第一章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆からかわれ役
2003.12.04
それから約一週間が経った。調達の仕事にもそこそこ慣れ、手づくりも、ごく簡単なスイーツならば店に並ぶような出来栄えで仕上げることもできるようになった。
私は起床し、シャワーを浴びて簡単に髪を横まとめにした。いちおう飲食(スイーツ)係なのだ。
そして自室の冷蔵庫にあらかじめ用意しておいた朝食用のスイーツを銀のトレーに用意する。
「竜崎、ワタリさん、おはようございます」
「おはようございます夕陽さん」
「・・・遅いです。ブドウ糖不足です。」
「すみません。そのかわり、お代わりと味ちがいもあるのでっ」
朝一で不機嫌そうな竜崎にいちごのシュークリームを渡し、半ば強引に定位置にされたその右端に腰掛ける。数日間で出来上がった平穏な朝の風景だ。
数日間、恐ろしいほどに平和だった。
ノートは、確実に未来のキラの手に渡っているというのに。
私の心配ごとはただ一つ。
夜神月の動き。そしてノートの現在。
夜神月はもうキラになったのだろうか。もしもキラが生まれているのなら、世界の警察はキラに気付いたのだろうか。
そして「L」も・・・
私は隣に座る竜崎を見上げた。
「ワタリ」
「なんでしょう」
「全世界の警察の協力を要請します。明日にでも私から話す準備をお願いします。」
「はい。」
手短なやり取りの後、大して音も立てずにワタリさんが部屋を出ていく。
「全世界の警察」、「できるだけ多く」、「私から話す」
明らかにここ数日とは違う雰囲気の単語の羅列だった。
「偶然な訳がない・・・」
竜崎がぼそっと呟いた。私が横にいることも厭わない独り言のようだ。俯いていたわたしはちらっと隣を見やる。竜崎はがりっと、爪を噛んだ。
「りゅ・・」
途中まで言いかけて、正面のパソコンのモニターに目がとまった。
高速で切り替わっていく顔写真の中に、見覚えのあるものがあった。パソコンのものは次の写真を写しだしたため、私は記憶の中のものと照らし合わせようと試みる。
あれはたしか・・・顔色の悪く、げっそりとした男の写真。音原田・・おとはらだ、くろう・・・この顔、名前・・・
はっとした。
音原田九郎。ノートに書かれた人物。
__これは・・・
「どうかしましたか」
竜崎の声に、私はあわてて視線をパソコンからそらす。その様子に、めざとく反応される。
「なにか気になることでも?」
「あっいえ・・・ちょっと、町で見かけた人がいたような気がして・・・でもたぶん気のせいです!あはは」
竜崎の眼が、一瞬で私の顔とモニターを往復した。
「・・・それはきっと気のせいではありません。いま見たのはどの写真ですか?」
モニターが様々な顔で埋め尽くされる。人種国籍性別さまざまだった。私は左上から右下にかけて順に目を通す。そんなに時間をとらず、その男の写真が目にとまった。
「あ、あった。これです。」
画面中央付近を指差す。
注意深く観察していた竜崎は「やっぱり音原田ですか」と言った。
「その男はこの付近に潜伏していた犯罪者でしたが、つい先日死亡しました。ですから町で見たというのも偶然ではないでしょう。」
「・・・」
____なんてことだろう。平穏だ、なんて。
____もう、始まっていたんだ。
「でも竜崎、どうして死亡した犯罪者の写真を?」
「私は、何者かに殺されたのではないかと疑っています。」
竜崎は、「殺された」のところで再び爪をかじった。
「音原田だけではありません。先ほどの写真は、一晩で私が集めたものですが、みな死亡している犯罪者です。」
「みんな、殺されたの?」
「いいえ。死因自体は主に事故や心臓麻痺です。しかし、偶然では片づけられないことだと警察も気付き始めている。・・・これは尋常ではありません。」
竜崎は今朝になって、急に苛立ちを露わにしたようだった。朝から糖分不足と言ったり、ひときわ爪を噛んでいるのもそのせいだろう。
キラが生まれ、犯罪者が殺され、一週間足らずでLが動き始めた。
そうとくれば、当然私も動き出さなければいけない。
「夕陽さん」
「はい?」
「いまそこで考え込んでも分かりませんよ」
これから部屋にもどって対策をねろうか、などと考えている時のことだった。
相当難しい顔をしていたのか、竜崎は気の抜けたような声で言ってきた。
「そうですよね、はは・・うあっ」
そう返すと、ふいに身体が左に大きく傾いた。状況がつかめず、左斜め後ろにそっくりかえった状態からゆっくりと首を回す。すると竜崎に腕を引っ張られていた。
「・・・ええっえ、なに?」
不安定なその体制で目が合うと、腕がぱっと解放される。すると自然に、ソファーの上で向かい合う形になった。同じ目線になって、竜崎は不敵ににやり、とした。
「相手が誰でも、私が捕まえます。それに夕陽さんは「L」の監視下および保護下にいるわけですから、私が居る限り安心していて大丈夫です」
「・・・ほ、保護下・・・?」
「はい、保護下も追加しました。1人守るくらい、余裕です。」
私は言葉をうしない、ついでに数秒前までの思考を失った。
いまさらっと、「守る」と言われたような・・・。
口を金魚のようにぱくぱくしそうになる。
数回息をすって落ち着くが、そうすると「なにいってんの!守るのは私のほうでしょ!そーだそーだ!」と頭の中で誰かが抗議した。つまり私はまだひどく混乱していた。
「言い忘れました。その代わりスイーツは絶やさないようお願いします。」
竜崎は私の反応をよそに、話は済んだ、と言わんばかりにパソコンに向き直った。
私は眉をひそめながら、「仕事の中に「からかわれ役」と追加したほうがいいだろうか・・」と思った。