第三章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆師匠?
夜神さんが倒れた、次の日。
私はナオミさん__南空ナオミさんに一本の電話をした。
__「もし嫌でなければ、個人的な相談があるのですが」
と、おずおずと切り出す私に対して、「ちょうどいま寝過ごして起きたところだから」と、どうやら実家でのんびり過ごしていたらしいナオミさんは快諾してくれた。塞ぎ込んでいたりしなくてよかった、と安心しながら、私はあるデパ地下の一部のこじんまりしたカフェを待ち合わせ場所に選んだ。
私自身、もう位置情報ブレスレットはもうとっくに外してもらっていたのだが、それでも外部の人間とやり取りがあることをまだ竜崎に知られるわけにはいかない。行列必死の人気のケーキを仕入れる体で、あらかじめ権限を振りかざして予約を入れて置き、列に並ぶはずの時間をナオミさんと会う時間に使うことにしたのだった。
「_そう、夕陽さんは、記憶喪失なのね。」
「はい。竜崎に保護してもらったのが今の仕事のきっかけです。詳しくは言えないのですが、ほかにも事情がいろいろとあって。だから、ナオミさんみたいに、優秀ってことはないんです。」
かちゃかちゃとフォークやコップの音が鳴り響く店内で、私は自分のいくらかの情報を開示した。私の存在を「Lの後継者」あるいは「弟子」みたいに思われてしまっても、それはナオミさんにとって失礼なような気がした。
「…まぁ、いろいろあるわよね。私もエ、竜崎から突然メールが来たと思ったら急に“パソコンごと24時間以内に破壊しろ”と指示されたときは、頭に来たわ。」
そういういろいろですか…と突っ込みたくもなるが、ここは黙っておこう。と思った。物語の印象だと、というか少なくとも前回話した時まではLに絶対の信頼を置く人間、という雰囲気だったのに、今日は出会いがしらから真逆の感想だった。相当、頭に来たのだろう。
__なんにせよ、それ以上詮索されないのは幸いだった。
「はい、その…記憶喪失については、今まであまり気にしてこなかったのですが…いま改めてハンデを感じまして。その、経験とか、人の正義とか、そういうものがいま分からなくなってしまって…。」
そこまで言ってから、私は焦って、言い直す。
「あ、いえ違うんです。キラの思想がどうこう、ではなく…竜崎への気持ちは絶対です!が!その…人生経験が少ないことで、いろいろと実感がないというか…それがこんな事件の真っただ中では……」
そう。心が足りない。人の心が足りない。とりわけ死に関しては。
竜崎の正義は自分の正義だ、なんて開き直って受け売りをするにしろ、その正義ですら理解していなかったのだ。私は。
恐る恐る顔を上げる。
子供のような、凛とした、年上の女性とは思えない透き通った瞳がこちらに向けられる。
「それは記憶喪失とは関係ないんじゃないかしら?確かに経験や過去はその人間の信念を形作るとはいうけれど、だからと言って、全く同じ体験をした人は、同じ人間になるのかしら?」
「わ、わかりません」
無条件で、「同じ人間」とか「過去や経験」とか、そういったワードは私の弱点だ。文脈関係なしに焦らされてしまう。個人的な経験則で言えば、完璧に擬態できるのは外見だけだ。それも、覚えてすらいないのだけれど。
私は焦りを誤魔化すように紅茶をかきまぜた。
「ですので、折り入って今日は……今日は、竜崎の昔の事件のことを聞きたくて_その、機密とか詳細な情報が欲しいわけじゃないんですが…。」
「夕陽さんが個人的に、竜崎のことを知りたい、と。」
「はい。竜崎という人間の軌跡を、竜崎の正義を、知りたいんです。私は何も……知ったようで、何も、知らないんです。」
それこそ、目の前のナオミさんが外部にいて、自分が竜崎の近くにいるという状況そのものが申し訳なくなってしまうほどに、私は知らないのだった。
「構わないけど、ひとつだけ確認させて。夕陽さん、貴方__Lになろうと、その思考をコピーしたり、擬態しようとはしていないわよね?いちごジャムをまるごと飲み干そうとか、考えてないわよね?」
擬態、という単語にどきっとするが、ナオミさんがまさか私のことを知っているはずもなく。
__何の確認だろうか?具体的な人物が過去にいたような。しかも、すごくそれがナオミさんにとって身近な場所にいたような。そんな直感が働く。…気のせいだろうか。
再び、妙にまっすぐな、しかし今度は取り調べのような張り詰めた視線がゼロ距離でこちらに向けられる。
「め、滅相もございません。いちごジャムってなんですか…」
「そう、ならいいのだけれど。いえジャムのことは忘れて。」
否定すると、あっさりとナオミさんは自分の席にもどった。(立ち上がってこちら側に乗り出していた)
アメリカが長かったからだろうか。オーマイゴッドとでもいうように額に片手をあてて首を横に振るナオミさんがいた。
「そうね、竜崎の正義についてね。」
と、ナオミさんは過去をさかのぼるように、視線を宙に浮かせる。すぐに思い当たったのか、首を傾けつつ、
「オーケー。これはLに憧れてやまない私の可愛い後輩から聞いた話なのだけど…」
と、楽し気に語りだしたのだった。