリオンの手が腹から離れると、先ほどまで何も無かったはずの腹にルーン文字に似た怪しげな模様が刻印されていた。
それはまるで、子宮にも似た…模様。
これはなんだ。
読めないし、なんだか、熱い。
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力尽きました爆
「で…続きはなんだ? おい、またか。また読ませないつもりか。黙れ!」
一人本に向かって声を荒げているアスタリオン。それを遠くから見ていたtavはズキズキする首筋を手で摩りながら頭を悩ませる。やはり彼にあの本をあげたのは良くなかったのではないかと…。
アスタリオンが抱えている本は、昼間に荒れた村の地下室を探索して手に入れた物で、それがなんとも、薄気味悪い本だった。
地下の、暗鬱とした怪しげな実験場で見つけたその本は重量感があり、独特な見た目をしている。表紙は悪霊が叫んでいる顔に見え、その顔の双眸には禍々しいアメジストの宝石が埋め込まれており、『サーイの死霊術』と印字されていた。
魔術の才能が全くない者が見ても分かる。明らかにヤバい本…。それを手に入れた時は面倒になる前に破壊してしまおうと思っていたが、アスタリオンが何かと理由を付けて本を手にしようとしてきたのだ。
「重たそうだな。持ってやろうか?」とか「夜、お前に読み聞かせてやるから…」なんて胸元をチラつかせて誘惑してきたり。次第に「俺が罠解除をしなければ手に入らなかったんだぞ」と不貞腐れ、そこまで言うならと本を地面に放り投げて壊すフリをしたら怒りの形相で「なんて勿体無い!」と言う始末。
しかしその本を開けるには鍵が必要で、その時tavはまだ持っていなかった。必死なアスタリオンの反応を見て散々堪能したあと、その情報をバラしたら彼に逝く寸前まで吸血されたのは言うまでもない。そしてその時に受けた傷はまだ痛んでいる(あの野郎め…)。
そしてなんやかんや、探索を進めて本の鍵が宝石だと分かり、資料を頼りに井戸に落ちてみれば大量の蜘蛛の巣と卵…。奥に進めばオーガよりも大きな母蜘蛛が徘徊しているのが見えて探索を断念しようとした時だ。
アスタリオンが、「俺が取ってきてやろう。その代わり…」
俺がその本を貰う、と。
そして今に至る。
アスタリオンは見事、蜘蛛達の視線を掻い潜り宝石を手にしてきた。案の定鼻を高くした彼は「友よ、約束を果たす時だ」なんて芝居がかった台詞を言って本を奪い、その中身をあっさりと開けてしまったのだ。
「くそっ、くそがっ」
現在アスタリオンはその本と格闘している。声を荒げて、苛々しながらページをめくっているが「読めない…!おい…!」とさっきから繰り返している。
「助けはいる?」
見かねたtav。一応魔術に精通している、というか、見習いではあるが死霊術を極めようとしている身。何かアドバイスができるのではないかとアスタリオンに歩み寄る。そしてその声を聞いてハッとしたアスタリオンは慌てて本を閉じ、オッホンと一呼吸を整えた。
「友よ、親切に感謝する…。難しい内容だが、心配はいらない」
チッチッチっと人差し指を振ってみせるアスタリオン。
いつものように、どこか演者のような仕草をして余裕だと微笑んでみせる。
しかし不安に思ったtavは首を傾げる。
「本には何が書いてあったの?」
「そうだな…。蘇生術だの…死に関することが記載されていた。だが全てを読み切っていない。読ませてくれないんだ」
やれやれと首を振るアスタリオン。
ならばとtavが読んでやろうと本に手を伸ばすが、アスタリオンがそうさせないぞと言わんばかりに本を後ろに隠してしまう。
「こいつのことはまたあとで考えよう…。ところでだが、友よ」
上手くかわされてしまい眉間にシワが寄るtav。そこまで本を取られたくないのか。やはりあの時、壊しておくべきだったか。そんなことを考えている間に、アスタリオンが近づいてきてtavの首筋に付けた吸血痕に視線を落とした。
「助けはいるか?と聞いたな」
あっ、絶対良くないやつだ。
どことなく嬉しそうなアスタリオンの声に体が強張るtav。
視線が首筋に向けられているのを感じる。
「試したいことがある」
ニヤリと口角が上がるアスタリオン。
こういうことを彼が言う時は大抵ロクでもないことだ。
「お前の親切に、甘えたい…」
tavの首筋に顔を寄せ、そっと呟いたアスタリオン。首筋に付けた吸血痕に唇を這わせ、びくりと震えた肩を逃げられないように鷲掴みにする。
「助けはいる?とは言ったけど、」
野営地から少し離れた場所に移動して、アスタリオンと向き直っているtav。拒否することもできたが、血液不足なのか頭が上手く回らず、気づけばこんなところまで付いてきてしまった。
草木で覆われたこの場所なら誰かに見られる心配もないだろう。こんなとこに呼ばれたのだ。やることは一つ。だが一応確認は取らなければ。
「何をして欲しいの?」
「フ……わかっているだろう?」
楽しそうに、自身の顎に手を添えてtavを見つめるアスタリオン。彼の言葉を聞いてやっぱりなと確信したtavはズボンを脱ごうとベルトの留め金を外そうとする。
「いや待て。今日はそうじゃない…」
「え?」
彼の思い掛けない言葉に驚く。
こんな人気のないところにきたらもうそれしかないだろうと思っていた矢先、どこか残念に感じたtavにアスタリオンが微笑んでみせる。
「お前の期待を裏切ってすまない。だが、これも新たな挑戦だと思う…」
「挑戦って…?」
ますます頭が混乱する。
アスタリオンは私に何をさせたいのだろう。
「少しだけ、腹を見せて欲しい」
ますます混乱するtav。
「もしかして、お医者さんごっこでもするつもり?」
「ハハッ。まさか?俺がそう見えるとでも?」
ないないと首を横に振るtav。
怪しいが、仕方なく、上着をたくしあげてお腹を彼をに見せてみる。だがこれだとまるで小さな子供がするお医者さんごっこだ。一体何を考えているのか。
訝しげにtavの腹を見ながら「フーム」と芝居がかった仕草で考えてみせるアスタリオン。まさか本当にお医者さんごっこをするのか…。それとも、どこの部位を切り落とそうか吟味する精肉の解体業者か。
「言っておくか俺は医者ではないし、精肉の解体業者でもない。今からするのは魔術の真似事だ」
「ふーん…。……ん?」
さり気なく思考を読まれていたといい、なんか「魔術の真似事」と聞こえたような、今何と? そう思った瞬間、彼の冷たい手が腹に感じて体が強張る。
「う゛っ」
瞬時、聞いた事のない呪文が紡がれ眩い光が腹に命中し思わず目を閉じてしまう。痛みはないがじんわりと熱が腹に帯びるのを感じ、おそるおそる瞼を開いた。
「何これ…」
「成功したのか?」
アスタリオンの手が腹から離れると、先ほどまで何も無かったはずの腹にルーン文字に似た怪しげな模様が刻印されていた。
それはまるで、子宮にも似た…模様。
これはなんだ。
読めないし、なんだか、熱い。
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力尽きました爆