第三章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆私の知らないストーリー
2004.4.18
捜査本部 ホテルの一室
「みつからない…」
私は焦っていた。
何度も夢の中で物語を読み返し、今日、何が起きるかを私は把握していた。
2004.4.18 17:59
さくらTVがキラから送られてきたビデオを放映する
宇生田さんが第二のキラに殺されてしまう。
私は、FBIの12人を救うことができなかった。ナオミさんについては、竜崎の助力も合わさって救うことができたけれど、あれだって、一度は失敗しかけた。
次こそは、正義の側にいる人間を失いたくない。
今日は、テレビ放映の時刻ぎりぎりまで対策を練ろうと思っていた。
竜崎に朝食やおやつとしていつもより多くスイーツを運んだ後、私はずっと部屋にこもりっぱなしだった。夢を見て例の本を読み返したり、浮かぶ限り、自分の取りうる行動をシュミレーションしてみたが、どれも“駄目”だった。
「だめだ…やっぱり、私は……宇生田さんを“止めちゃだめ”なんだ……」
宇生田さんの死は、「このキラは顔だけで人を殺せる」という事実をもたらし、その事実をもって、竜崎は警察に統制を要請する。
ニュースキャスターも名指しで殺害されていくが、キャスターたちは名指しであったうえに、ネームプレートを掲げている。
結局は、駆け付けた捜査官の死亡という事実しか、トリガーになりえない。
だからといって、「顔を見せてはいけない」という指示がなければ、竜崎の言うように多くの警察官が自分の正義感をもって駆け付け、大惨事となりかねない。
もちろん、私が伝えるわけにもいかない。
__だめだ、もう時間になる……。
窓の外はすっかり暗くなってしまっていた。パソコンのモニターだけが部屋を照らし、時刻は17:50を指している。
私は無理矢理、身体をベッドから引き剥がした。布団のなかで竜崎のように丸くなって考えても、だめだった。
タイムアップ。
__竜崎に共有出来たら、どんな解決策を提示してくれただろう。
諦めるつもりはない。ぎりぎりまで考える。考えるけれども……
「レイ=ペンバーの婚約者だった、南空ナオミ。彼女から証言を得ました。近々、こちらに合流することになるでしょう。」
「婚約者…合流?一般人…ですよね?」
「彼女は元FBI捜査官です。」
重い足取りで捜査本部に入ると、竜崎、松田さん、相沢さん、宇生田さんが一つの机を囲んで話をしていた。ブリーフィングのようなものだろう。そろそろ月君に対してバスジャックの件を明かし、ナオミさんと合流する段階なのかもしれない。
私はそれを横目に見ながら、テレビ前のチェストに座った。
「お、夕陽、具合は良くなったのか?」
と、声を掛けてくれたのは宇生田さんだった。体調不良と言ったわけではなかったけれど、部屋から出てこなかった私を心配してくれたみたいだった。
「あぁ、はい。もうよくなったので…大丈夫です!」
「そっか、無理すんなよ。」
「はい!ありがとうございます。」
快活な気遣いに笑いかけてから、私はテレビの時刻表示を見る。あと4分…。番組はさくらテレビではない。別のチャンネルのニュース17という番組だった。
人の命について、まだ私は重く受け止めきれない。
人間としてはまだまだ欠落していると感じる。「こんなの違う!」と怒ることができない。それこそ他人事のように。
ただ、悔しい。
空のように、竜崎のように、ナオミさんのように、
月君でさえ、自分なりの正義を持っているのに。
正義になりきれない自分に、苛立ちすら覚える。
「竜崎!」
ワタリさんが駆け込んできた。皆が一斉に振り返る。
「どうした?」
「さくらテレビを…大変な事に」
息を荒げるワタリさんに、その場の誰もが非常事態を感じ取ったようだった。竜崎も言葉を崩している。
チャンネルがさくらTVに切り替わったときには、既にキャスターが番組の趣旨をアナウンスしていた。
『つまり私たちはキラの人質であると共に報道人の使命を受け、この報道をするものである。決して嘘や興味本位でこのテープを放映するものではないということをご理解ください』
私は立ち上がって、輪から出るように皆の後ろへ下がった。松田さんや相沢さんが口々に「キラの人質?」「なんだこれは?」と、状況を飲み込もうとテレビににじり寄った。
__時間がない。時間が……
『四日前、当番組ディレクターに送られてきた4本のテープそれは間違いなくキラから送られてきたものでした。一本目のテープには先日逮捕された、町葉青一・青次両容疑者の死亡日時予告が入っていました。そしてその予告通り昨日19時にこの二人が心臓麻痺で亡くなったのです。こんなことはキラにしかできない。これはキラから送られてきた物だと私達は判断しました。』
「ま、またヤラセじゃないのか?……」
「まさか…。いくらなんでもこんな悪質なヤラセは…」
宇生田さん、松田さんが反応し、竜崎はテレビ画面に張り付くように膝を抱えて座る。
『では5時59分です。ご覧ください。』
___始まってしまった。
『私はキラです。』
画面に「KIRA」と映し出され、ホラーじみた変成器音声が響いた。静まり返る捜査本部には、乾いて張り付くような緊迫感が漂う。その背後で、私は両手で体を抱えた。
『このビデオが4月18日午後5時59分ちょうどに流されれば、今は午後5時59分38、39、40秒。チャンネルを太陽テレビに替えてください。メインキャスターの日々間数彦氏が6時ちょうどに心臓麻痺で死にます。』
淡々と告げられる死刑宣告。
竜崎が「替えて!」と叫び、ワタリさんによってチャンネルが替えられる。画面は既にこと切れた日々間キャスターを映し出した。スタジオの背後からは電話の音と絶叫する声が行き交う。
「…チャンネルを戻してください。ワタリ、テレビをここへもう一台…いや二台」
竜崎の頭が揺れる。苛立ちを隠しきれないように爪を噛んでいた。
「チャンネル24に!…………キラが世界の人々に向けメッセージを流すと言っていたな…。この放送、止めさせないとまずい事になる!」
__“止めさせないとまずい”
竜崎のその一言で、捜査員が各々に行動しだした。
固定電話でさくらテレビに連絡を入れる相沢さん、携帯電話で局内の知り合いに連絡を試みる松田さん。
テレビからは絶え間なく入念に準備されたかのように、延々と不気味な音声が流れ続ける。
「だ…駄目だ。局のどこにかけても通話中…」
「局内の知り合いの携帯は電源が入ってない」
すべての光景が現実に起きているのに、まるで何回も物語を読み返す時のように、あたりまえに繰り広げられる。次に誰が何を言って、何が起きるか、分かる。
『これで私がキラだという事は信じて頂けたと思います。』
壁際まで下がって、私は考えた。なにも浮かばなくても、私は考えなくてはいけない。一人で、未来をしっている私が、独りでも……
だめだ。頭が回らない。世界が、視界が、見飽きた映画のように素通りしていく。目を開けても、何かを隔てたようにいま起きていることを正しく映し出さない。
__間に合わないなら、解決策がないなら
私は目を瞑った。体を抱いていた両手を、耳にあてる。
__やりすごせ。目を瞑って、耳を塞いで、何が起きても……すぐ終わるはずだから__!!