第三章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
◆欠落、手のひら
二度も私は、怪しまれるような行動を__いや、でもまだ私は、なにも、致命的なことは__
「夕陽!」
竜崎が私の手を掴んだ。
「どうしました。」
「う、ううん、ちょっとくらっときただけ」
「心配する気持ちは分かります。とにかく向かいましょう。」
久しぶりに、竜崎に嘘をついた。と、月君の手前だからか、手を引く竜崎に思った。
竜崎、月君と三人で病院に向かい、夜神さんの面会をした。「本当に過労なんだろうな?」と問い詰める月君は、その後も強い正義感を語った。彼はキラである。キラであるから、演じている。と、そういう認識は自分の中で確固たるものであったが、「半分は本心なのではないか」と思った。
「キラを処刑台に送る」
高らかに宣言する月君を前にして、私は横目で竜崎を見た。彼も、月君の様子を観察してその本心を読み解こうとしているはずだ。だが、__これは本で読んだ心理だけれど__竜崎の言う「演技にしてはくさすぎる」、本当にそうなのだ。数回しか会っていないけれど確実に言えるのは、月君は、もっと自然な言葉を掛けられる人間のはずだということだ。
彼は、完全に演技に徹しきれず…であれば、夜神月という人間は…
竜崎は月君がキラ容疑者であることを明かし、夜神さんは月君に「竜崎はは本物のLだ」と伝える。この瞬間は、そういう場だと、私はただ黙って座っていた。
「キラだと疑われる者の気持ちになってみろよ!」
病院を去る際の竜崎との話の中で、月君がそんな捨て台詞じみたことを言う。
「……」
「……」
「最悪な気持ちになりました。」
「………」
私はなぜか、とぼけてみせる竜崎に後ろから隠れられていた。盾というか。親の後ろに隠れる子供の構図というか。真ん中で、私は文字通り板挟みだった。正面には怒り顔の月君がいて、振り返ると、私の肩の横から顔を覗かせる形の竜崎が至近距離にいる。私は何も言うまいと、照れたフリで地面のブロックを眺めていた。月君の前だと、それも作戦の一環なのだろうが、スキンシップが多い…。
「夕陽、夜神さんなら大丈夫そうです。よかったですね。」
その場は解散し、ホテルに戻る車内で竜崎が言った。私があまりに言葉を発しなかったから、夜神さんを心配しているのだと思ったのだろうか。実際は、知っているから何も言うまいと、口をつぐんでいた。そして、夜神月という人間の勢いに、圧倒されていたのだ。
「うん、よかった。」
「……どうしました」
「夜神月君って、あんな人間本当にいるんだって、ビックリした。正義感…っていうのかな。あの人がキラ容疑者…。」
口にしながら思った。私はたぶん、人間の強い感情というものに耐性がない。自分にとってなじみないものであったからか。どこか空想じみた存在だと感じていたからいたからか。あんなにも物語は読み返したはずなのに、私は有り体に言って「目の当たりにすると違う」と感じている。
「…ええ、私も驚いています。ですが、あれが夜神月です。キラである可能性はむしろ上がりました。」
「竜崎は、あの正義感について、どう思う…?」
「あの場での言葉は演技だとしたらクサすぎますが、反面、演技をしているからと言って、本心を全く持ち出していないということにはなりませんね。」
「……。」
言葉を無くす私の手に、竜崎の手が重なる。体温が伝わる。恋人ごっこでもなんでもなく、それはきっと、元気づけてくれているのだろう。優しさを感じた。
しかしその優しさと温かさを感じるほどに、私はその優しさから遠い場所にいるような心地だった。
__竜崎の言葉が、自分でもどうしたのだろうと思うほどに私の思考を乱していた。
それはつまり、あの言葉はすべて本心の可能性もあるということで、キラは善人であり、夜神月は悪い人間じゃないと…家族思いの人間だと、そういうことになるのだろうか…?
分かっていたことだ。物語で描かれた以上の言葉を聞いたわけでもない。何一つ知っていた未来と相違ないのに私は、なにを迷っているのだろう。
「…たとえキラが裕福な家庭の子供で、善意をもって、私利私欲のためでなく、家族のため、世界のために人を裁こうとしているのだとしても、それは神の裁きではありません。正義ではありません。」
竜崎の手に力が籠る。私は隣で体育すわりをする竜崎に体を傾けてみた。
そうすると竜崎は私から遠いほうの手で不器用に二、三度頭を撫でてくれた。私はその優しさも感じながら、「私は、このままじゃだめだ」と心の中で呟いた。
「ねぇ、竜崎…。」
「ん?」
「……テニス、カッコよかった。…嬉しかったよ。」
「ええ、格好つけましたから。」
竜崎の温もりが手のひらと、左の肩に伝わる。その顔を見てはいないけれど、きっと不敵に笑っているんだろうな。こうやって少しずつ物語が変わっていってくれたら、きっと…。暖かい。嬉しい。幸せだ。
あぁ、こんなにも色々な気持ちがちゃんと浮かんでくるのに、どうしてだろう。
大事な感情が欠落していた。
あぁ、私は本当に竜崎が好きだ。竜崎の考えが好きだ。
竜崎を守る。竜崎の思想と正義が、私の正義なのだと、
想えば想うほどに、思う。
私は竜崎のように世界を見られていないんじゃないか。
そして、夜神君を目の前にして思うのは、もっと別のことだった。
FBIを殺し、南空ナオミさんを手に賭けたかもしれない、そしていずれ竜崎を殺そうとする夜神月の行動は許せない。だが、もし__”それが無かったら”?
もしも、
もしも、__これだけは考えてはいけないことだと頭が警告している__
もしも__竜崎がキラに賛同していたとしたら、自分は月君をも許すのか__??
いや、ちがう。そうじゃない。
竜崎は、悪人を裁くと言って犯罪者を殺すキラのように、
___夜神月にも死をもとめるのか__???
二人は同じか?たまたまノートを拾ったかどうかの違いなのか?
竜崎と、夜神月は、何が違う?
分からない。人を殺すということ、人を裁くということが分からない。
分からない。正義が分からない。
分からない。キラも、Lも、
分からない。心も、記憶も足りない、自分には、難しすぎる。