Chapter 1
夢小説設定
この小説の夢小説設定Guardianの設定を引き継ぎます。
◇Lより主→Guardian主人公。元死神の人間。
◇ワイミーズより主→Guardianの間、夢を見ていた人間。記憶喪失の為、詳細設定はなし。
色々(本編)あって二人はまったく同じ外見です。
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Afterwards -Chapter 1-
◇少女とNとM
先を行く月君と竜崎の背中を眺めながら。
私はゆっくりと後をついて歩いた。ケーキを食べに行くということだったけれど、結局は竜崎が月君と久しぶりに会えてもっと話したいと思っているだけなんじゃないかと思う。
「あれ、どうした夕陽?」
「あ、ううん、なんでもない」
一歩引いて歩く私を、月君が振り返る。さすがだなと思う。
「夕陽、具合でも悪いんですか?それならワタリに連絡を入れるので一足先に……」
「う、ううん、本当に大丈夫ですから!」
私は手を振って誤魔化した。
二人は本当に優しくて、私を気遣ってくれる。久しぶりのはずの月君でさえ、三人並んで歩くことを当たり前のように考えてくれている。
「……そうですか。それならいいのですが。」
指を咥えて、なんとなく納得しきっていない様子の竜崎に私はうんうん、と念押すように頷いた。本当に具合は悪くない。ただちょっと、一歩引いて二人の姿を見てしまっただけだ。
私だけ、なんだかやっぱり借り物のような違和感を、申し訳なさを、そして疑問を感じてしまったのだった。
__ここにいるべきは、【私】でいいのかな?と。
「夕陽」
名前を呼ばれると同時に、差し出されたのは竜崎の手。きっと心配して手を繋いでくれようとしているのだろう。
「あ、いえ、本当に大丈夫なので。ここだと恥ずかしいし!」
「………そうですか。」
その優しさに答えるのがまた心苦しくて、私は元気だと言う代わりに笑った。竜崎はやっぱり納得しない様子で伸ばした手をポケットに戻した。
「……。」
「な、何?月君?」
「いや」
横で月君が私と竜崎を見比べていた。私がなんとなくそれに気づいて視線を送ると、月君は慌てて目を逸らした。
もしかすると違和感や気まずさというものは近くの人に移ってしまうのかもしれない。どことなく釈然としない気持ちのまま、私はそれ以上、二人に余計な気遣いをさせたくなくて、ちゃんと竜崎の隣に並ぶ形で歩いた。
「……すごい、ここが学生食堂?」
「あぁ、まぁ皆カフェって呼んでるけれどね。」
食堂は一番目立つレンガ色の講堂のすぐ脇にあった。小さなコンビニ程度の建物であるものの、屋外の席がいくつかあり、建物自体にもガラス張りのサンルームのような空間があり、「食堂」と呼ぶのが憚られるようなおしゃれな空間だった。
「これミサさんですね。」
猫背の竜崎が指さした先には【東応大ソフトクリーム】のポスターがあった。
「……あぁ、そうなんだよ。だからあんまりここには来たくなかったんだ……。」
いちごを背景に、ぺろりと舌を出したミサがウィンクをしていた。竜崎はその隣のポスターも長い人差し指で指し示す。
「その隣には清楚な高田さんの学内キャンペーンポスターが並んでいますね。」
「あぁ。言わなくてもお前に見えてるものは僕にも見えてるよ。」
竜崎の言う通り、隣のポスターはアナウンサーのようなポーズで姿勢よく微笑む高田清美の顔が並んでいた。月君は既に体の向きを変えていて、早くそこから立ち去りたさそうだった。
「恥ずかしがる必要はありません、月くん。」
「別に恥ずかしがってない。」
「ミサさんと清楚さんは元気ですか?」
速足で店の奥へと進んでいく月君を、竜崎が背中を丸めて同じく速足で追いかけていく。ちらりと見えた横顔がにやりと愉快そうに笑っているのが見えて、私はつられてすこし笑った。
「あ。」
自分も早く二人を追いかけよう、と思ったところで、高田清美のポスターのそのさらに隣の小さな張り紙が目に留まった。
それは新入生へ向けた案内だった。入学式が終わった後、一通りの必要書類の配布を別会場で学部ごとに行うと書いてある。
「わ、行かなきゃ……」
あと5分ほどで終わってしまう。
「場所は……あ、あれか。」
幸い、会場は並木通りを挟んだ向かい側の仮設教室だった。視線を上げた先に「新入生向け資料配布会場」と看板が立っていた。ここからなら、さっと行って帰ってこれそうだ。
どうせ1分とかからないだろう……そう思って私はケーキのショーウィンドウの前に立つ竜崎と月君を置いて、学生カフェを後にした。
並木道は学生が歩くことを目的に作られているものの、車が乗り入れられる造りにはなっている。今日も二台、車が止まっていた。一台はピンク色の小さなクレープ屋さんの車両、そしてもう一台は黒いリムジンだった。
「ワタリさんかな?」
竜崎がワタリさんに乗せてもらう車は、どういう仕組みか、ナンバープレートがころころ変わるのだ。かと言って、外から見てもウィンドウは黒くこちら側が反射するだけで、運転席に誰が座るかを確認することは出来ない。
「気づくかな?」
私は、【新入生案内配布会場】に横付けするように停められたそのリムジンの運転席の近くを通りながら会場に向かった。もしも中にいるのがワタリさんなら、声を掛けてくれるかもしれない、と思ったのだ。
しかし、実際は違った。
「__透間 空か?」
背中に固い感触がして、耳元から低い声で名前を呼ばれた。
「声を出すな。目立つ動きをしたら……分かるな?」
脅しだった。
どうやら後部座席に意識を取られすぎていたらしい。背中に当たる感触は間違いなく、この状況においては拳銃だった。
学生で賑わうキャンパスのど真ん中で、白昼において、私は自然にさりげなく、堂々と脅されたのだった。
「っ__!」
声を上げようにも、キャンパスのど真ん中だ。背中には抗えない拳銃、それに彼らは、竜崎達以外に知り合いのいない私の名前を知っている。考えられるのは、Lに関係する人間か、あるいは何らかの犯罪組織か。
「……はい。そうです。」
私はおとなしく肯定する。袖の中に隠されているのか、背中には固い感触が押し当てられ続ける。
「……そのまま後ろを見ろ」
「後ろ?」
言われたまにゆっくり振り返ると、後部座席から白い手がひょいとでて手招きのような動きをしていた。後ろからの圧力を受けつつも、私は注意深く、車内の人物の姿を確かめようと近づいた。
「い、いやっ__」
後部座席が内側から開き、背中をぐっと押され、中からは引っ張られ、私は座席に倒れこむように車内に押し込まれた。冗談じゃなく、それは誘拐とも拉致ともとれる強引なものだった。
それでも私は、声を押えた。
__L、月君……!
おいてきてしまった二人にどうにか助けを求められないか考えながら、そういえば携帯は内ポケットに入っていたはず……などと考えて顔を上げ、私は自身の動きを止めた。
「え……どうして……?」
驚き目を見開く私の背後で、ドアがばん、と乱暴に閉められる。銃で自分を脅していたはずの人物が乗り込んできたのだろう。
「貴方たちは……」
しかし、私の意識は、彼らが誰なのかということに縛り付けられた。今、目の前にいるのは……
広いシートの上で寝て起きてきたばかりのように白いパジャマを着崩し、片膝を立て、髪の毛をくるくるといじる少年。
「ニア……」
「はい。お久しぶり……ではないですね。一昨日ぶりです。」
「………。」
一昨日。それはイギリスを発った日のことだ。冷静な少年の姿にあんぐりとしつつ、背後を振り返る。どかりと座り込んだ体制のまま鋭い目つきでこちらを睨み返すのは、やはり金髪の少年だった。
「………なんだよ。」
「……メロ……。」
そこにいたのは、イギリスのワイミーズハウスで出会った二人の少年、ニアとメロだった。