第二章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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__あれ、でもこの感じ。この感情の動き…
__特別、今日が初めてじゃないような……?
ふと胸に引っかかるものを感じて、私は恥ずかしさを我慢してゴンドラの席に着いた。座席はひんやりとしていた。
おずおずと、向かいにいつもどおりに三角座りをした竜崎を見る。
……竜崎の様子はとくに変わりない。彼はどこか満足げに片手にロリポップをつまんで持っている。
どうにも落ち着けない私はマフラーに埋まったまま、左右をきょろきょろと見まわした。
「こうして乗ってみると、わりと狭いんだね。あ、どんどん高くなるよ!早いんだね!」
「そうですね。」
私はぐんぐん高くなるゴンドラと、離れていく乗り場をひたすら見ていた。
すると突然、ぐらぐらと地面が、ゴンドラが揺れだした。
「ひあっ!竜崎!揺れてる!」
「大丈夫です。」
「大丈夫」と言う、その張本人が揺らしていた。
竜崎は勢いよくこちら側の座席にぴょんと飛び上がった。成人男性の体重なうえに、片側に偏るのだから。ゴンドラはゆれるゆれる。
事故は起きていないが、これは全然大丈夫じゃない。そのあまりの突然の行動に、私はただ悲鳴を上げ続ける。
「え、な、なになになにこわいこわい」
「…落ち着いてください。夕陽があまりに向かい合わせで居心地悪そうだったので隣に来ただけです。」
「…うう…」
数回深呼吸をして落ち着こうと試みる。揺れは案外、早く収まった。
「落ち着きましたか?」
「う、うん。」
冷静になってきてそう答えると、竜崎は口角だけ上げながら、視線は私と同じ遠くの風景を見ながら「それは良かった」と言った。
「”私達”は、こうして座るほうが落ち着いて話せると思いませんか。」
「こうして…」
__隣り合って、てことか。
そうだった。いつも私は竜崎にいじわるっぽく「そこにいてください」なんて言われながら、からかわれたり、何も話さなかったり、スイーツの雑誌をみたりしていた。
退屈になることもあったし、邪魔なんじゃないかと思うこともあったけど、もうここにきて数か月。
一度も「寂しい」なんて思うことがなかったのは、もしかして、いつでも隣に竜崎がいたから、なのかもしれない。
「うん。しっくりくる。落ちつく。あと…なんだか嬉しい。」
言葉にしながら、私はまたさっきみたいに竜崎を意識してしまっている感覚を覚えた。
顔が熱くなって、恥ずかしさにマフラーに埋まりながら、でも、いま言ったことは取り繕わなくてもいいや……と私は遠くのビル群を眺めた。
取り繕う必要はなかった。心の奥にずっと眠っていた答えが浮き上がってきて、私に素直になれと言っているような気がしたから。それは決して昔の記憶なんかじゃなく、夕陽として、竜崎とともに心に刻んだ感情。
__思い返せば、もうとっくに。
__何度も、私はこうして竜崎を意識してたんだ
__いつからだろう、はじめはただの”守らなきゃいけない”なんて義務感だったのに
__そこに心はなくて、ただ、昔の自分がそう自分に求めているようだった。
__それがいつのまにか、楽しいな、なんて思うようになったり
__”好きだから”守りたい、なんて自分勝手な気持ちに変わっていたのは…
__今だって、すごく嬉しくてしょうがない
__私、竜崎が好きだ。
「観覧車に乗るのは初めてですか」
ひとり、長々と衝撃の事実に気づいてぼーっとしていたところで、竜崎の声が私をゴンドラの中、二人きり、という現実に引き戻した。
「……え、観覧車?うん……多分、初めてだと思う。でも記憶喪失だし、自信はないんだけどね。」
再び挙動不審になる私の返答を聞いて、竜崎の大きな黒目がすっと細められた。
「記憶喪失、ですか。」
一瞬、なにかやらかしたか、と思ったが、真面目な話をしようとしているだけだとすぐに分かった。雰囲気が変わるのが分かった。
「その後、最近、なにか変化はありましたか。……思い出したことがあれば、遠慮なく言ってください。」
真面目な話にもどったところで、竜崎はまたロリポップをくわえる。なかなか解けない飴だな、と私は意識の端で考える。
「ううん、特別思い出すことはないよ。夢の中で、自分の姿を見るくらいかな。昔の自分を思い出すような手掛かりは…実のところまったくで。」
竜崎はころころとロリポップを転がすと、それをまたまっすぐ右手つまむように持ち、私に大きな目を向けた。笑ってはいない。ただ、無表情にこちらを見る。観察するような様子もない。私は珍しくその瞳に気圧される心地だった。
「やはり変わりないですか。……私なりに、しばらく、この状態が続くと仮定して、考えたことがあります。」
私はただ、こくりと頷き、次の言葉を待った。
「夕陽、貴方に、一緒にキラ事件に立ち向かってほしい。……一度、保護するといった手前、方針変更になってしまいますが、貴方に協力していただきたい。」
私はその言葉の意図を深く考えようとして返答に一拍、間が開いてしまった。そこで「具体的には?」と聞こうとしたところで、竜崎のほうが先に口を開いた。
「キラではないかと疑っている人物がいます。その人物に、これから直接、対峙します。そのとき、その人物の前でだけ、貴方にはこう振舞ってほしいのです。」
私は「はい」と小さく返事をした。何を言われても、協力なんていくらでもする、という気持ちだった。
「”私はLの恋人だ”と。」