Last Chapter
夢小説設定
この小説の夢小説設定Guardianの設定を引き継ぎます。
◇Lより主→Guardian主人公。元死神の人間。
◇ワイミーズより主→Guardianの間、夢を見ていた人間。記憶喪失の為、詳細設定はなし。
色々(本編)あって二人はまったく同じ外見です。
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◆Afterwards Last Chapter
-監視-
東応大学のキャンパスは静まり返っている。午前の講義に生徒達が出席する中、二人の青年が話をしている。
――こちらに気付く気配はない。
俺は息を潜めたまま、話に耳を傾け続ける。手元のICレコーダーが、彼らの会話を記録してくれる。
「……君は、キラに復活してほしいのか?」
「うん」
「その話を僕にするために、ここまでの計画を?」
「うん……ってこれ、『それだけの理由のために人を殺したのか』って咎められるパターン? そういうのは僕、あまり好きじゃないなぁ。キラの復活は僕の悲願だ。命そのものと言ってもいいくらい必死なのに、そんなありきたりな台詞で否定されるのはいただけないんだ」
「そうは言わない」
おどける桜葉愛蔵に対して、夜神月は冷静だった。
「人の命の価値に関して、僕はもう何かを言う資格はない……ただ、分かっていたはずなのに驚いたよ。……それほどまでにキラは、人を突き動かす存在だったんだな」
「あ、当たり前じゃないか! 貴方がいてくれたから、僕は――」
「…………」
何を言うのか、と目を細める夜神月に気圧されたかのように、彼は力なく口を噤んだ。
「い、いや……なんでもない……とにかく、まずはネタばらしをさせてもらおうかな」
桜葉愛蔵は座りなおすと、大きな眼鏡を正す。
「僕は近くに住んでる知り合いに自殺をさせて、自分の家に警察官が聞き込みに来るように仕向けた。それが雨口臨という捜査官だった。彼を操った上で、あらかじめ死因を書いたノートのページを一冊渡して、今度は大学の近くの交番勤務の巡査の名前を書かせた
。その《交番のおまわりさん》が怪しい爆破予告の聞き込みと称して、キャンパス内の生徒の指紋を集めて回ったんだ。予告状を実際に手渡して、『何かおかしいところがないか、気付くことはあるか?』って尋ねながらね」
滔々と語る桜葉愛蔵の話を、夜神月は静かに聞き続けた。俯いていて、その表情まではよく見えない。
「Lに訊きつけられれば、いずれ貴方は僕の名に辿り着くと思っていた。だから、貴方とこうして話ができた今、僕の目的はほぼ達成されたと言ってもいい。人質の殺しだって今すぐやめても構わない」
「キラが復活しなければ人質を殺す、という意味か?」
「いや、脅すつもりはない。僕はこうして直接貴方と話ができただけで満足なんだ。ましてや、たった五十人の命を人質に取ったところで、キラが以前のように数千人と犯罪者を裁いてくれるとも思っていないしね」
「なら、どうやって」
「――『どうやって僕を説得するつもりだ』かな?」
「…………」
「あはは、分かってるよ。世間的には逮捕され死刑が執行されたと言われているキラは、しかしまだ生きている。だが正確には、貴方がキラを《止めただけ》のことだ。止めるだけの理由がある以上、ただ復活してくれとお願いしたとことで、そう簡単にイエスと言ってくれるはずもないよね。お察しの通り、僕は貴方を説得するために来た」
必要以上に饒舌に語る桜葉愛蔵には、どことなく空と同じく、遠く別の世界を見ているような雰囲気を感じる。夜神月は訝しむように彼を見返した。
「君は一体、何が言いたいんだ」
「僕が貴方を助ける」
再び、彼はベンチを立った。軽薄な笑みは消え、その場に膝をつく。
「キラは確かに一度諦めた――でも、もうその必要はない。誰もキラを止めることは出来ない。誰も、キラの邪魔はしない。今度こそキラは新世界の神になる。
僕が、貴方を守るから」
耳を疑った。
キラを守る、だと?
「…………」
沈黙する夜神月は一体、何を感じている? Lが相棒と認め、信頼する人物――得体のしれない男の言葉に、彼は一体何と答える?
――それに。
背後に感じる、別の気配。
さ っきからずっと付き纏う影があることには気が付いていたが、それがより近づいてきている。携帯電話の画面を消し、暗い液晶に背後を映し出す。
白く、歪に丸められた包帯のような身体――顔はなく、口のような穴がぽっかりと開いて、目のようにこちらへ向けられている。
がさがさと音がした。
包帯が擦れるような音を聞きながら、暗い画面で《彼》の動きを見守る。胴体の包帯をかき分けるようにして取り出したのは、一冊の白い――ノートだった。不器用な動き方でそれを開く、反対の手にはペンを持っている。
『誰だか知らないけれど、愛蔵の邪魔は許さないんだからね』
小さく、掠れた声が聞こえてきた。
『って僕の声は聞こえないのか。んー、あとちょっとで愛蔵の願いが叶うところなんだから、僕だってこれくらいはお手伝いしなくちゃ。なんたって忠実な友だからね。留守番しろって言われてたって、力になりたいものなのさ。単独行動だよ、お前と同じだ』
単独行動……どうやらお前というのは俺のことで、独り言らしかった。つくづく不用心な奴らしい。次いで、ノートの上をペンを滑る音までが聞こえてくる。
一文字、一文字、覚束ない手つきで。
『えーと、なんて読むのかな。まぁいいっか。M・I・H――』
Mihael Keehl
俺の名前――そうだ、それでいい。