第三章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆親睦
2004年4月7日
私は東応大学正門前にいた。
キャンパスへとつづく並木道を見ると、散りかけの桜が風で舞っている、とても良い風景だ。だけれど、私はその賑やかな学生たちのあふれるキャンパスではなく、その向かいの歩道へと視線を移した。黒いリムジンを背に、私は片手を上げる。
「いいお店でした。」
「あぁ、静かでいいだろ?」
はたから見たらつるむようにしてこちらに向かってくるのは夜神月君と竜崎の二人。今日は「親睦を深める」ということで、二人はさっきまで白熱のテニスの試合を繰り広げていた。その後は二人きりで話をする、といって__キラではないかという話を実際はして__すぐ近くのカフェに入っていたのだったが、場所も近いので、私は正門を目印に二人を迎えに来たという訳だ。
私は最近は、竜崎のセンター試験から始まって、こうした送迎にはかならず同伴するようになっていた。とくに役目があるわけではない。しいて言えば、付き添いそのもの、あるいは「夜神月の目に触れておく」といった思惑が竜崎の中ではあるようだ。
入学式では、月君が案の定自分のことを覚えていたので「あーっあの時の!」となったけれども、月君としては頭の中が「私はLです」と表明した竜崎でいっぱいだったのか、その場は深く追及されなかった。深く追及されないまま、今日が三度目の邂逅という訳である。
「おつかれさま。流河君、夜神君」
「はい。お迎えありがとうございます。ジャストタイミングです。こちらの話も終わりました。」
にやりと笑って竜崎が言う。私は、月君じゃないけれど、よく言うよ、と思った。
……だってワタリさんに無理言って車だけちょっと離れた場所に停車してまで、私がばれないようにこっそり人影に埋まってテニスをみていた時、絶対こっちみてにやりとしてたもん。それで勝っちゃったし。未来変わってたし。その場で「イエーイ!見てたよー!」って叫びたくなるくらい嬉しかったですけど。
「流河のテニスはすごかったよ。夕陽さんにも見せたかったぐらいだよ。…やっぱりお遊び感覚の僕なんかじゃ敵わないな。」
「先手必勝ですから。…夕陽、テストの結果、夜神くんには素晴らしい推理力があることが分かりました。今後はこちらに合流する可能性があります。」
「…そうなんだ!それはよろしくね、夜神君!」
負けず嫌いを隠しきれていない月君を受け流し、しれっと竜崎が話をすすめた。間が空きつつも、私はその流れに話をあわせた。すると、それを受けてか、竜崎は指を咥えながらゆるりと月君を振り返った。
「夜神君、ところで親睦が深まったということで、これは事件とは関係ないことなのですが…プライベートな話をしようと思うのですがいいですか」
「なんだよ」
「これはLの重大な秘密であるとともに、夜神君にしか知られたくない秘密なんです。__くれぐれも、秘密にしていただきたいのですがいいですか?」
とぼけた竜崎に、軽い笑いを挟みつつ「言わないよ、何?」と明るい声で答える月君。ここまで来てなんだ、なんでも話せよ、といった調子だ。
月君の受け答えは時々プログラム化された定型文に聞こえる時がある。私からすればそれなりにうさんくささを感じてしまうのだが、これは理不尽な非難なのだろうか。前提知識なく彼を見れば、本当に好青年なのだろうか。_と、他人事のように考えながら、きたる話題について私は当事者なのであった。
「実は夕陽とは、付き合ってます。」
”オホーッ!”
…一番大きなリアクションをあげるリュークは私にしか見えていない。いや、月君には見えてるのか。
自然に、私からすればそれははあからさますぎるほどにわざとらしく、竜崎は私の方に視線を送った。月君は意外にもきょとん、といった様子でこちらを見たが、「えーそうだったの?」と目を見開き声をあげたりはしなかった。むしろどうでもいい情報だ、と言わんばかりに脱力した。
「あぁ、そう…」
「夜神君ならもうとっくに気づいているかもしれない。もしも今後、夜神君が捜査本部に来たとして、鋭く指摘をされても困ると思って先に話したのですが。」
「ご、ごめんね夜神君。聞かなかったことにして、気にしないでいいから。」
私は精いっぱいのフォローを入れる。演技をするまでもなく、口調は必死さを帯びた。フォローは月君に対するものであるが、竜崎からのパスをつなぐものであったが…それ以上に自分自身の身が持たなかったという側面が大きい。もっと冷静にならなければ。
「はは、どうやら夕陽さんは否定しないようだし、本当なんだな。」
一応嘘です。まぁ、グレーゾーンだし、信じてもらって何よりではあるのだけど…。
「あぁ…まぁ、流河が意外と普通そうで安心したよ。」
”夕陽、これがいいのか?こんなのがいいのか?すげーなオマエ面白!”
言いたい放題私を煽るリュークの横で、月君は親しげに竜崎の方をぽんと叩く。_やめてリューク、それ以上親しげに話しかけないで…!と私は内心ひやひやしていた。基本的にリュークは私のことを無視してくれていたのだが、いまはテンションがあがって素で私に話しかけてきてしまっている。時系列、事実関係として、かろうじて夜神君のまえで名乗ったあとであることが幸いだ。
竜崎は月君に肩を叩かれたのが意外だったのか、目を大きくした。と、そこで、竜崎のポケットから音楽が流れた。その指先が電話を持ち上げる。
「__夜神さんが__月君!」
切迫した様子で二人が言葉を交わす。夜神さんが心臓発作で倒れたという連絡だろう。「キラか?」と怪しむやりとりが耳に入る。
そこで油断してしまった。
物語を幾度も読み返し、その先に何が起きるか分かっている私は、
うっかり、桜なんかに目をとられていた。
遠くの風景から視線を戻した瞬間に__ばっちりと、冷たく、堅く、
__夜神月と、目が合ってしまった。
さしもの夜神月も、一瞬、眉間に不信感を浮かべる。
その視線で初めて私は、失敗を自覚した。
この場で「それがキラではない」ことを知っているのは自分一人ではない、という事実に。
あの日、南空ナオミを助けた日。そして、今日ここでの反応。二度も私は、怪しまれるような行動を__いや、でもまだ私は、なにも、致命的なことは__