L Christmas !
あなたの名前は?
この物語について*短編
*連載関係ない短編も含まれます
*基本恋愛要素ありor 悲哀あり
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「犯人はこの中にいます」
12月24日、クリスマスイブ。
そんな名探偵のようなセリフを堂々と言い放ち、背中を丸め、指を咥えて周囲を睨むのは、世界の切り札であり名探偵、Lだった。
「はぁぁ?犯人ってなんのこと?」
真っ先に不快そうに立ち上がり、声を荒げたのは現役のモデルでありアイドル、弥海砂だった。
Lは彼女を一瞥し、なにも言わずに周囲を観察する。「犯人の側から情報を漏らすはずだ」という考えがあるのだろう、と私は遠巻きにその風景を眺めながら思う。
「……そうよ竜崎。そんな推理小説のように立ち振る舞ったところで誰も死んでないんだから、皆、何が起きたのかちゃんと知らせないと付き合いきれないわ」
テーブルに向かい、コーヒーを持ち上げながら怠慢そうに息を吐くのは元FBI捜査官、南空ナオミだった。彼女のいう事は最もである。デコレーションとケーキで埋め尽くされた室内は、クリスマスパーティーそのものだった。そして誰一人として死んでなどいない。
Lは咥えていた指をポケットに持っていき、ゆるりと彼女へ顔を向けた。
「南空さん」
「何かしら?」
「今回の場合、もしかすると私が死んでいたのかもしれません」
不穏な台詞に対し、しかし南空はあきれ顔だった。
「……あぁそう。」
彼女の背景でクリスマスツリーがちかちかと点滅する。
「どうしてこんな状況で貴方が死んでいたかもって事のなるのかさっぱり見当つかないけれど。」
Lは毅然として彼女を見返した。
「Lの大切なものを奪うということは、いずれ命をも狙いにかかる可能性があるからです。下着泥棒がストーカーとなり拉致監禁や殺人へとエスカレートするように、今回の件を見過ごすことは出来ません。」
「つ、つまり竜崎、下着が盗まれたんですか?」
「松田さんは黙っていてください。」
「っていうか竜崎も履くの?」
「………ミサさんも黙っていてください。」
若干、その質問の後に間があったことが引っ掛かりつつも、私は皆の会話に耳を傾け続けた。
「竜崎。……勝手にケーキを食べたのは誰だって話だろ?」
「はい。流石です、月くん。」
もったいぶるように探偵役を演じるLにしびれを切らし、月君が現在の状況を確認する。Lは要するに、食べようとしていたケーキがなくなっていた件について犯人捜しをしているのだった。
「…………すごくどうでもいい話ね。」
「南空さんの場合はバイク泥棒だと思ってくだされば結構です」
「ですがバイクは食べられません。」
「…………。」
至極真面目な顔で反論するナオミさんだった。
Lはナオミさんを睨むと、再びその場にいた全員をぐるりと見まわした。
夜神月、弥海砂、南空ナオミ、松田桃太、そして蚊帳の外にいるのは私ことシアンと、ワタリさん。
「今日、皆さんがここに集まったのは、クリスマスだからです。クリスマスパーティーだからです。事件の捜査の為ではありません。」
クリスマスパーティー。
その単語からイメージできる以上に、ホテルの客室は所せましとスイーツが並べられている。ケーキがホールで数種類、クッキーやビスケット、チョコレートのほかにもカットフルーツやジェリービーンズ、ジンジャーマンやシュガーケーンもクリスマスの装いでかわいらしく並んでいる。
ちなみに、お菓子の家は私の自信作だ。
「故に」
ジンジャーマンをひとつ手に取って、Lが客室と廊下を出入りするためのドアを指さした。
「Lの顔を知る皆さんは、部屋を出入りするにはワタリか、シアンか、私の許可を取らなければいけません。つまり、密室です。」
密室殺人の状況説明のように大真面目に説明するLだった。
あきれ顔のナオミさんを置いて、ミサや松田さんは雰囲気にのまれてしまっているか、緊迫した状況で言葉を失う。そのなかで一人、月くんだけが「ふふん」と楽し気に頬を緩めた。
「面白いじゃないか。それで、食べられたケーキは、どんなものなんだ?」
「…………どんなものだと思いますか?」
おお、と私は二人の様子に感心する。なんだか駆け引きが行われてそうだった。
「そうだな……」
月君がケーキビュッフェ並みに埋め尽くされたデスクに視線を走らせる。
「ここに並べられるようなケーキではないことは確かだ。」
サンタの乗ったショートケーキでもなく、ブッシュドノエルでもなければ、フルーツの乗ったタルトでもない。
「言い換えれば、自由に食べることができるケーキであり、いつでも食べられる、ホテルのラウンジでも入手できるごく普通のケーキ……そんなケーキをLだけが裏で一人で食べる【必然性】がない。」
「…………。」
試すように、月くんの推理をに注意を向けるLは、しかしシュガーケーンを咥えているせいで緊張感があるのかないのかちぐはぐな印象だ。
「並べられないケーキ……例えば食べかけ。」
ここまでの推理はあっているか、と確認するように、月くんは腕を組んでLを見る。Lはそれをうけて薄く笑った。
「なるほど。私が食べられてしまったケーキは食べかけであると、そういう事ですね?」
「ああ。だが、普通の食べかけではない。それだけでは【今日】つまりクリスマスイブに食べる必要はないはずだ。それに、お前はケーキを中途半端に食べ残したりはしないんじゃないか?」
「……面白いですね。ぜひ、続きを聞かせてください。」
「食べかけのケーキ……それも【あえて残す必要があった】もの、それでいて、他にもケーキが並んでいる状況で、クリスマスイブである今日食べることに【必然性】があるケーキがあるとすればそれはただ一つ……」
勝ち誇ったように、月くんはLににやりと笑いかける。
「__【シュトーレン】だ。」
「なんなんでしょう、あの状況……」
「ほっほ、楽しそうなのでやらせておきましょう。」
「でも、私……」
私とワタリさんは、そんな推理劇を外から見ていた。ワタリさんは終始、孫でも見るように目じりを下げてにこにこしている。私は、放っておいていいのか、その輪に入った方がいいのか微妙な気持ちでいる。
__だって、シュトーレン事件(仮)の真相を知っているのだから。
「シアンさんが気にすることではありません。よくあることですから。」
「……そういうものなんでしょうか。」
「ええ。」
「それにしても、シュトーレンなんてケーキ、私初めて知りました。前からフルーツケーキだと思ってました。」
「そうですね、日本ではまだメジャーではないかもしれませんね。私も、Lにはクリスマスの訪れを知ってほしくて出しているだけですからね。」
クリスマスの訪れ、という言葉が優しく胸に沁みた。
シュトーレンは、ひとつのパウンドケーキ大のケーキでありながら砂糖を多く含んでいるために賞味期間が長く、二週間から一か月ほどかけて薄くスライスし、クリスマスまで毎日食べるケーキだった。
「……そうですね。Lには、普通に昼夜なく捜査をしてたら、季節とか曜日とか、そういったイベントは遠いものになっちゃいますもんね。」
家族と祝うか、友人と祝うか、恋人と祝うか。
そんな風に世間では華やかに盛り上げられるイベントは、Lにとってはどういうものなのだろう。案外、なんとも思っていないもかもしれない。
「クリスマスとLかぁ……。」
きっと、今日のように皆を招いてパーティーを開くのを承諾してくれたくらいには嫌いではないのだろう。でも、好きでもない、そんな感じなのだろう。それでもやはり、存在としては遠く、意識しなければ通り過ぎてしまうようなものなんじゃないかと思う。
祝うことも、ときにはふさわしくないタイミングかもしれない。同時にいくつもの事件を抱えていたら、それは仕方のないことだ。
「……私、なんか今更すごく嬉しいです。皆がLのもとに集まってくれて、こうやって、事件に関係なく祝う事が出来て。」
「ええ、そうですね。」
しみじみと見つめ、一人で勝手に納得する私を、いつの間にかワタリさんは悪戯っぽく見つめていた。大分遅れてからそれに気付いた私は、焦って「は、はい!」と見上げた。
「どうしたんですか、なんで笑ってるんですか、ワタリさん!」
「いえ。皆さまが集まったのはいいですが、そのあとシアンさんはどうされるつもりなのかな、と思いまして。ですが、私には関係ない事ですね。」
あんぐりと何も言えずに、その意味をのみこもうとした私に、ワタリさんはほほほ、とサンタクロースのような笑いをして話を切り上げる。私はあわあわと言い返そうとする。
「…………あ、後かたづ、」
「後片付けなら私とルームサービスで手は足りてますよ。」
「ぐぅ……」
つまりはLと二人きりでクリスマスイブということだった。
シュトーレンなどどうでもいいくらい、それは大事件だ。
「__ああもう、私、ちょっと名乗り出てきます!」
「おや、そうですか。」
自分の感情でいっぱいになってしまった私は、シュトーレン事件(仮)の推理をほぼ二人で進めるLと月君の前に躍り出た。
「L!月君!それ、シュトーレンが食べられちゃった話……ですよね?」
「ええ。まさにそうです。」
「あぁ、そうだ。クリスマスまで少しずつ食べるべきケーキを、今朝、食べた者がこの中にいる。」
まるで捜査の最中に飛び込んだほどに二人の表情は真剣だった。なんだか月君までがLの雰囲気にのまれてシリアスモードだった。
「あぁ、だから犯人はこの中にいるって言ったのね。」
私は切り出すタイミングを考えつつ、相の手を入れる。「この中」と言われた残りの三人__ミサと、ナオミさんと、松田さんは椅子に座ったまま大人しくしている。
「ええ。そうでなければ犯人はシアンかワタリという事になりますが、その場合、今朝まで食べなかった理由がありません。今日でなくとも、昨日や一昨日でもいいはずです。」
「……。」
「ですので、今朝ここに来た人物が何も知らずに食べたか、あるいは悪意をもって食べたか、どちらかに可能性は絞られます。」
「な、なるほど……」
本心からの「なるほど」だった。真相がどうあれ、そうやって論理的に突き詰めていった結果、犯人が月君を含む四人に絞られたという訳か。
月君は椅子に座った三人を見回し、竜崎に向き直った。
「竜崎。ミサはまず除外していいだろう。ミサは甘いものを控えている。お前の食いかけを食べるわけがないだろう?」
「……だとすれば尚更怪しくなります。甘いものばかり出てくることが予想される今日のパーティに来たという目的が、私への嫌がらせという考えに至りますが……。」
「……至るわけもないだろう。ミサだけでなく、僕たちもお菓子やケーキ目当てでこのパーティに来たわけじゃない。……お前、本気で言ってるのか?」
「推理はいつでも本気です。」
「っお前……。」
月君がぐっと拳を自分の脇で握りしめる。
「……L!」
私は間に入って、Lの袖を掴んだ。
Lが、皆がここに来た理由がスイーツ目当てだなんて思っているはずもない。それを許せなかったのがいつもどおりの月君だ。
でも、それに対して「本気か?」と尋ねた月君に、Lは不器用にも紛らわしい言い方を返してしまっている。本気、というのはきっと、言葉通りの文字通り「推理は」だ。
「__私なの、L、月くん!みんな!」
はっきりと言った。
Lは、袖を持った私を驚いた様子で見降ろし、ぽつりと「シアン?」と言った。
「__とはいっても、食べちゃったわけじゃないんです。ぶっちゃけ、賞味期限……いえ、消費期限だったんです。」
私はLに、そしてみんなをぐるりと見まわして頭を下げた。
「お騒がせしてごめんなさい。昨日までで消費期限が切れていたので……そしてカビを発見してしまったので、今朝、私がびっくりして捨ててしまいました。」
頭を下げていると、ぽふ、と頭に重みが乗った。横目で見上げるとLが仕方なさそうに、それでも優しい表情で私の頭を撫でていた。
「そういうことでしたか。」
撫でられっぱなしも恥ずかしいので顔をおこすと、腕を組んだ月君が珍しく、むすっとしてLを睨んでいた。
「…………すみませんでした。」
月君に対して謝ったのはLだった。
Lは目を伏せながらも珍しく、むすっと、というよりは気まずそうに小さな声で謝った。
「私は……ワタリ意外とは初めて……こうして誰かとクリスマスを祝います。…………皆さん、友人として来てくれてありがとうございます。」
それは小さな声だったけれど、言い終わる頃には皆が自然と様々な笑顔を浮かべていた。最後に月くんがLの肩をばんと叩いて、
「何言ってんだよ」とだけ言って照れくさそうに目を逸らした。
「そうですよ竜崎、水臭いですよ。局長たちだって家族との約束があっただけで、「竜崎によろしく」って言ってたんですからね!」
「そーそー!ミサも今日はオフ!ケーキ食べるよー!まぁ、シアンちゃんに会いたかったからっていうのもあるけれどね!」
松田さんやミサが立ち上がってケーキを自分のお皿に取り分ける。いつのまにかクリスマスソングがBGMで流れていて、なんだか立食パーティーのようになったところで、竜崎は素手でクッキーをいつも通りにつまんでいた。
「シアン、このクッキーは手作りなんですか」
「うん。」
「……泣いてますか?」
「う、ううん、なんか感極まっちゃって。ね、ナオミさん。」
目ざとく指摘されてしまったので、私は苦し紛れに、誤魔化すように横にいたナオミさんに笑いかけた。ナオミさんは凛として綺麗に笑うと、私と竜崎と、二人にしんみりと言った。
「……むしろ呼んでくれたこと、こちらがありがとうと言いたいわ。もう貴方たちとは事件が終わってしまえば二度と会えないものだと思っていたから。」
捜査員や捜査協力、証人や容疑者、ましてや拘束監禁や監視の名目ではなく、ただ友人として集まれたパーティは、奇跡のように思えた。
それはクリスマスイブだけの奇跡か、それとも……
「シアンちゃん!そういえば元旦なんだけれど、初詣、皆で行こうよ!Wデートって感じで!」
太陽のような笑顔でミサが私の手を取る。その笑顔はそのままやれやれと首を傾げる月君と、まるで聞いていなかったようにサクランボを咥えたLを見る。
「ねー、ライト!」
「あ、あぁ。粧裕の合格祈願が終わってからな。」
そっか、粧裕ちゃんはもう受験なんだ。私はミサの真似をしてLと腕を組んでみた。Lは目を丸くする。
「うん。行こう!ね、L!」
「ええ。構いませんが。」
奇跡なんてもう存在しない。ただの日常だ。日常は終わらない。
パーティーは少人数ながら盛り上がった。その後はちょっとだけ相沢さんや模木さんが顔を出して、忘年会のようになったクリスマスパーティは、お酒も入った。
結局Lと月君は、一度だけ取っ組み合いの喧嘩をした。「一回は一回です」と聞こえたものの、傍から聞いていてもどうして殴るような流れになったのかはまるで分からなかったし、ふたりはけろりと仲直りをしていた。
グラスがいくつか割れてしまったけれど、それは先にワタリさんが言っていたように、あっという間にルームサービスの人によって綺麗になった。
「……そんな顔しなくても、私は痛くありません。」
「だって心配なんだもん……喧嘩する時は割れ物がないか気をつけてね。」
「そんな余裕ないです。」
「…………。」
今は、別室で私はLの頬にガーゼを張っていた。喧嘩の時に切ってしまったのだった。強がるLを手当てし、私は立ち上がろうとした。
「はい、これでよし!」
「シアン」
「っわっ」
腕を引っ張られて、私はLに抱えられる体制でソファに崩れる。
「……楽しかったですね。」
後ろから前に腕を回されながら、呑気で機嫌のよさそうな声が聞こえた。ちょっぴりいちごの香りがした。
「うん、楽しかった。」
「私、嬉しかったです。」
「…………私も。」
例えば一年前。キラ事件の最中でも、五年前でもいい。こんな日が来るなんて想像もしなかったし、Lもそうだろう。
回された腕に自分の手をのせて、その暖かさを感じた。窓の外には、ちらちらとライトに照らされて振る雪が見えていた。室内の装飾が反射して、緑や赤と綺麗な光が夜空に浮かんでいた。
一年前の私達は、あるいは、ひとりぼっちだったLは、こんな夜をきっと夢にも見なかったし、願う事もなかっただろう。
「シアン」
「うん?」
「私が初めてもらったクリスマスプレゼントは、8歳の時、ワタリからもらったものでした。……笑わないで、いえ、むしろ貴方には笑って聞いてほしいのですが……」
「……なんだったの?」
「捜査資料です。」
「捜査資料?」
予想外の答えに、私は笑うまでもなく静かに聞き返すと、Lは穏やかに「そうです」と答えた。
「ワタリが預かり、リボンを付けて私に手渡されたそれは大きな封筒でした。」
私は振り返る。Lは遠くの過去を見るように、窓の外へ視線を投げていた。
「差出人は、7歳の時にワタリと初めて解決した事件__そこで関わったハンプシャー警察からでした。
『彼が望むならば我々は情報の提供を惜しまない』という手紙がついていました。私にはこれ以上ないプレゼントでした。」
「……そうだったんだ。」
「ええ。嬉しくて、一晩中その資料を眺めていました。……まぁ、ワタリの話で、私はそこまでは覚えていませんが。」
「ふふっ」
小さなLと、その始まりを垣間見た気がして、私は思わず頬を緩めた。
__「彼が望むならば今後も」
それは大きな選択だっただろう。でも、Lは迷うことなく警察への捜査協力への道を選んだ。
その選択をしたLにも、途方もない選択をLへ託したワタリさんにも、私は想いを馳せずにはいられなかった。どちらにしても、もう昔の話で、思い出話で、もしかしたらLが言うように、笑い話なのかもしれなかった。
「あははっ」
「……まだ笑いますか。」
「だってL、くすぐるんだもん!」
最初に笑ったタイミングから、Lは私の前に回したてでこちょこちょとわき腹をくすぐっていた。しばらく我慢していた私も、こらえきれなくなってきた。
「はいそうですね。」
「そうですねじゃなくて、やっ、あはは、もう、止めて、やー!」
ひとしきりばたばたとその手を逃れるように身をよじった私は、ようやくLの両手を押えることに成功して息をついた。
「……ところでシアン」
「はい?」
息を整えつつも、Lがもうくすぐってこないことを確認して、私は至近距離ながらも狭いソファーの上で彼とに向き合う形に座りなおす。
「さっきまでは友人と過ごすクリスマスでした。」
「?はい。」
「この後も、そうですか?」
「…………。」
その言葉の意図するところが分からなくて、でも一秒、二秒……そして分かってしまって、私は思考停止した。
__「この後も、そうですか?」……友人でなければ、恋人……。
__フリーズしました。
「か、関係ない……」
自分の意志とは関係なく、口が勝手に動いていた。
Lは指を咥える。
「友人とか、こ、恋人とか、関係なく……」
途中で恥ずかしくなって、俯いたままLの胸に顔を埋める。それで、彼がどんな表情をしているのかはもう見えなくなってしまった。
「クリスマスも関係なく、ただ、」
言いかけたところで、Lの手がそっと私の顔を上げさせた。
顎の下に手が添えられたまま、あとちょっとでぶつかってしまいそうな位置に、Lの優しく微笑んだ顔がある。
「一緒に居てください。シアン。友人も恋人も、クリスマスも関係なく、私はシアンと一緒に居たいです。」
見透かされてしまった心を読み上げられて、私は胸を押えた。
「いいですか?」
その一言に、私はなんと答えただろう。目の前に白いシャツがあって、そのずっと後ろに小さなクリスマスツリーがある。大きな目は黒くて、深くて、私は逃げられなかった。
「好きです。シアン」
__明日の朝、Lの枕元にプレゼントを置かなきゃ。どうやっておこうかな。
……そう思いながら、私は目を閉じた。