第一章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆南空ナオミ
__南空ナオミの命を救うには。
彼女と夜神月の対話が発生する時刻が曖昧だったので、警視庁の開庁時間には近くで待っていられるようにした。そこでできるだけ早く南空ナオミを見つけ、話しかけてしまうという算段だった。
大した作戦ではないが、私には知識があった。
彼女のことを考えると、記憶の中に「未来」の他にも、とある「過去」が浮かんだ。
”ロサンゼルスBB殺人事件”と呼ばれる事件だ。
南空ナオミは私なんかよりずっと用心深くて賢いが、Lに関しては非常に信頼を置いており、「話が確実にLに伝わるのなら十分」と、必要以上に立ち入らない人物だ。
1、Lしか知りようのない過去で自分がLの元にいる人間だと信じさせる。
2、「Lは事情があって動けない。あなたの話は自分から確実にLに伝える」
大筋としてはこう伝えた上で、彼女には申し訳ないが、身を潜めてもらう。そして・・・
____これで大丈夫だろう
私は必要になりそうなもの(あくまでLに勘ぐられない範囲のものだ)をコンビニで購入し、ホテルを後にした。
「うぅ・・・緊張してきた」
とはいっても、あの南空ナオミ相手に一芝居打つのは大きなプレッシャーだった。
「そうはいってられないよ!」と自らを鼓舞する。
遊歩道に、程よいベンチがあったので、そこに腰をかけて待つことにする。
膝の上にはコンビニで購入した雑誌を広げる。
ぞろぞろと職員と思わしき人々が建物に入っていき、そろそろ落ち着いたかな、というところで時計を確認すると、ちょうど9時だった。
この時間からはいつ彼女が現れてもおかしくない。なんとしても夜神月よりも早く・・・
そう考えてすぐだった。遠くからブロロロ・・・とかバババ・・・みたいな大きなエンジン音が聞こえ、付近で減速を始めた。
植込み越しに覗き込むと、黒い皮のライダースジャケットが見えた。黒髪の女性である。
「南空ナオミ!」
思ったよりも早く彼女は現れた。
私は即座に立ち上がり、彼女がバイクをいじっているうちに、庁舎付近の歩道でキョロキョロと周りを見渡すそぶりを始めた。
雑誌を開き、クルンと丸めて、いかにも「雑誌を見ながら道に迷っている」風を装っているつもりだ。
___ちゃんとそう見えているかは、また別・・・
心の中で苦笑いしながら、南空ナオミを横目で見やった。駐輪場にバイクを止め終え、ようやくこちらに歩き出そうとしているところだった。
___よし、行こう!
「あ、あの、すみませんー!」
「はい?」
唐突に彼女に話しかけた。
「ここの方ですか?私、ちょっと迷ってしまって・・・」
困ったように続けると、彼女は優しく、しかし手を降りながら否定を表した。
「いいえ、違います。困っているなら、中に入って聞いたほうがいいと思いますけど・・・」
そういって庁舎入り口を指差す。た、確かにね・・・ごもっともだ・・・。
自信をなくしつつも、いまにも急いでさって行きそうな南空ナオミに、気持ちは焦る。
い、いやいや!夕陽は諦めません。あーもうゴリ押しで行こう!!
「ちょっと待ってください、ちょっとだけなんです、これみてください!」
・・・なんて怪しいのだろう。半ばキャッチセールスのようになりながら、私は雑誌のページを開いて見せた。
南空ナオミは迷惑そうに無視しようとするが、横目で見た私の開くページに、その動きを止めた。
「___!!あなた、」
美空ナオミは雑誌に貼られた四角い”付箋”を見ている。
______”南空ナオミさん、Lがあなたを必要としています”
「ね、お願いします、すぐそこだと思うんですよ、このカフェ」
彼女の目の色が明らかに変わったことを確信し、私は雑誌の一角を指差す。
また別の色の付箋に、
______”彼女は代理です。警視庁の人間に感知されないよう、近くのカフェで自然に違和感なく話を聞いてください”
そう書いておいた。
南空ナオミは一瞬でそれを読み取ると、
「・・・あぁ、ここですね。私もさっきそこで忘れ物しちゃったようだし、案内しますよ。」
と、すっと笑顔を作って、対応する。
さすがだ、と思った。
でもこれで、彼女は状況を飲み込んでくれた、多少は気を引けたということだ。
__それもそうだ。
ピンポイントでの待ち伏せ、名前を知っている、唐突にLという単語を持ち出すなど、信用までは行かずとも、彼女としては話を聞かないわけには行かないはずだ。
・・・
張り詰めた空気の中、徒歩10分もかからず、目的のカフェに着いた。
店内は明るく、席数も多くて、おしゃれで静かなカフェというよりは、ファミリーレストランに近い、大衆的なチェーン店といった装いだ。入り口にはショーウィンドウにケーキがいくつか並んでいる。
Lにはカフェに寄るといってあるので、GPSの信号的にも、違和感をもたれる動きは無い。
そして、店内に入ってしまうことによって、私と南空ナオミの会話を夜神月に聞かれる恐れもない。
「ありがとうございます。南空ナオミさん」
席について真っ先に、私はにこりと笑って見せた。
「ここからは直接お話ししますね。この彼のことは、」
そういって私はメニュー表の「Lemon pie」の”L”を指差す。
「竜崎、と呼ぶことにします。」
竜崎、と名を口にすると、南空ナオミの瞳が揺れた気がした。
「あなた、本当に・・・」
竜崎というのは”ロサンゼルスBB殺人事件”の犯人であるビヨンド=バースデイが名乗っていた名前だった。
竜崎ルエ。
私の記憶では、彼女とLにしかわからないはず。
「すみません、かの事件に携わったあなたをからかっているわけではありません。エ・・上司からの、日本ではそう呼んでくれとの指示なのです。」
申し訳なさそうにいうと、南空ナオミはすうっと息を吸って吐いた。気持ちを落ち着かせているのかもしれない。
そして、まっすぐにこちらを見つめる。
「わかったわ。……あなたを信じるわ。」
強い瞳だった。彼女には、私の薄っぺらい強がりなど見透かされていたに違いない。
だが信じてくれたのなら、それでいい。
「よかったです。」
また私は笑って見せた。今度は安堵の笑みだった。
これで変に演技をする必要はない。あとはうまくことを運ぶことに集中できる。
「いきなりすみませんでした。私は、夕陽と申します。
・・・竜崎からの用件を伝えたいところですが、その前に、警視庁に出向いた目的を伺ってもよろしいですか。」
「情報提供よ。・・・あなたに話せば、・・・竜崎に伝わる。・・・そう考えていいのかしら?」
「伝えることはできますが、直接会ってもらった方がいいかもしれません。」
「直接……?」
「はい。実は今日お声をお掛けしたのは、竜崎からあなたに再び協力をお願いできないか、というオファーです。」
真剣に、私は南空ナオミを見つめた。
ここからは私の計画だ。Lは関与していない。
「え、竜崎、と再び・・・?ええ、もちろん!・・・協力するわ!」
再び前のめりで返事をする彼女に、私は、ビシッと人差し指を立てて見せた。
「ともに捜査をするかは置いておいて、ひとまずは情報を頂ければと思います。そして、お願いがあります。」
「・・・約束?」
「私が代理できているように。竜崎本人は今すぐあなたと直接接点を持つことができません。そして、先ほど私は南空さんを警視庁の前で止めたように、警視庁とは連絡を取らないで欲しいのです。」
そう説明すると、少しだけ間をおいて、彼女は頷いた。
「・・・警視庁の関係者にキラが」
「はい、そこは確かです。あのまま警視庁にあなたが動いていることを知られたら、命の危険さえありました。そこで、あなたの命を守るためにも、今後、警視庁にはあなたが独自に動いていることを一切悟られないようにしていただきたいんです。」
「・・・!」
「ですので、南空さん、竜崎から連絡を改めてするまでは、誰にも感知されない位置で協力をお願いできないでしょうか。」
・・・
彼女は目を見開いていたが、自らを落ち着かせるようにすっと目を伏せた。
「夕陽さん」
低く、落ち着いた声で名前を呼ばれる。
私も正直、さっきから緊張でどきどきしっぱなしだ。
Lならこんな感じかな、と考えて話していたが、背伸びはすごくすごく向いていない。
「・・・わかったわ。私のことは、ナオミでいいわよ。」
南空ナオミは初めて、警戒を解いたように微笑んだ。
「ありがとうございます。・・・ナオミさん。今はしばらく日本にとどまって、竜崎の指示を待ってください。今はまだ動けませんが、必ず私を通して竜崎から協力をお願いすることになります。」
ふふっと、ナオミさんは笑った。
「了解よ。それまでは悲しみに暮れて実家で息を潜めていればいいわけね。」
皮肉そうにいうので、思わず返答に困ってしまったが、苦し紛れに「はい」と頷いてみた。
「ということで、ナオミさんの無事と居場所だけは把握しておきたいので、携帯電話の番号をいただけませんか。」
・・・
どうかここまで、話を運ぶことができた。
こちらから必ず連絡をするので、それまでは動きを見せないで欲しいとお願いをして、時間としては20分程度でカフェを出ることになった。
「じゃあ、またね。・・・あの”探偵”の下で働くのはなかなかタフだと思うけれど・・・ガンバってね。」
「え、あ、はい!がんばります」
何か思うことがあるのか、最後にナオミさんには快活に肩をポンポン、と叩かれ同情されたようだった。
釈然としなかったが、ともあれヘルメットをかぶって遠くに走っていく彼女を見送って、一安心だった。
__さて、お土産にさっきのレモンパイでも買って帰ろうかなぁ
「かーえろ帰ろっ!」
アホっぽくなって振り返った瞬間だった。
____!!!
すっと寒気がした。
なんとなく下向きだった視線をあげると、そこにいたのは
___夜神、月・・・!
着替えを持っていて、あぁ、これから警視庁に向かうんだな、と思いつつ
気づかないふりで歩き去ろう、とするが、
「ん?」
慌てた私の手元からひらりと紙が落ち、彼の足元に落ちる。
「っ!」
走り寄り拾おうとするが、普通に彼のほうが早くそれを拾い上げてしまう。
「落としたよ。はいこれ。」
笑顔で、話しかけられてしまった。
その手には、先ほどナオミさんに見せた小さな付箋がある。
___ま、まずい・・・!
「あ、ありがとうございます」
一瞬だけ、彼の目が文章を追ったようにも見えたが、あれは「L」とは書いていない方の付箋のはずだ。
大丈夫・・・大丈夫・・・
「あ、じゃあ!」
不審な動きを隠せずに走り出そうとするが、とっさに、目の前にリュークがいたため、避けようとしてしまう。
”ウォッ”
びっくりしたリュークの声に、わたしは今更ながら気づく。
____見えていないふりをしなきゃダメだ!
「・・・っ」
右足を意図的にひねり、その場でつまづいて転んだ。
「・・・いったっ」
____いきなり走ろうとして転んじゃったみたいに、見えますように・・・!
「だ、大丈夫?」
慌てて夜神月が手を差し伸べてくる。
「う、うん、ごめんね。・・・恥ずかしいとこ見せちゃった」
ごまかしきれただろうか、それとも怪しまれただろうか、とにかくここは、早く去るに限る。
「じ、じゃあ!」
____まずい!やらかした!!
どうにかホテルまで歩いた私は、収まらない鼓動のまま振り返るが、夜神月の姿はなかった。
どうにか、転んだだけと思われますように。
彼のことだろう、顔は覚えられているかもしれないが・・・いつかLと一緒に相対する時にはより一層警戒感を強めてしまうことに違いはない。
・・・とにかく
予定外の邂逅はあったが、南空ナオミの死を防ぎ、コネクションを得ることができた。
今後、彼女の協力を得ることができるだろう。
「ナオミさん・・・よかった・・・。」
私は彼女にもらった携帯番号を大切に握りしめた。
目の前でころびかけた、青い服の少女を思い浮かべる。
この言いようのない違和感はなんだろうか。
「ねぇ、リューク」
青年は吐き捨てるように死神の名前を呼ぶ。
「彼女、リュークを避けたように見えたんだけど」
よばれた死神はケケッと笑う。
「さぁ、どうだかな〜」
不審極まりない女性を見かけて、密かにあとをつけたものの、行き着いた先はそう遠くない大きなホテルだった。
しかし、何かを確かめるように振り返る彼女は、やはり自分を警戒しているように見えた。
なんの決め手もない、「気がする」というだけの違和感だが、胸騒ぎがした。
「名前を聞けたら、その場でどうにかできたんだけどね」
青年はあくまで優しい様子で呟いた。