Ghost
『――この少年にはもう少しだけ人質でいてもらうこととします』
ブツリ、と引き千切られたように通信が断絶する。
「おい、ラーク!……おい、Q」
「…………」
「――Q!」
声が、オリバーの声がして――私の肩を揺り動かしている。
「おい、Q!大丈夫か……くそっ……」
だが私の意識は――暗転していた。
指先がびりびりと痺れるのは、冬の寒さのせいではない。
暗転し、
転落し、
剥落していくようにぼろぼろと再生されていくのは、昨日のLの言葉だった。
クリスマスイブの夜、まるでサンタクロースの到来に心躍らせて眠れない子供のように起きてきたLは、しかし沈黙したままではなかった。
時折爆ぜる暖炉の薪、窓の外の雪に落ちる橙色の光、クリスマスツリーの電飾、賑やかで暖かい空間だった。しかし私もそろそろ眠気を感じて、問いかけたのだった。
「……どうしたんだい、L」
時刻は夜の11時だった。
「……」Lは答えない。
「私はそろそろ寝るよ」
「…………天文台に、行ったんです」
一時間ぶりに発せられたその言葉は静かなものだった。
しかしまるで決意を固めたかのような、確かな、取り消せない響きだった。
「ほう、そうなのか」
「はい」
「その話を、聞かせてくれるのか?」
Lは俯きがちに一つ頷いた。
「7月11日、ワタリが僕を探してくれた前の晩のことです」
私は肘掛け椅子に座り直した。Lは私の横で三角座りをして、炎をその瞳に宿して淡々と降り続ける雪の結晶のようにぽつりぽつりと話し始めた。
私の知らない、一人の少年と、一人の青年の物語を話し始めたのだった。